私は、とても火焔(火)に興味があり、より力を入れていきたいと考えています。
火焔は不思議な存在です。
目で見て存在を把握することはできますが、触れることができない不思議なものです。
彫刻で形にするのは非常に困難で、シルエットを重視した火焔の彫刻は多く存在しますが、立体を考え表現している彫刻はどれだけ存在するでしょうか。
運慶や快慶が制作した不動明王の火焔はあきらかに時代が異なり、後から制作されたことが伺えます。
どのような火焔を彫っていたのか、とても興味深く、色々と想像してしまいます。
私の師匠、斎藤侊琳先生は常にどの角度から見ても動きのある火焔にこだわっていました。
私もその影響から火焔の難しさを実感しています。
だからこそ研究しがいがあり、追い求めたい存在なのです。
波の伊八という江戸時代の彫刻師をご存じでしょうか。
伊八の彫る波は本当にその場に波があり動き出しそうな表現がされています。
火焔に似て目で見ることができますが触れると水になり、波の形を保つ事ができません。
何度も海を眺め、波を形にする事を考えたのだと思います。
私も火焔に魅了され何度も何度も研究し火が持つ本当の意味を形にできればと思います。
迦楼羅を火焔で表現しています。
右半分は羽をモチーフにしています
左側半分は迦楼羅の胴体と顔があります。
口ばしも表現しています。
上の先端は尾っぽをイメージしています。
叩き鑿と仕上げ鑿を使い分けて彫り進めます。
正面のシルエットだけではなく斜め横や、真横からも繰り返し観察し動きの変化を付けていきます。
光背は本体を生かす重要な存在です。
火焔は表現が自由なため作者の表現が色濃くあらわれます。
紺野 侊慶