Kitten Heart BLOG -Yunaとザスパと時々放浪-

『きとぅん・はーと』でも、小説を公開している創作ファンタジー小説や、普段の日常などの話を書いているザスパサポーターです。

【小説】「パスク、あの場所で待っている」第34話

2017年02月14日 00時08分46秒 | 小説「パスク」(連載中)
「あっ……。気がついた?」
 ぼんやりとした意識の中で、問いかける女性の声。コトミじゃないな、あいつはもっと子供っぽい声だ。母親でもない。誰だろう。そして、どことなく眠い。
「安全なところだから、もう少し寝ていて大丈夫だから」
 救いの手を差し延べる女神様に従い、微睡むことにした。

 次に起きたときは意識がはっきりしていた。
「ついに起きたね」
 さっきの女神と同じ声だ。
「ここはどこだ……?」
「わたくしが泊まっている宿よ。空きがあったから、ここへ連れてきたのよ」
 どうもここは木造ぽいな、木の香りがほのかに感じる。
「誰……?」
「え……? 分からないの?」
 黒いセミロングなのは分かったが、ぼやけて見えてよく分からない。目を必死に細めてみたが、それでもよく分からない。
「…………」
「わたくしよ、わ・た・し」
 ようやくはっきり見えたが、見たことがある顔のような無いような……。
「キョウコだってば!」
「……え?」
 言われてみれば、いつもポニーテールだが、髪を下ろしていて気づかなかった。
「あと、これ。一緒に拾ってあげたから」
 無残にも真っ二つに折れてしまった、我が愛剣だった。
「なんで、助けてくれた……」
「瀕死の人間をほっとけないでしょ。それにあなたが他の候補者をやっつけて、わたくしの順位を上げていただかないと——」
「あくどいぞ!」
「それに、もしふたりとも『twenty』に入ったら協力しなきゃいけないでしょ。ここで遺恨を持ってもしょうがないでしょ?」
 キョウコの性悪さには、感心した。
「くそっ。あいつ助けろよ!」
「ダメよ。結構傷が深いの! 医者が絶対安静にしろって!」
 起き上がろうとしたところを布団ごと押し戻されてしまい、戻す力の方が強くて傷口に響いて敢えなく諦めた。
「……帰る」
「どこへ? その体じゃ、隣の部屋も無理よ」
「故郷に」
「あんたの?! まだ遠いから無理だって」
「そこだったら……ううぅ!」
「ほら……。無理して動くから。しばらくついてあげるから、安静にしなさい」
「……だったら。せめて……ついてきてくれないか。見せたいものがある」
 キョウコは大きく溜め息を吐き出すと、それまでオレが動くのを抑えようと膝を立てて構えていたが、そのまま腰を下ろした。
「動けるようになったらね。わたくしも時間があるわけじゃないので」
「重々承知だ。故郷にたどり着くまででいい」
「三日だけ待ってあげる。それまでにその体、どうにかしなさい」
「分かった。いろいろとありがとうな」
「それは、あなたが『twenty』に入ったら言いなさい」
 その言葉を置いて、キョウコは隣の部屋に戻った。

 特にすることがないので、変わりばえしない天井を見ては考え事ばかりしていた。敗戦原因から始まったが、そもそもの始まりが何だったところまで脳内は行き着いていた。


≪ 第33話-[目次]-第35話 ≫
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