以前ガンダムシリーズの宇宙世紀(以下U.C.)に関するシンポジウムが開かれたことにインスパイアされた私クワヒロ・バラーナがU.C.に関していくつか研究を行ってみた中から、『百式は百年先も戦えたのか?』と「Z」に登場するクワトロ・バジーナ大尉が劇中で搭乗したモビルスーツ(以下MS)のMSN-00100 百式について研究したことを昨年10月に記事にしてみました(⇒『百式は百年先も戦えたのか?』はコチラからどうぞ。先程一部見直しをして更新しました)。
ただ、その後は他の研究したことについて記事が更新できてらず、気が付けば2023年も終わりそうなので、今日は久々に記事にしたいと思います。
テーマはちょうどYouTubeで配信が再開された「ZZ」から、『ネオ・ジオン(アクシズ)の騎士について』です。
もっとも研究成果を記事に起こそうとした時に前回のような感じ(本人は「アナハイム・ジャーナル」風なのですが)にすると筆が進まずに今日に至った部分もあるので、このままの流れで記事にしていきたいと思います。
" 赤い彗星 " ことシャア・アズナブル少佐や " 青い巨星 " ことランバ・ラル大尉ら「ファースト」の登場人物、特にジオン公国軍に所属する登場人物によって、所謂軍隊における階級制度を知った方も多いのではないかと思います。
私もその一人ですが、そのジオン公国の残党として続編の「Z」及び「ZZ」に登場したアクシズことネオ・ジオンの登場人物においては劇中で階級を付けて呼ばれる登場人物はラカン・ダカラン大尉のみ、それも初登場の回だけだったと思います(ネオ・ジオンの地球降下作戦後に登場したデザート・ロンメル中佐とその部下については、ネオ・ジオンの降下作戦に呼応したような形でエゥーゴのガンダムチームと交戦するもネオ・ジオンに合流したような描写はないので除きます)。
ただ、そのラカン・ダカランも前述した通り初登場後は劇中で " ラカン大尉 " と呼ばれることはなく、一応Wikiによると「ZZ」の後半に登場するイリア・パゾムが少尉とされていますが、劇中で " イリア少尉 " と呼ばれることはなかったと記憶しています。
そのWikiによるとラカンが大尉とする記述はなく、「ギレンの野望」では確かラカンの階級は少佐だったと記憶しており、そもそも「ZZ」に初登場時にラカンが大尉と呼ばれていたことも確かではなかったりします。
また、「Z」の前日譚とも言える「0083」でアクシズの先遣艦隊を率いたハスラー提督の階級は少将とされていますが、「ZZ」にハスラー提督が登場することはなく、そこもはっきりしておりません。
その他のネオ・ジオンの登場人物も階級で呼ばれることはなく、代わりに指揮官クラスに騎士としての称号が与えられる、すなわちアクシズ及びネオ・ジオンでは騎士 ≒ 指揮官クラスの士官とする組織体制であるとされています。
これは「ZZ」に最初に登場したネオ・ジオンの士官であるマシュマー・セロが自らを騎士と称したことに端を発すると思うのですが、なぜアクシズ及びネオ・ジオンはジオン公国軍の階級制度を踏襲せずに騎士を指揮官クラスとする組織体制にしたのか、またアクシズ及びネオ・ジオンの騎士をジオン公国軍の階級制度に置き換えるとどれぐらいの位置にいるのかを考えてみた次第です。
それでまずなぜアクシズが指揮官クラスの士官を騎士とする組織体制にしたのかを考えてみたのですが、その背景にはアクシズの兵の練度の低さ、構成員の層の薄さがあると思いました。
そもそも一年戦争時に地球連邦軍に比べると層が薄いとされるジオン公国軍の敗残兵と辺境の資源衛星基地の守備隊で再編成されたのがネオ・ジオンの母体となるアクシズであり、ただでさえ一年戦争終戦前のジオン公国軍の人材は一年戦争開戦時よりもさらに乏しくなっていたとされていたことから、アクシズに集結した残存兵力の層の薄さも想像出来るかと思います。
特にジオン公国軍でMS中隊の隊長やパトロール艦隊の指揮官を担っていた士官、少佐~大尉の層が薄くなっていたと思います。
それもデラーズ紛争時にハスラー提督麾下のアクシズの先遣艦がデラーズ・フリートの残存兵力を救助するもアクシズの再編成時の前には主導権を巡る内乱も起こっていたとされており(もっとも「CDA」は「AOZ」同様やりすぎだと思います)、この内乱で敗れた勢力は粛清されたとも言われています。
また、数少ない実戦経験豊富で高い戦績も誇るシャア大佐もこの内乱を境にアクシズを離れたとされていることから、指揮官クラスの士官は人材が不足していた状況に陥っていたことが想像されます。
すなわちアクシズの再編成時に新兵もしくは下士官の中から新たに指揮官に任命しなければならない状況であったと思います。
また、内乱後にザビ家の唯一の生き残りとして公王の座を継承したミネバ・ラオ・ザビの摂政としてハマーン・カーンがアクシズの実権を握ることになる訳ですが、ニュータイプではあるも実戦経験はほぼない中でジオン公国軍より規模は小さいも軍組織単位で考えると実質的には将官の役割を担うハマーンへの反発も予想されていたと思います。
そもそもアクシズで主導権争いが起こったその背景には、ザビ家の派閥争いがあったと思われます。
所謂ギレン・ザビ総帥とキシリア・ザビ少将の対立は相当根強かったと思われ、実際ギレンのクローンとされるグレミー・トトが「ZZ」の終盤でハマーンに反乱を起こす訳ですが、その後押しを行ったのはギレン派と言われています。
一方、ジオン公国軍の勢力的には宇宙攻撃軍を率いたドズル・ザビ中将の勢力もあり、ハマーンの後ろ盾となっていたのはこのドズル派とも言わていますし、そもそもミネバはドズル中将の忘れ形見でもあります。
そのミネバですが、ソロモン陥落時にミネバを保護したのはキシリア少将麾下の突撃機動軍のマ・クベ大佐あり、かつア・バオ・ア・クーでの攻防戦で敗れた後にミネバや敗残兵を取りまとめたのも突撃機動軍のシャア大佐で、アクシズに向かう敗残兵の主導権は突撃機動軍が握っていたと思われます。
実際ギレン総帥の戦死はキシリア少将による暗殺だと察したギレン派のエギーユ・デラーズ大佐はギレン総帥の親衛戦力である麾下艦隊を率いてア・バオア・クーから離脱しており、アクシズに向かっている敗残兵の構成におけるギレン派の比率はキシリア派を下回っていたと想像されます。
これはあくまでも私の想像ですが、アクシズにおていはギレン派ともキシリア派とも対立関係には至っていたなかったドズル派は実質ギレン派とキシリア派に分断され、前述した内乱に発展し、ドズル派+キシリア派を後ろ盾にハマーンが実権を握ることになったと思われます。
ドズル中将麾下の宇宙攻撃軍はソロモンの攻防戦でドズル中将が戦死した後は実質ギレン総帥の指揮下にあったようですし。と思われます。
また、シャア大佐もアクシズではキャスバル・ズム・ダイクンであることよりも突撃機動軍のシャア大佐であったと思われますし、ハマーンをミネバの摂政に推挙した一人がシャア大佐でもあったとされていますし。
そして、アクシズの指導者的立場となったハマーン自身がジオン公国及びザビ家の忠誠心は低いとされ、ドズル派+キシリア派を後ろ盾にしつつもハマーンはハマーンで自身の派閥で指導部を固める、自分に忠実な子分を並べることにより体制を強固にすると考えたのではないかと思われます。
すなわちハマーンが指揮官クラスとして登用する士官に求めることは当然自身への忠誠であり、そうなるとおのずと取り込みやすい新兵からの登用、すなわち抜擢人事を行ったと思われます。
実際「ZZ」の劇中でマシュマーやキャラ・スーンら騎士の口からはジオンやザビ家よりもハマーン個人の名前が出る方が多かったと思いますし、グレミーの反乱軍に参加するラカンも劇中ではハマーンへの忠誠を示す姿が描かれていましたが、一方でラカンがジオンやザビ家への忠誠を示す姿は描かれていなかったと思います。
もっとも自身への忠誠を重んじて指揮官に登用したとはいえ、前述したように実戦経験はもちろん実績がほぼない中からの登用せざるを得ない訳で、逆に残っていた一年戦争を経験しているベテランからするとマシュマーやキャラがいきなり指揮官に登用されることへの反発も予想されたのではないかと思います。
そこでかつての旧ジオン公国軍のベテラン勢の階級にも配慮しつつ、ハマーン派で固める方法として考えられたのが騎士であったと思われます。
具体的にはあくまでもジオン公国軍の階級は階級で残しつつ、一定の権力を実戦経験のないであろうハマーン派に与える方法、それが騎士の叙任であったと思われます。
もう少し踏み込んで書くと現実世界にもある階級のない軍隊のように役割を以って指揮命令系統としつつもあくまでもジオン公国軍を継承する組織ですから、ジオン公国軍を踏襲しつつも新兵はもちろん下士官や兵卒からも有望な人材を指揮官に登用する、抜擢人事が騎士であったと思われます。
そして、騎士は軍隊組織の階級は持たずとも旧ジオン公国軍の士官相当の権限を持つ、「ZZ」劇中でのマシュマーやキャラにグレミーの指揮権の範囲(MS隊の中隊長兼巡洋艦の艦長)を「ファースト」の登場人物と比較するとシャア少佐やランバ・ラル大尉ぐらいの指揮権、少佐待遇もしくは大尉待遇と同義語であったのではないかと思います。
これは「Z」でカミーユ・ビダンがエゥーゴでは中尉待遇であったり、「V」でザンスカール帝国のクロノクル・アシャーが劇中で中尉から大尉に昇進してほどくなくして大佐待遇としてモトラッド艦隊の司令官を務めていますが、これらに近い形であったではないかと思います。