「結局、来てしまったか……」
渡し船を降り立つと、辺りを見渡した。これといった異常は無い。
警戒しながら、歩き始めた。
西へ西へと進んできたが、気付けば土筆島まで着てしまった。
土筆島には、いい思い出がない。
今回の選考会が始まって間もなく、思い切って土筆島まで来た。その時、挑発してきた若造を懲らしめてやろうと思ったが、不覚にも力負けしてしまった。
そもそも、しゃべり方が気に入らない。
「今度会ったら、ただでは済まないからな!」
憤りから、つい声に出してしまった。最も、会っても再戦は出来ないが。
あの時は、確かそのまま西へ行ったんだったな。今回は南の方へ行くか。
今回もどことなく、嫌な予感がしていた。
海沿いをひたすら歩き続けた。内海もあって、波は穏やか。
「平和だよな……」
十数年前まで、内乱が続いていたとは思えない風景。
これが、たった一人の活躍で終わるんだからな。
ふと、いろいろ考えが巡った。
遠くに山のようなものが見え、遠回りになりそうだったので、違う山の方へ回ることにした。
そして、オレは道に迷ったことに気付いた。
夜が遅くなり、致し方なく隠れるように奥へ入り、一晩過ごした。
夜が明け、このまま歩けば海に出るはずだったが、むしろ山が増えてきた。
「まあ、仕方がないか」
当てがあるわけでは無いので、このまま進むことにした。
翌日、大きな山を目の前にした。
昨日の疲労を回復し、寝床にしていた場所を後にした。
気を引き締め、周囲を気にしながら山の方へ向かった。
時折、人とすれ違うが候補者か、ある程度分かる。
治安がそれほど悪くない。なので、ガチガチに武装している一般人はあまりいない。せいぜい自衛程度。
歩いている奴に関しては、候補者か王国関係者のなにかで、だいたい分かる。
かといって、候補者はすぐに襲撃されがちなので、重装備も珍しい。
そう思っているうちに、それっぽいのが近づいてきた。
「パスクじゃないか!」
オレの名前を知っている時点で、間違いなく候補者だろう。
「候補者か?」
「そうばい」
それを聞くと、すぐさま構えた。
「まあまあ、そう焦るな」
「なんだよ、急に……」
「ここは人が多い」
「まあ、確かに」
主要道ではないが、ある程度往来がある。
「場所を移そう。いいところがある」
これに応じない奴がたまにいるから、生真面目なんだろうと思う。
ホオン・ガァショウと名乗る男の案内されるがまま、ついていった。
「ここで、いいだろう」
連れてこられたのは、人通りのない山奥だった。
「ああ、そうだな」
ホオンが構えたのは、重量感のある大きな剣。
見たところ、そこまで腕が高いと思えない。大きく苦戦することはないだろう。
しかし、悪い予感がなかなか拭いきれない。
≪ 第47話-[目次]-第49話 ≫
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渡し船を降り立つと、辺りを見渡した。これといった異常は無い。
警戒しながら、歩き始めた。
西へ西へと進んできたが、気付けば土筆島まで着てしまった。
土筆島には、いい思い出がない。
今回の選考会が始まって間もなく、思い切って土筆島まで来た。その時、挑発してきた若造を懲らしめてやろうと思ったが、不覚にも力負けしてしまった。
そもそも、しゃべり方が気に入らない。
「今度会ったら、ただでは済まないからな!」
憤りから、つい声に出してしまった。最も、会っても再戦は出来ないが。
あの時は、確かそのまま西へ行ったんだったな。今回は南の方へ行くか。
今回もどことなく、嫌な予感がしていた。
海沿いをひたすら歩き続けた。内海もあって、波は穏やか。
「平和だよな……」
十数年前まで、内乱が続いていたとは思えない風景。
これが、たった一人の活躍で終わるんだからな。
ふと、いろいろ考えが巡った。
遠くに山のようなものが見え、遠回りになりそうだったので、違う山の方へ回ることにした。
そして、オレは道に迷ったことに気付いた。
夜が遅くなり、致し方なく隠れるように奥へ入り、一晩過ごした。
夜が明け、このまま歩けば海に出るはずだったが、むしろ山が増えてきた。
「まあ、仕方がないか」
当てがあるわけでは無いので、このまま進むことにした。
翌日、大きな山を目の前にした。
昨日の疲労を回復し、寝床にしていた場所を後にした。
気を引き締め、周囲を気にしながら山の方へ向かった。
時折、人とすれ違うが候補者か、ある程度分かる。
治安がそれほど悪くない。なので、ガチガチに武装している一般人はあまりいない。せいぜい自衛程度。
歩いている奴に関しては、候補者か王国関係者のなにかで、だいたい分かる。
かといって、候補者はすぐに襲撃されがちなので、重装備も珍しい。
そう思っているうちに、それっぽいのが近づいてきた。
「パスクじゃないか!」
オレの名前を知っている時点で、間違いなく候補者だろう。
「候補者か?」
「そうばい」
それを聞くと、すぐさま構えた。
「まあまあ、そう焦るな」
「なんだよ、急に……」
「ここは人が多い」
「まあ、確かに」
主要道ではないが、ある程度往来がある。
「場所を移そう。いいところがある」
これに応じない奴がたまにいるから、生真面目なんだろうと思う。
ホオン・ガァショウと名乗る男の案内されるがまま、ついていった。
「ここで、いいだろう」
連れてこられたのは、人通りのない山奥だった。
「ああ、そうだな」
ホオンが構えたのは、重量感のある大きな剣。
見たところ、そこまで腕が高いと思えない。大きく苦戦することはないだろう。
しかし、悪い予感がなかなか拭いきれない。
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