Kitten Heart BLOG -Yunaとザスパと時々放浪-

『きとぅん・はーと』でも、小説を公開している創作ファンタジー小説や、普段の日常などの話を書いているザスパサポーターです。

【小説】「パスク、あの場所で待っている」第17話

2015年12月09日 12時07分17秒 | 小説「パスク」(連載中)
 両者の剣が当たると、そのまま力比べになった。ややテオの方が上回り、たまらず後ろに引き下がった。それをテオは見逃さず、更に押し込んできた。必死の思いで振り払い、テオから遠ざかった。
「甘いんだよ」
「くそっ……」
 やはり力勝負を真っ向からやっていては勝ち目がない。落とし穴だらけだった森とは違うが、ここもぬかるみやすい所はいつも決まっている。
「そんなに悔しがることない……。すぐに終わりにしてやるよ!」
 そう言い放つと、速攻でテオが向かってきた。すぐさま受け止めたが、切り替えされ連続攻撃を繰り出された。耐え抜いて、とにかく耐え抜いて、チャンスを探した。
 テオも結局生身の人間。息継ぎで手を休めた僅かな瞬間を見逃さず、押し込むように斬りかかった。
「うぅ……!」
「……避けたな!」
 体勢を崩しながらも避けられた。でも、それでいい。なぜならその先には深めのぬかるみが……!
「……っぶね!」
「な……!」
 ビーフォンだったら確実に填まっていたはずなのに、素早く回避し体制を整えきた。
「だから。ビーフォンと同じ手で、やられるか」
 本当にこの辺りの細かい部分まで把握しているみたいだ。あんなの、その場の判断だけで避けきれない。どうするか……。
「お手上げか? 今だったら、降参しても受け付けるぞ」
「誰がだよ!」
 いかにも余裕そうな表情を作ったが、テオが見抜いたとおりお手上げに近い。スピードは向こうの方が上。トリッキーなことをやっても読まれている。けど、まだ作戦はある!
 猶も、テオの剣は休むことなく振りまわった。時折見せる隙を狙いつつ交わして耐えた。あいつだって、そのうち……いずれ……。

 朝は晴れていたのに、少しずつ辺りが薄暗くなってきた。気づくと小雨が降ったり止んだりの繰り返しだった。
「しめた!」
 隙ができた上、体勢を崩した。これだったら避けられないだろう!
「残念」
 それは、あっさりと避けられてしまった。
「あーあ。チャンスだったのに……。パスクは気づいていないのかな……?」
 振った瞬間、自分でも気づいた。あっさり避けたんじゃない。簡単に交わせる程度の力しか出せなくなってきたからことに。持久戦に持ち込んで、体力が切れるのを待った。しかし、受け身になりペース配分が狂わされ、体力を奪われたのはオレの方か……。この作戦すら読まれてしまったか。
「これが最後にしてやるよ。降参するなら」

――なんでいつもテオに勝てないんだ!

 テオが全力で向かってきた。まだ向こうは体力があるのに、オレは……。よろけて尻を地につけたが、その時なにか左手にぬめっとした感触があった。一瞬手を引っ込めたがすぐさま正体に気づいた。大きさも手頃、片手で持つにはギリギリのジャストサイズ。
 少々ずるいかもしれないが、これに全てを賭けるしかない!
 それをテオ目掛けて投げてみたら、予想通りの展開で慌てふためいた。
「地形は把握していたみたいだが、カエルは想定外だったみたいだな!」
 残る力を振り絞り、全力で愛剣を振り抜いた。


≪ 第16話-[目次]-第18話 ≫
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