いつまでも話し続けるピーノの右頬を、迷いなく一直線に傷をつけてやった。
「油断しているからだよ!」
ピーノは自分の頬に手を当て、事の成り行きを確認した。
「よくも、僕の顔に……」
もともと鋭い目つきだったが、更に厳しく変わった。
「ただじゃ生かせないからな!」
動き出したのを見計らって、防御の体勢を取った。逆上しているせいか動きに乱れがあり、さっきよりやや見えてきた。
「うっ……」
右に逸れたが、それでも僅かに顔の一部を切ってしまった。
「次は、容赦なく本気で外さねえ……!」
この選考会に参加するやつは、本気を出すといった後に、また本気だとか……。何段階、本気があるんだよ。
オレもこのスピードに慣れ始めてきた。蹴り出して、振り抜く瞬間の動作が分かってきた。
「な……!」
ピーノの剣を受け止め、動揺しているところを見計らうと、弾き返しすぐに動作に移る。
「そう、やられっぱなしでいるか!」
全力で右足を蹴り上げ、一気に間合いを詰める。狙うのは左腹。透かさず振り抜いた。しかし、捕らえきれず交わされた。
「くそっ……!」
「そう簡単には、やらせないよ」
あそこで仕留められなかったのは、かなり痛すぎた。乱心で判断が悪くなっているところで、深手を負わせれば決定機を作れた。だが、あの様子じゃ落ち着き始め、まだ体力が残っているようで息も荒くない。
「そろそろ、終わりにしてあげようか?」
動き始めたのを見て、一か八か右足で地面を蹴った。
「遅かったね」
「……どっちがだよ?」
僅かにピーノの剣を交わし、オレの愛剣が引き裂いてやった。
「ザケやがって……!」
こいつ、血を見ると急変するタイプか! 元に戻り始めたところだったが、またもや目つきが変わった。だが、かえってチャンスかもしれない。
力任せに振ってくるピーノの交わし、ここぞとばかりに振り抜いた。しかし、逆に交わされた。切り返し、打ち合いになった。やはり不利だった。息が続かない。
間合いを開けて、一呼吸置いた。
「お前だけは、許さねぇ! 生きて返さない」
「その台詞は、この選考会じゃあ反則扱いになるがな!」
集中していて、全く気付かなかった。どうも周りが静かだと思ったら、いつの間にやらギャラリーがいなくなっていた。
「これで終わりにしてあげるよ!」
早いが軌道は読めた。難なく避けて——
「……え!」
フェイントか! 寸止めされて、タイミングをずらされた。避けきれない……。
「うぐっ……!」
……まずい。完全に入ってしまい、追い込まれた。
「すぐに楽にしてあげるよ……」
所々何を言ったのか、理解しきれなかった。意識が持つかどうか……。でも、オレはこの選考会を勝ち抜かなくてはならない。
「一度決めたことを簡単に諦めるか!」
全力で蹴り、前に突き進む。狙うのはただひとつ。先ほど負わせた箇所。一心不乱に振り抜いた。
何かが割れたような、鈍い金属音が辺りを支配した。
≪ 第32話-[目次]-第34話 ≫
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「油断しているからだよ!」
ピーノは自分の頬に手を当て、事の成り行きを確認した。
「よくも、僕の顔に……」
もともと鋭い目つきだったが、更に厳しく変わった。
「ただじゃ生かせないからな!」
動き出したのを見計らって、防御の体勢を取った。逆上しているせいか動きに乱れがあり、さっきよりやや見えてきた。
「うっ……」
右に逸れたが、それでも僅かに顔の一部を切ってしまった。
「次は、容赦なく本気で外さねえ……!」
この選考会に参加するやつは、本気を出すといった後に、また本気だとか……。何段階、本気があるんだよ。
オレもこのスピードに慣れ始めてきた。蹴り出して、振り抜く瞬間の動作が分かってきた。
「な……!」
ピーノの剣を受け止め、動揺しているところを見計らうと、弾き返しすぐに動作に移る。
「そう、やられっぱなしでいるか!」
全力で右足を蹴り上げ、一気に間合いを詰める。狙うのは左腹。透かさず振り抜いた。しかし、捕らえきれず交わされた。
「くそっ……!」
「そう簡単には、やらせないよ」
あそこで仕留められなかったのは、かなり痛すぎた。乱心で判断が悪くなっているところで、深手を負わせれば決定機を作れた。だが、あの様子じゃ落ち着き始め、まだ体力が残っているようで息も荒くない。
「そろそろ、終わりにしてあげようか?」
動き始めたのを見て、一か八か右足で地面を蹴った。
「遅かったね」
「……どっちがだよ?」
僅かにピーノの剣を交わし、オレの愛剣が引き裂いてやった。
「ザケやがって……!」
こいつ、血を見ると急変するタイプか! 元に戻り始めたところだったが、またもや目つきが変わった。だが、かえってチャンスかもしれない。
力任せに振ってくるピーノの交わし、ここぞとばかりに振り抜いた。しかし、逆に交わされた。切り返し、打ち合いになった。やはり不利だった。息が続かない。
間合いを開けて、一呼吸置いた。
「お前だけは、許さねぇ! 生きて返さない」
「その台詞は、この選考会じゃあ反則扱いになるがな!」
集中していて、全く気付かなかった。どうも周りが静かだと思ったら、いつの間にやらギャラリーがいなくなっていた。
「これで終わりにしてあげるよ!」
早いが軌道は読めた。難なく避けて——
「……え!」
フェイントか! 寸止めされて、タイミングをずらされた。避けきれない……。
「うぐっ……!」
……まずい。完全に入ってしまい、追い込まれた。
「すぐに楽にしてあげるよ……」
所々何を言ったのか、理解しきれなかった。意識が持つかどうか……。でも、オレはこの選考会を勝ち抜かなくてはならない。
「一度決めたことを簡単に諦めるか!」
全力で蹴り、前に突き進む。狙うのはただひとつ。先ほど負わせた箇所。一心不乱に振り抜いた。
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