まだ朝霞が立ち込める中、切り裂くように詰め寄った。ピーノの喉元を狙うように振り抜いたが、いとも簡単に避けた。まあ、出方を見たかったので、これは予定通りだ。
寸前で交わしているが、軌道を見極めており早期に決着がつく戦いではないのは、予想がついた。ただ気に入らないのは、避けただけなのにギャラリーの活気づいた歓声に苛立ちを感じずにはいられなかった。
「どうだい?」
どう? ……って言われても、特段変わりはないし、どう答えればいいんだよ。まあ、強いて言うなら……。
「これだったら、どうなんだ!」
右足を強く蹴り出した。一気に詰め寄り、斬りつける。左に避けたが、これはフェイントだ。切り返して、振り下ろした。またも避けられた。だが、これも交わされる想定。これは予想外だろうと、全力で振り抜いた。
「くそっ……」
三度も掠めることなく、さも風で乱れだかのように髪を直していた。そして例のごとく黄色い声に、かなり気分が悪い。
「じゃあ、そろそろ僕の番だね」
ピーノの剣というのは、自身の細い体とは一転して、刀身は幅が広くて肉厚なものを所持していた。見た目からして、軽々と持てるはずがないのだが、おもちゃのように易々と素振りして見せた。
かと思いきや、閃光のごとく間合いを詰められてしまい振り抜かれた。寸前で避けたが、その破壊力の凄まじさをまさに肌で感じ取った。あのスピードで重量級の剣をまともに食らったら、どうなるかは想像したくない。
「これは準備運動だよ」
ただが準備運動ごときでも騒がしくなるから、聞いているだけで腹立たしい。
「……にしては、随分と本気だったみたいだったが?」
「じゃあ、リクエストにお応えして、本気をちょっとだけ見せてあげるよ」
そう言って、かましてくるやつが——
「……え?」
まばたきをしたつもりはなかったが、全くピーノが見えなかった。そして、右頬から痛みが走ってきた。
「少しだけ手加減してあげたけどね」
ちょっとだけだと! それでもこの速さか。
「次はどこにしようかな……?」
自分への歓声に調子に乗っている。ふざけやがって。
「今度はここにしよう」
蹴り出すのは見えて構えたが、それを上回ってしまうのか。左二の腕を風のように流れるように斬られた。
「ああぁぁ……!」
「パスクさんは、どうも動きの速い相手は苦手らしいと聞いたが、本当だな」
確かにセーキじいさんやキョウコには結局勝てなかった。速くても経験値が低いムギには勝てた。
その上、体力の長続きしない二人は落とせる可能性はあった。しかし、ピーノは体力がまだ有り余るくらいある。
相性最悪の相手だ。しかし、オレも同じ轍を踏まない。
まだ、言い足りなそうに話し続ける油断したピーノを、話ごと斬りつけてやった。
「うるさいんだよ! ごちゃごちゃと!」
宣言通り、観客を黙らせてやった。
≪ 第31話-[目次]-第33話 ≫
------------------------------
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寸前で交わしているが、軌道を見極めており早期に決着がつく戦いではないのは、予想がついた。ただ気に入らないのは、避けただけなのにギャラリーの活気づいた歓声に苛立ちを感じずにはいられなかった。
「どうだい?」
どう? ……って言われても、特段変わりはないし、どう答えればいいんだよ。まあ、強いて言うなら……。
「これだったら、どうなんだ!」
右足を強く蹴り出した。一気に詰め寄り、斬りつける。左に避けたが、これはフェイントだ。切り返して、振り下ろした。またも避けられた。だが、これも交わされる想定。これは予想外だろうと、全力で振り抜いた。
「くそっ……」
三度も掠めることなく、さも風で乱れだかのように髪を直していた。そして例のごとく黄色い声に、かなり気分が悪い。
「じゃあ、そろそろ僕の番だね」
ピーノの剣というのは、自身の細い体とは一転して、刀身は幅が広くて肉厚なものを所持していた。見た目からして、軽々と持てるはずがないのだが、おもちゃのように易々と素振りして見せた。
かと思いきや、閃光のごとく間合いを詰められてしまい振り抜かれた。寸前で避けたが、その破壊力の凄まじさをまさに肌で感じ取った。あのスピードで重量級の剣をまともに食らったら、どうなるかは想像したくない。
「これは準備運動だよ」
ただが準備運動ごときでも騒がしくなるから、聞いているだけで腹立たしい。
「……にしては、随分と本気だったみたいだったが?」
「じゃあ、リクエストにお応えして、本気をちょっとだけ見せてあげるよ」
そう言って、かましてくるやつが——
「……え?」
まばたきをしたつもりはなかったが、全くピーノが見えなかった。そして、右頬から痛みが走ってきた。
「少しだけ手加減してあげたけどね」
ちょっとだけだと! それでもこの速さか。
「次はどこにしようかな……?」
自分への歓声に調子に乗っている。ふざけやがって。
「今度はここにしよう」
蹴り出すのは見えて構えたが、それを上回ってしまうのか。左二の腕を風のように流れるように斬られた。
「ああぁぁ……!」
「パスクさんは、どうも動きの速い相手は苦手らしいと聞いたが、本当だな」
確かにセーキじいさんやキョウコには結局勝てなかった。速くても経験値が低いムギには勝てた。
その上、体力の長続きしない二人は落とせる可能性はあった。しかし、ピーノは体力がまだ有り余るくらいある。
相性最悪の相手だ。しかし、オレも同じ轍を踏まない。
まだ、言い足りなそうに話し続ける油断したピーノを、話ごと斬りつけてやった。
「うるさいんだよ! ごちゃごちゃと!」
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