『ザスパ草津にあって、ザスパ群馬に無いもの』。
答えは『草津』。そんな安易な答えではないです。
そして、なぜザスパは強くならないのか——考察していきます。
まず、元々『ザスパ』は群馬県の草津町にあった、『リエゾン草津』が前身となっています。
経営不振に陥ったリエゾンを立て直す形で、
大西忠生さん、賢持宏昭さん、植木繁晴さんが集まりました。
「Jリーグを目指す」形でクラブの再建。
その際、「温泉(=SPA)」をチーム名にする形で、『ザスパ草津』が誕生しました。
群馬県の一部リーグから再始動したクラブは3年でJリーグ昇格を果たし、
驚異的なスピードで目標達成することになりました。
しかし、順調だったのはここまで。
経営問題が発覚。
問題の中心人物だった賢持社長を解任することになってしまいました。
大西さんが後任となり、GM兼社長となりましたが、
翌年にはガンで逝去。
クラブ創設に携わった重要な人物をJリーグ昇格2年目で失うこととなりました。
そこで、社長業務を引き継いだのが、創設メンバーの植木さん。
しかし、経営はそう上手くいきませんでした。
スポンサーを増やそうとしても、まだJ2リーグ。
それでもクラブを発展するためには、県内企業などに営業活動をするしかありません。
けど、サッカー好きの経営者や地元貢献に積極的な企業ならまだしも、
そうではない企業にしてみれば、しつこい営業にウンザリしていたのではないでしょうか。
「J2の下位チームだから」などと言ってしまえば、
「強くなるために営業活動をしている」と、また営業に来てしまう。
では、なんと言えば執拗な営業から逃れられるか——。
「ザスパは草津町のチーム。群馬県のチームではない」
こう言えば、スポンサーにならない理由付けができる。
「うるせ! 草津温泉は、群馬県の代表する観光地だ!」
と、突破力のあるFWのように契約というゴールを奪っていった営業さんは多くいたとは思えず。
「もう二度と営業に来るんじゃない!」という営業先からの激しいプレッシャーに押し返され、
強固な守備を崩せないまま自陣に引き戻されたのではないでしょうか。
しかし、守備を崩せないなら、戦術を変えるしかない。
群馬のチームではないというなら、「群馬」を付ければいい。
そこで考え出されたのが、「ザスパクサツ群馬」。
当時、「ザスパ草津群馬」にすると「ザスパ群馬」と略されることを嫌って、
あえて「草津」を片仮名表記の「クサツ」にしたとされています。
これはクラブ発祥地の草津町に配慮した形になります。
ただ、クラブの一方的な変更でサポーターは反発。
結局は、2013年から「ザスパクサツ群馬」として参戦します。
しかし、サポーターのクラブ離れも進み、
更にはチーム内外で問題も起き、成績も低迷続きでJ3降格。
やっとJ2に戻ってきても、状況は変わることはありませんでした。
聖域だった草津を2024年には取り「ザスパ群馬」にしましたが、
現時点では改悪となってしまいました。
ここで疑問が生まれます。チーム名に都道府県名を入れたら、クラブ状況は良くなるのか——。
まずは、オリジナル10とひとつ。『ジェフユナイテッド市原・千葉』。
呼称は『ジェフユナイテッド千葉』。
J1から降格して以来、15年間もJ2滞在(2024年現在)。
次に、『いわてグルージャ盛岡』。変更時に地域名も『岩手』に変更。
2022年シーズンにJ2に所属していましたが、1年で再びJ3へ。
今期2024年は、J2昇格どころか場合によってはJFL降格の危機。
両者に関していえば、都道府県名を入れて成功しているとは言い難い……。
『北海道コンサドーレ札幌』、ここは2024年現在でもJ1に所属。
ただ、『北海道』も『札幌』も強いブランド力のある名前。
『コンサドーレ』も道産子という意味なので、
チーム名が長くなってしまいましたが北海道感が増した印象。
まさに、鬼に金棒、虎に翼というところでしょう。
そこで、「草津」と「群馬」に、どれだけのブランド力があるのか。
まず、「草津(温泉)」。
『じゃらん人気温泉地ランキング2024』で、全国第1位。
旅行会社社員などが選ぶ『にっぽんの温泉100選』、21年連続第1位。
もう一度行ってみたい温泉地、第1位。
……など、中には1位でないものもありますが、ランキングを取るとほぼ上位。
温泉番付「温泉地部門」でも、東の横綱として君臨。
全国的に有名な人気温泉地といって過言はないでしょう。
更に、英語版ウィキペディアの群馬県ページにはこう書いてあります。
「Gunma has many hot spring resorts and the most famous is Kusatsu Onsen.」
(群馬県には多くの温泉地がありますが、その中でも特に有名なのが草津温泉)
世界的にも知られている日本の温泉地ですね。
一方、「群馬」。
都道府県魅力度ランキング2023年度版、47都道府県中44位。
県外の人にイメージを聞くと「山が多く、田舎」。付随して「グンマー」と弄られる。
「温泉や観光地が多い」という良い意見もありますが、どうしても「草津」が紛れ込む。
日本国内でもそうですが世界的な知名度は、『草津温泉>群馬県』となり、
群馬県にある草津温泉というより、草津温泉がある群馬県ですね。
県外の人に、草津抜きで群馬県の良さを語るには難しいものです……。
群馬県が魅力度ランキングが下から数えた方が早いにもかかわらず、
最下位にならないのは草津のお陰かもしれません。
チーム数やリーグの成熟度もありますが、『群馬』をつける前はそこそこだった。
つけた途端に迷走、更に『草津』を取ったら低迷。
これはもう『グンマー』の呪いかもしれません……。
そういったことでは、大都市ですが『ベガルタ仙台』や『名古屋グランパス』のように
都道府県名をつけずに『草津』のままやり抜いても良かったのではないでしょうか。
『宮城県』や『愛知県』と言うより、『仙台市』や『名古屋市』の方がインパクトはありますね。
初めに心に決めた志を最後まで貫き通す『初志貫徹』という言葉があります。
昔は、弱いながらも「J1まで目指そう!」というハングリーさがあった。
クラブはもちろん、選手がそういう強い気持ちでやっていたから、
サポーターも一緒に目指そうとみんなで躍起になっていました。
けど、今は最大の特長だった「温泉街からJリーグ」感も無くなり、
ただの「群馬県のJリーグチーム」になってしまった。
大西さんの逝去以降、経営陣がコロコロ変わり、
リエゾンからザスパに変わった時の志を貫き通せなかったことが起因しています。
一時期『東京』を入れるなどチーム名やエンブレム・マスコットの変更で揉めてたが、
結局変えずに町田を貫き通した『FC町田ゼルビア』は現在J1首位。
まだJ2までしかなかった頃に、あるサッカー雑誌に書いてあったこと。
「J3、J4とカテゴリーができていった場合、当然サッカークラブも増えていく。その中で特長のあるクラブ作りが求められる」
とありました。
2024年現在、J1、J2、J3の合計は60チーム。
同一都道府県に複数のクラブがあるところも出てきています。
群馬県はザスパのみだが、関東はチーム数が多いエリア。
地元チームにこだわらなければ、魅力的なチームは関東には多くいます。
魅力的なチームでなければ、地元でも相手にはされていきません。
鶴舞う形の群馬県で、鶴の一声に負けて経営が紆余曲折してしまった。
そのため、世界で通用する『草津』を捨て、国内で勝負できない『群馬』にこだわりすぎた。
大西さんがあと10年生きていれば、クラブもまた違ったと思いますが、
徹底した『草津(温泉)』ブランドを高めて行けば、また違った結果になった。
サッカーはよく分からなくても、草津温泉は知っている。
実際、Jリーグ昇格当初のザスパサポーターには、こういった人も少なからずいました。
群馬県内がダメなら、県外からスポンサーを集めても良かったのではないか。
現在も地域名は都道府県名か市の名前がほとんどになっていますが、
町村名はJリーグの歴史上『ザスパ草津』が唯一。
『草津温泉』に大便乗作戦で、町村からJ1昇格を目指すビジネスモデルを確立し、
オンリーワンのJリーグクラブを構築すればよかったのでなないのか——。
しっかり外堀を埋めてから、もう一度県内企業にアタックできたのでは。
『ザスパ草津にあって、ザスパ群馬に無いもの』
それは決定的な『ブランド力』。
世間で売れ続けている商品・サービスはブランド力がある。ないものは淘汰されて廃れる。
人は価値のないものには、お金を出さない。
長年積み上げた信頼・信用性などで、ブランド力は高まるものです。
さて、このまま「ザスパ群馬」のまま、新たなブランド力を作り出すか、
それとも原点回帰で「ザスパ草津」からやり直すか。
クラブがJリーグに何十年も残るには、長期的な経営戦略が求められます。
最後に、このクラブ誕生してから既になかったもの。
それは、
『ザスパ草津のまま、100年群馬のチームとして戦う強い意志』、
だったのではないでしょうか。
きとぅん・はーと、Kitten Heart BLOGの中で2番目の長文、
最後まで読んでいただきありがとうございました。
※各情報は2024年6月7日現在のものになります。
そう言っていただき、幸いです。
これからもよろしくお願いいたします。
さくらさんのコメントを読んで、自分も全く同じ気持ちだなと思いました。
クラブの試行錯誤には本当に苦労があったんだなと感じますし、「ザスパ群馬」という名前に違和感を持つのもすごく共感できます。正直、「群馬」って響きがカッコいいかと言われると微妙で、むしろ「草津」の名前には地域の誇りや特別感が詰まっていると思うんです。「ザスパ草津」のままの方が、もっとチームを応援したくなるし、プライドを持てたんじゃないかなって感じますね。
yuna meeさんのように詳しく丁寧にまとめてくださる方がいると、本当にありがたいです。同じような考えの人がいると分かって、安心しました!これからもブログ楽しみにしてます。頑張ってください!
素敵なコメントありがとうございます。
これからもよろしくお願いいたします。
ブログを拝見して、とても共感しました!
特に、草津町を拠点にしていた頃や、Jリーグ参入に向けた試行錯誤について深く納得しました。
私も「ザスパ群馬」という名前には違和感を感じていて、「草津」という地域名の持つ特別な響きをもう少し大事にしてほしいなと思うことがありました。
同じような考えを持っている方がいると知って、安心しました。
ブログの丁寧な解説や、サッカーへの熱い思いが感じられて、とても素敵だと思います。
これからもブログ更新を楽しみにしています!頑張ってくださいね!
やっぱりオーレですよね。
でも今と違って、この時はまだロン毛でしたよね。
情報ありがとうございました。
まず、yuna meeさんの意見に全面的に賛同します。
草津町を拠点にしながらJリーグ参入を目指したことや、その後の現実的な苦境についてしっかりと触れられており、地域サッカークラブの運営がどれほど難しいかが伝わってきました。
一方で、群馬を愛するただの人さんのコメントには少し誤解があるように感じます。
例えば、「最初から群馬県全体のチームとして作るべきだった」との主張ですが、それでは鹿島アントラーズのクラブ運営で成功した事例を否定することになってしまいますよね。
鹿島も最初は小さな町から始まり、地域に根差しながら全国的な成功を収めたわけで、ザスパの取り組みもその路線を目指していたと言えるでしょう。
また、クラブが発展するために必要なのは一体感ではなく、「強さ」だというのも大切なポイントです。
サポーターの熱意や地域の支援が土台になる一方で、結果を出す力がなければ、やがてモチベーションも薄れてしまいます。
「オーレ」で確かにその話が出ていましたね!
「草津町にスタジアムを作りたい」という夢を語っていたのを思い出します。
パーソナリティの方、髪型が特徴的で、リスナーとしてはつい髪型に注目してしまいますwww
そうしたキャラクターが番組全体の雰囲気を柔らかくしてくれているのも印象的でした。
草津町のスタジアム構想が現実にならなかったのは本当に残念ですが、クラブが夢を持ち続けて挑戦していたこと自体が大きな価値だったと思います。
それも一理ありますが、ちょっと違うかなと思います。
まず、前身のリエゾンはJリーグを目指していなかった。
再建策として、ザスパに変えてJリーグを目指した。
その時に前橋市などに移す手もありますが、その余裕はなかったでしょう。
むしろ、Jリーグ昇格後もずっと草津町拠点で進めたかったみたいでしたよ。
けど、県内にJリーグの試合ができるのは正田スタしかなく、泣く泣く前橋市にトップチームを移した。
クラブを大きくして最終的に草津町へ戻す考えで、草津町のどこかにスタジアムを作るのが夢だと聞きました。
確か植木さんだったと思いますが、ラジオのインタビューで語っていましたね。
だからこそ本社もしばらくは草津町にありましたが、現実は想像以上に厳しく今に至ります。
最初から「群馬県のチーム」としてJリーグ参入したとして、今のザスパ以上の結果を出せたかは懐疑的。
草津町に作ろうとしたことが失敗ではなく、群馬県で作ろうとしたことが失敗でしたね。
草津町にチームを作ったリエゾンに罪はないし、リエゾン時代のことまで書いたらキリがない。
あんまり長いと最後まで読まなくなるのかな……という懸念もある。
私の師匠の教えもあって、その辺りはご理解頂きたいです。
草津町サッカースタジアムの話を聞いて、本当に実現したら素敵だな……という想いはあっただけに残念なことになってしまいましたね。
群馬の都市部の市民からしたら、草津って群馬だけどちょっと遠いしあまり一体感が生まれにくいよねーと思っちゃう。それよかもっと人口の多いエリアを拠点にしたり、群馬の名前でチーム名を創った方が断然良かったと思う。
当初はJリーグが生まれてまだ間もない頃だったから片田舎の温泉町からJリーグを!なんてノスタルジーに浸る様なストーリーが話題にはなったが、J1に行けるような本当に強いチームを作ろうとまでは考えが及ばなかったのだろうと思う。
現在のようなJに60チームもあり昇格だ降格だとせめぎ合いの続く年間を戦い抜かなければならなくなるとは思いもしなかったのだと思う。
だから今更草津ではスポンサーやサポーターも増えないと気付き群馬の名前を入れても、いやでも元は草津のチームじゃん、て事になっちゃう。
元々群馬には前橋というサッカー所があったにも関わらず前橋の名前のチーム名が作れなかったのも痛かったのではないか。
恐らくザスパ群馬ではこの先暫くは強いチームを作る事は出来ないだろう。
それよりも、他のチームが群馬県、関東リーグ、JFLと勝ち上がってJに入るようにした方が結果早い気がする。
しかしその可能性があるチームも現状出て来ていないのが寂しい。
図南前橋とかあるが所詮前橋商業OBチームが前身だから、他校OBからしたら応援したくはないだろうし、赤城の様な裾野の広がりを見せることは無理だろう。。。
群馬県の高校サッカーまではこれからも明るいと思うが、その先は全くの闇なのだ!