鬼さん、こちら
手のなる方へ。
目隠しされたあなたの心に向かって
私はせいいっぱい呼びかけている。
気付いて
振り向いて
危なげな足取りでも
私の方へ歩いてきて
右へ左へ、迷うあなたの側で
見つめているから
待っているから。
転んだら支えるから
迷ったら手を鳴らすから
気付いて、心の声。
鬼さん、こちら
私の方へ。
鬼さん、こちら
手のなる方へ。
目隠しされたあなたの心に向かって
私はせいいっぱい呼びかけている。
気付いて
振り向いて
危なげな足取りでも
私の方へ歩いてきて
右へ左へ、迷うあなたの側で
見つめているから
待っているから。
転んだら支えるから
迷ったら手を鳴らすから
気付いて、心の声。
鬼さん、こちら
私の方へ。
あなたが微笑んでくれると、
ちょっとだけ、うぬぼれちゃう。
廊下で偶然すれ違う、優しい瞳に期待しちゃう。
同じ時間を過ごすとき、あなたも楽しいと信じちゃう。
偶然重なる視線に、裏の意味を捜しちゃう。
うぬぼれちゃう。
期待しちゃう。
夢見ちゃう。
でもね。でもね。
好意と愛は別ものだよって、どこかで囁く声がして、
しゅんってしぼむ、うぬぼれんぼう。
鏡よ、鏡、鏡さん
好きな人の名前を教えるから、
願いを三つだけ叶えて。
綺麗になりたい。
誰よりも輝いて、あなたの瞳に映りたい。
魅力的になりたい。
はじける会話で、いつもあなたを笑顔にしたい。
愛されたい。
いつまでも、あなたの愛にくるまれたい。
息を吹いて鏡に指で書く、あなたの名前。
鏡よ、鏡、鏡さん
真実を写さずに、夢だけを反射して。