朝洗濯物を干そうとベランダに出ようとしたときのことである。
窓を開けようとして、ぎくりとした。
なんだ?この状態!
きちんと端に寄せて置かれたはずのベンチが無造作に動かされ、 金魚の水槽の蓋が開いているではないか。
おまけにエアーポンプが外れて、フラフラと力なく泳ぐ金魚が目に入って血の気が引いた。
大慌てでポンプを突っ込む。
二匹だけしかいない…。
七匹もいたはずの金魚がたった二匹…。
沈んでる…。
体もボロボロで無残に…。
残された一匹もフラフラ…。
ショックでかなりパニックになった私。
まだ寝ているいっくんを叩き起こして問い詰める。
「知らない!やってない!!」
必死で訴えるいっくんの言うことが信じられず…。
「あんな重いベンチを誰が動かせると思ってんの?!いっくんじゃないなら誰?!」
しばらくしてやってきた伴侶に事情を説明してベランダに向かう。
人の仕業なら、警察を呼ぶことも考えないと…。
冷静になれない私とは裏腹に、じっとベランダを見ていた伴侶が言った。
「この足跡、桜にしては大きすぎるんちゃうか?」
え?
ホントだ!足跡だ!
土混じりの乾いた足跡は、まるで大型犬、レトリバーくらいの大きさがありそうに見える。
ここにも…。
愕然としながらも思い出した。
昔、山だったここには未だにたぬきが沢山生息している。
子供達が 小学生の頃靴を持って行かれた子がいていじめだ、なんだと問題になったことがあった。
体の割に手足が大きく雑食で何でも食べる 。
これはタヌキの足跡なのではないだろうか…。
春もきたし食欲も出てきただろう、と水替えをすませ、気持ちの良い広い水槽に移したばかりだった。
最後の一匹も傷はとても大きくおそらく数日以内に死んでしまうだろう。
悲しかった。
数年も経ち大きくなった金魚は、こうして突然いなくなったのだ。
悲しくて堪らなかったが、きっとたぬきだって春が来てお腹が空いていたに違いない。
たぬきだって危険をおかして民家に入り、生きることに必死で立ち向かっているのだ。
日常では忘れてしまう弱肉強食の自然の世界に、胸が痛かった春の日である。
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