「切幡寺の階段は333段、大変だ」と聞いていた。 階段はからきし自信がない。八番札所の熊谷寺で予定より遅れたと言ってヒッチハイクを頼んできた山口県の同い年のおっさんに情けないとは思いつつも手助けを 頼み階段を上った。遍路の初日、見栄もヘッタクレもない、ただ 登るだけを 考えてのことだった。
参拝を終え、下り階段は横並びで 降りた。別れ際、お礼に夏みかん渡すと、お返しにポケットから塩飴2個 取り出し私にくれた。階段くらい上れなくてはこの先たいへんだ、と私へのアドバイスだと飴を見て思った。実にしょっぱい塩飴だった。閉門 間近、 薄暗くなった 山 門前 で おっさんとは 別れた。 「お遍路日記」より