Kitten Heart BLOG -Yunaとザスパと時々放浪-

『きとぅん・はーと』でも、小説を公開している創作ファンタジー小説や、普段の日常などの話を書いているザスパサポーターです。

【小説】「パスク、あの場所で待っている」第48話

2020年06月10日 06時34分01秒 | 小説「パスク」(連載中)
「結局、来てしまったか……」
 渡し船を降り立つと、辺りを見渡した。これといった異常は無い。
 警戒しながら、歩き始めた。
 西へ西へと進んできたが、気付けば土筆島まで着てしまった。
 土筆島には、いい思い出がない。
 今回の選考会が始まって間もなく、思い切って土筆島まで来た。その時、挑発してきた若造を懲らしめてやろうと思ったが、不覚にも力負けしてしまった。
 そもそも、しゃべり方が気に入らない。
「今度会ったら、ただでは済まないからな!」
 憤りから、つい声に出してしまった。最も、会っても再戦は出来ないが。
 あの時は、確かそのまま西へ行ったんだったな。今回は南の方へ行くか。
 今回もどことなく、嫌な予感がしていた。

 海沿いをひたすら歩き続けた。内海もあって、波は穏やか。
「平和だよな……」
 十数年前まで、内乱が続いていたとは思えない風景。
 これが、たった一人の活躍で終わるんだからな。
 ふと、いろいろ考えが巡った。
 遠くに山のようなものが見え、遠回りになりそうだったので、違う山の方へ回ることにした。
 そして、オレは道に迷ったことに気付いた。
 夜が遅くなり、致し方なく隠れるように奥へ入り、一晩過ごした。
 夜が明け、このまま歩けば海に出るはずだったが、むしろ山が増えてきた。
「まあ、仕方がないか」
 当てがあるわけでは無いので、このまま進むことにした。

 翌日、大きな山を目の前にした。
 昨日の疲労を回復し、寝床にしていた場所を後にした。
 気を引き締め、周囲を気にしながら山の方へ向かった。
 時折、人とすれ違うが候補者か、ある程度分かる。
 治安がそれほど悪くない。なので、ガチガチに武装している一般人はあまりいない。せいぜい自衛程度。
 歩いている奴に関しては、候補者か王国関係者のなにかで、だいたい分かる。
 かといって、候補者はすぐに襲撃されがちなので、重装備も珍しい。
 そう思っているうちに、それっぽいのが近づいてきた。
「パスクじゃないか!」
 オレの名前を知っている時点で、間違いなく候補者だろう。
「候補者か?」
「そうばい」
 それを聞くと、すぐさま構えた。
「まあまあ、そう焦るな」
「なんだよ、急に……」
「ここは人が多い」
「まあ、確かに」
 主要道ではないが、ある程度往来がある。
「場所を移そう。いいところがある」
 これに応じない奴がたまにいるから、生真面目なんだろうと思う。
 ホオン・ガァショウと名乗る男の案内されるがまま、ついていった。
「ここで、いいだろう」
 連れてこられたのは、人通りのない山奥だった。
「ああ、そうだな」
 ホオンが構えたのは、重量感のある大きな剣。
 見たところ、そこまで腕が高いと思えない。大きく苦戦することはないだろう。
 しかし、悪い予感がなかなか拭いきれない。


≪ 第47話-[目次]-第49話 ≫
------------------------------

↓今後の展開に期待を込めて!
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【小説】「パスク、あの場所... | トップ | Jリーグ再開日程発表! »

コメントを投稿