「京都・北山丸太」 北山杉の里だより

京都北山丸太生産協同組合のスタッフブログです

京町家ゲストハウスで活かされた北山杉

2014年07月15日 | 北山丸太・みやこ杣木 使用事例

先日、京都市上京区にある油の老舗、山中油店さんが所有される京町家をゲストハウスとして改修され、その内覧会にご案内いただきました。

京都市内に残る京町家は年々減少していて、その保存が課題となっていますが、こちらのようにゲストハウスとして改修して多くの方が宿泊目的で活用できるようにされる事例も最近少しずつ増えてきているようです。
この町家は、今では珍しい10軒連棟長屋。そのうち6軒がゲストハウスとなりました。

 

そして今回、そのうちの1棟に北山杉の小丸太や腰板をご使用いただきました。

間接照明をうまく使った、北山杉小丸太の天井意匠です。とってもいい感じですね!

 

こちらの部屋も天井板の下に北山杉の小丸太を配し、意匠としてとてもうまく使われています。

 

そして玄関には北山丸太の面皮を活かした腰板。とても味のある表情です。

 

こちらは寝室。とてもリラックスできる空間でゆっくり眠れそうですね。

 

この日は門川京都市長もお見えになり、京町家を残し活用する取組みを視察されました。

店主は、築100年のこの町家を、今回の改修であと50年は使っていきたいと言われてました。
古都京都をかたちづくる町家を次の世代に引き継ぐ努力は、簡単な事ではないけれど、惜しまずにやっていただきたいものだと思いながら、この町家を後にしました。
 


北山丸太の小さな町家 「バスの駅」南太秦

2014年05月05日 | 北山丸太・みやこ杣木 使用事例

気がつけば4月も終わりゴールデンウィーク真っ最中となりました。その4月29日、ここは京都市右京区南太秦。

推古天皇の時代に建立された太秦広隆寺を南に約800m行った場所に真新しい木製の建物が完成しました。

「これは何ですか?」と建築中にも通りかかる人から何度も尋ねられたこの建物。

 

 これはバス待ちスペースとして建てられた京都市交通局がすすめる「バスの駅」です。

「バスの駅」はバス停に隣接する民間の土地を借りて屋根やベンチ、バス接近表示を設置するというもので、バスを待つ人々のバス待ち環境を向上させ、ゆったり快適にバスを待つことができるようにといった思いから生まれたスペースです。

その第1号として今回京都市内のここ南太秦と清水道(東山区)の2カ所に誕生しました。 

 

オープニングセレモニーには生憎の雨天にもかかわらず、京都市長も来られて除幕式が盛大に行われました。

 

多くの方が座ることのできるスギのベンチやバスが接近していることを視覚と音声で教えてくれるモニターが設置されています。

 

そしてもっとも特徴的なのは、屋根を支える8本の北山丸太。
バスを待つ方がゆったりと落ち着いた気分になれそうな、やわらかな雰囲気をつくっています。

天井にも杉板が貼られていて、これは本格的な木造建築物です。

奥に細長い敷地形状に合わせ、京町家の形態をイメージした意匠で、この建屋の設計は、木材の構造計算や強度試験などを行っている京都大学 生存権研究所が担当されました。
もちろん、しっかりと構造計算がなされています。

そして数年後に柱の北山丸太に劣化が生じても、1本単位で交換可能な設計がなされていて、メンテナンス対応もしっかりとされています。
使われている木材は京都市域産「みやこ杣木」。地産地消や環境にも配慮しています。

 

撮影に行った日も、近くにお住まいの方でしょうか?年配のご夫婦が仲良くバス待ちをされていました。

 

 

京都の市街地では非常に珍しい木製のバス待合スペース。全国的にも珍しいのではないでしょうか。

北山丸太の持つやわらかく、やさしい雰囲気が、バス待ちされる方々の気分を和らげ、ゆったり快適に過ごしていただける環境づくりにお役にたてれば、とてもうれしく思います・・。 


京都市動物園東エントランスオープン!

2013年07月10日 | 北山丸太・みやこ杣木 使用事例

梅雨が明けたとたんに猛暑となりましたが、梅雨明け発表前の先週土曜日(7月6日)、京都市動物園の東エントランス(白川通り側)がオープンいたしました。

 

当組合もオープニング式典にご招きいただきました。その理由は後程・・・。

テープカットが行われ、いざオープン!

東エントランス全体はこんな感じ。天井には京都の木が使われ、温かみが感じられます。

エントランスの少し奥はテラスになってます。

疎水の流れに面しており、噴水も見えてとっても涼しげです(^・^)

さて、エントランスを入ってすぐ左に、こちらの動物園唯一のレストハウス、その名も「kyotocity-zoo  kitchen&bar」が今回オープンいたしました。

そしてうれしいことにそのお店の内装に北山丸太(北山杉)を使っていただきました。この材は当組合より納入させていただいたものです。

 

 

入口を入ると開店祝いのお花と共に、まず北山丸太のスクリーンがお出迎え(^-^)

そして客席側から見ると・・とてもいい感じです。

木材の色合いとライティングがマッチして、店内はやわらかく明るい雰囲気、そして杉のとてもいい香りに包まれています。

店内の上を見上げると棟木に磨き丸太が使われ、また天井全面に杉板と、絞丸太(北山杉)を加工したルーバーが交互に配置されています。

このカウンターテーブルの足にも北山丸太が・・。

市長も店内に立ち寄られ、「木のいい香りやな~」

レストハウスのメニュー、動物園での楽しみの幅が広がりそうです(^.^)

東エントランスの完成により動物園の来場者が増え、そしてこちらのレストハウスが盛況となり、その一端に北山丸太・北山杉が少しでもお役に立てれば、とってもうれしいことです!

キリンさん、あなたもそう思うでしょ?

えっ?そんなの知らねえよって?ちょっと待ってよ~~~~~お~い~~~~

  

 


こんな家に住んでみたいな! 平成の京町家展示場 KYOMO

2012年12月03日 | 北山丸太・みやこ杣木 使用事例

平成の京町家モデル住宅展示場「KYOMO」が11月3日、オープンしました。

平成の京町家とは省エネや近代化が飛躍的に進んでいくこの時代、歴史都市・京都において長い年月をかけて培われてきた町家の伝統的な知恵を継承しつつ、現代の技術とが融合した家のこと。四季のうつろいや自然の力を大切にした住まいと、豊かな住まい方を提案するものです。

 

場所は河原町塩小路北西角。アクセスも良く、一目でわかります。

 

「KYOMO(きょうも)」という名称は公募で、「京都モダン(新しい京町家)」と「京もの(京都のもの)」、「今日も明日も(現代と未来をつなぐ)」というイメージを連想させ,言葉の響きがとても美しいということから選ばれました。

親しみやすくて呼びやすくてバッチリなネーミングだと思います。

 

この展示場の中で、京都市域産材をご紹介したのは100年住宅のゼロ・ホーム。

檜の床材を使っていただき、仕上がりの様子に興味津々!オープン前日、内覧会に行ってきました。 

 

ゼロホームが100年住宅と言うゆえんは、木造住宅を正しく施工し、品質が確保され、定期的な管理をしていたなら軸組みは100~200年持ちますが、大切な住まいを長い間、高いレベルで品質を維持するために、30~50年に一度取り替える必要のある壁や屋根、サッシ、配管の取り替えが容易にできる構造にて施工しているという点です。ゼロホームの100年住宅は、建売住宅も注文住宅も長期優良住宅の認定を受けています。

 

それでは早速、おじゃましま~す。

玄関ドアまでは屋根のあるポーチになっているので雨に濡れることもありません。

 

靴箱の上がフリーになっていて、一見お店のディスプレイのよう。

 

京都市産材供給協会のプレートと、みやこ杣木の認定証が鎮座しています(笑) 

 

ゼロホームの平成の京町家モデルハウスへのこだわりは、「風・光・庭」。

庭が三か所も配置してあって風が通り抜けます。吹き抜けの天井からは光が。こんなに現代的でありながら玄関から見通せる庭は、町家の「うなぎの寝床」を少し、思い起こさせます。 

 

靴をぬいで、ゆっくりした段差を上がれば目の前に広がるキッチン。

 

たっぷりと外光や風を感じながらダイニングテーブルを見渡せるアイランド型。シンクにはおしゃれなグース・ネックの水栓です。 

 

特に感じたのが採光。照明もいらないくらい明るく、大きな窓を開けると風が通って気持ちいいだろうなぁと思います。

そして窓の目隠しは縦格子で、京都らしい和風な感じもします。 

 

奥に見えていたのが洗面所・バス・トイレ。 

 

最近は洗面ボウルを上に置くのも流行っていますが、こちらは埋め込み式のアンダーボウル。スッキリとしたデザインです。 

 

仕切りの向こうにトイレ。個室ではないので完全バリアフリー、無駄を省いたシンプルな設計だと思います。勿論、換気も万全。 

 

透明ドアがチョット恥ずかしいかも?なバスルームです。明るくて広い! 

 

床はタイルではなくて、ウレタン素材のようなフッ素コーティングのような。。あたりが軟らかく、撥水性が優れているものです。 

 

中庭はウッドデッキ風。玄関から直通で抜けられるドアがあります。ここを解放すると風がす~っと通り抜けて夏も快適でしょう。

近代的でありながらも細かなところに昔の智恵が取り入れられています。 

 

入って左手の和室。平成の京町家ですから、やはり和室がなくてはですね。こちらは客間としても使える、趣きのあるつくりです。 

 

丸窓は何か料亭の一室のよう。しいて言えば・・・小さくてもいいから床の間があったらもっと素敵かも(笑)

 

リビングはたくさんの関係者で賑わっていました。設計担当の女性も大忙しです。 

 

それでは二階へ行ってみましょう。全体的に白を基調とした清潔な明るいイメージの中、手すりや窓枠の黒がきいています。

  

階段の途中にもこんな窓があります。寝室を壁で閉鎖しないでこの窓を開けておくとここからも風が通ります。

デザインは古都をイメージしたようなレトロ感。 

  

上からリビングを見下ろしてみました。吹き抜けになっているので高く、より広々とした空間づくりが実現しています。 

  

二階のフロアです。現在は様々な展示物がありますが、どのような間仕切りも可能。家を建てる時、出来るだけ大きな区切りにしておくのがベターだと聞いたことがあります。

狭く区切った部屋は壁を壊して広くするのが大変です。例えば子ども部屋を作ったり、書斎を作ったりなど広いフロアを区切るのは自在だからです。

 

収納やちょっとした遊び場に楽しい、ロフトもあります。天窓からの光が部屋全体を明るくしています。 

 

さて寝室へ・・・いよいよ京都市産材の登場です。檜特有の、少しピンクがかった色はとても優しく木目が美しく、手触りもすべすべ。 

今回は節のないものが準備されたようで、よりクリアに極上な雰囲気が味わえます。

 

寝室ですので、窓の格子が採光をやわらかくしています。 

 

先ほど、階段の途中で見えたまどは内側から見るとこんな感じ。 

 

その窓から顔を出してみると・・・リビングやキッチンの様子が感じられます。いつも、どこにいても風とコミュニケーションが流れる住まいです。 

 

壁一面のクローゼットで収納は十分。

 

フロアからベランダに出てみましょう。 

 

広いベランダからは京都の景色が一望できました。

これならお洗濯ものはたっぷり干せますし、子ども達の良い遊び場になりそうです。 

 

ベランダからは中庭のウッドデッキが 見下ろせます。「ただいま~っ」「は~い、お帰りなさ~い」なんて声が聞こえてきそう。

 

KYOMOのモデルハウスの中でも、ゼロホームは施工例や建材を詳しく展示していました。

 

 

 

実際に見ることで、どんな木材をどのように施工しているか知ることが出来ます。 

 

勿論、「みやこ杣木」の宣伝も! 

 

いかがでしたでしょうか? モデルハウスですから、見るもの全てが素敵でいいなぁ!と思いますが、この「平成の京町家」のモデルハウスそれぞれが確かなコンセプトを持っていました。

デザインが違っても、自然の力を借り、自然と共に人々が暮らしていた昔の町家の智恵を取り入れた家。現代人が忘れがちなものを住まうことで思い出させてくれるような家。それが平成の京町家なのかも知れません。

そこに京都市産材「みやこ杣木」が使われることで、住まうことが京都の森や林業に携わる人たちを豊かにするなんて、何て素敵なことでしょう。 

 

こちらは京都建築専門学校の建築家「卒業制作木工コース」の学生さんが建築している伝統型モデルハウスです。 

 

 

    

先月には大勢の方が参加しての荒壁塗り体験イベントが行われました。来春完成予定、とても楽しみですね! 

 

今回はゼロホームの内部をご紹介しましたが、この他二つの住宅会社のモデルハウスが展示されています。

それぞれの思いを込めた、平成の京町家。モデルハウス展示場KYOMOへ一度足をお運びになってはいかがでしょうか?

 

 

 


京都北山杉の里総合センター(3)

2012年11月13日 | 北山丸太・みやこ杣木 使用事例

朝晩は10℃を切る日も多くなりました。あと5分・・・あと5分・・・そろそろ、お布団から出るのも億劫です(^_^;)

皆さんはどんな暖房器具をお使いでしょうか?炬燵、ファンンヒーター、石油ストーブ、オイルヒーター・・・

北山杉の里総合センターの大会議室には、ここならではのストーブがありますよ!

それではセンターご紹介の最終回。 

 

前回は立礼式のお茶会も出来る、和室テイストの小会議室をご紹介しましたが、今回は大会議室です。

入って左手の奥。右手にテラスを見ながらお入り下さい。 

 

扉を開けると広がる空間。こちらは40名~50名でお使いいただくことが可能です。

 

入り口は引き戸で勿論、バリアフリー。車椅子でもゆうゆうとお入りいただけます。

そしてハンドルは手に優しいタルキを仕様しています。 

 

入ってすぐの右手には手作りの椅子なども展示しています。

そして四角いものは・・・「ペレットストーブ」です。ペレットは間伐材などを小さく圧縮して乾燥させた、地球にやさしい燃料です。

京北の森の力京都(株)で購入しています。 

ペレットストーブはとても暖かく、燃焼口にペレットが落ちるコロンコロンという音も可愛らしいし、オレンジ色の炎を見つめているといつまでも飽きません。

中にはグリルが付いているものもあり、ちょっとした調理も出来ます。お値段も張りますけどいつも欲しいなぁ~と思っています。

・・・という訳で、冷暖房も完備。

 

ふんだんに京都の木を使用しているのをご覧いただけるように、天井を貼っていません。高い天井は開放感に溢れ明るいイメージです。 

 

床にも京都の杉板を使用しています。ふしのあるもの、ないもの。赤身のもの。杉の持つ、さまざまな表情が楽しめます。

 

大会議室では国際機構や大学、高校、市府民団体などさまざまな分野の方々が研修を受けられています。

その他、私たちも参加するワークショップや総会、表彰式などにも使用しています。

見学・研修の方々にはこちらでDVDを観ていただいてから、詳しい説明や質疑応答があり、知識を持った上で実際に丸太や台杉、季節によっては枝打ちの実演などをご覧いただきます。

DVDは正面に大きなスクリーンを設置してプロジェクターで投影いたします。 

 

「京都の木」のサンプル。 

 

丸太のサンプルや、絞巻きに使う箸状当て材の今昔なども置いてあります。 

 

大会議室は、大きな施工例として実際に木の呼吸を感じながら北山杉・北山丸太を学ぶことが出来る部屋です。 

 

こちらは面皮柱のような風合いを生かした「洛北」という商品。木目が美しく、両サイドの絞りがやさしい印象です。

ここでは壁一面に繋いでいますが、腰板としてご家庭や区役所、学校などでも使われています。 

 

こちらにも、最初にご紹介しました沢井輝子さんの写真をパネルにしたものを展示しています。 

人々の暮らしや仕事、職人さんの伝統の技。

沢井さんが残して下さった中川の歴史は、見る者に懐かしさを呼び起こし、また感嘆させ、そして決して途絶えさせてはいけないと喝を入れてくれるのです。

 

いかがでしたでしょうか? 京都北山杉の里総合センターを大きく3回に分けてご紹介してきました。木の香りに包まれた、居心地のいい場所だとお分かりいただけたでしょうか。

北山杉・北山丸太の見学・研修は勿論のこと、夏休みの自由研究や小さな工作づくりなど、さまざまな年齢の方々にさまざまな用途でどんどんご利用いただけたらと思います。 

 

京都北山杉の里総合センター ご利用案内は以下の通りです。

■ご利用料金(消費税込)

施設区分           午前9時~12時     午後13時~17時       夜間18時~22時

大会議室(交流活動室)      4000円       4000円        4000円

小会議室(新商品開発活動室)    3000円       3000円        3000円

全館(大会議室・小会議室)     6000円       6000円        6000円

 

詳細につきましては、お気軽にお問合せ下さい。

開館時間:午前9時~午後5時まで

休館日 不定休

所在地 京都市北区中川川登74

研修・見学のお申込みはお電話で受け付けています。10名さま以上での体験の場合、ご利用の3ケ月前からご予約を受け付けています。 

ご利用申し込み・お問い合わせ 京都北山杉の里総合センター

TEL(075)406-2212

FAX(075)406-2823

 

ご来場を心よりお待ち申し上げております!

 


京都北山杉の里総合センター(2)

2012年11月06日 | 北山丸太・みやこ杣木 使用事例

高雄の紅葉もそろそろ色づき始めました。真っ赤な紅葉もいいですけど、緑と黄色と赤色が混ざり合った感じも爽やかな美しさです。

さて京都北山杉の里総合センターのご紹介、第2弾は小会議室です。 

 

前回の展示ホール、テレビの置いてある側に通路があり右側はお手洗いです。

とても明るいでしょう? 

 

天窓から自然の光を取り入れています。すりガラスでも夏場はさんさんと光が射しこみます。

逆に、お天気の良くない日は少々暗くなります。1日の時間の移り変わりが自然に感じ取れる、そんな通路です。 

 

左側の引き戸、両側に入り口がありますが、ここが小会議室です。

無垢板を合わせた大きなテーブル。10人程度の会議に最適です。そして、床の間もありますので立礼式のお茶会も出来ます。

 

立礼式のお茶室なので、和室の床の間とは違って高い位置です。 秋明菊など、季節の花が咲いたら生けたりもします。

掛け軸の意味は…わかりませんf(^^;)

 

床板は松材。そして、床柱はセンターを入ったところ左手に展示してありましたチェインジャブル、取り替え可能です。 

 

釘などは一切使わない取り替え方式、力持ちの方ならご自分でも出来るかも?

季節によって、お客様によって床柱を着替えるなんて贅沢で粋な試みですね。 

 

落し掛けは杉のなぐり。もともと、桐や桑などの銘木が使われますが、欄間のように派手な飾りものではなくて、あまり見えないところに特別な技が潜んでいるところが奥ゆかしく、「こんなところにも」とよけいに心をくすぐられます。長襦袢や羽織の裏地など、ちらりと見えた時の素敵は日本人独特のものかも知れませんね。 

 

丸太を使った照明がディスプレイしてあります。ほんのりとした灯りが年輪を際立たせ幽玄の世界へと誘います。

外国の方は興味を示されることが多く、その質問は「How much?」(笑) 

 

外光で明るい室内。障子を閉めれば完全な和の空間です。 

 

柱は面皮柱を使用しています。磨丸太を面皮加工する場合、樹齢の経った木の方が木目が美しく、手入れを怠った杉は後で節あとが出たりすることもあるそうです。職人さんの見極めも大事な作業になってきます。

 

それにしても、一体誰がこのような加工を思いついたのでしょうね。襖をしめる時、ふと手が触れた時に感じる木肌の磨きの部分。

シンプルに見せる、それが最も素材の美しさを表現しているのですから。

 

まだここでのお茶会は見たことがありません。ぜひお揃いで、着物をお召しになって和のひとときを過ごされてはいかがでしょうか。

 

天井にはたくさんのタルキ(小丸太)が。照明カバーと言うにはあまりにも贅沢なので意匠とでも申しましょうか。

数寄屋づくりを意識していますが、見た目に美しく、蛍光灯の光をやわらかくして部屋全体を落ち着いた雰囲気にしています。

 

数寄屋の語源の「数寄(数奇)」とは和歌や茶の湯、生け花などの風流を好むことであり、「数寄屋」は「好みに任せて作った家」という意味。

この小会議室もある意味「数寄屋」・・・現代の生活に風流を取り入れ、和の文化を忘れないでいよう、この部屋にいたら落ち着く、そんな思いのこもったひと部屋なのです。

 

天井に使ってあるのはこの和紙。荒皮むきが機械化されてるようになってから、高圧洗浄機で皮を吹き飛ばすため、細かくなった皮が大量に出ます。

それをリ・ユースしようという試み。

京都工芸繊維大学の木村照夫教授との共同研究で開発され、和紙で有名な黒谷の職人さんによる、手漉きの和紙です。

色は白っぽいものと茶色の2色あり、それぞれの風合いが楽しめます。

 

床の間の地袋にもこの、手漉き和紙が張ってあります。 表面に杉皮の繊維がふつふつと見えるのもイイ感じ。

小物の商品撮影をする時にバック紙の代わりにしたり、結構使わせてもらっています。(笑)

この北山杉を漉き込んだ手漉きの和紙は、北山杉の里総合センターで販売しています。(サイズ600㎜×900㎜

1枚2,100円)

 

失礼して床の間の上から撮影してみました。

他にもテーブルや照明など、和テイストのものを置いてますので少々ごちゃごちゃしていますが、見学の方は見るだけでなく触ってみたり座ってみたり楽しんでいただけたらと思います。

そして都会の喧騒から少し離れたところでの打ち合わせや会議もいいものではないでしょうか。 

 

いよいよ次回は最終回。大会議室の中、そしてご利用料金などをご紹介いたします。お楽しみに!

それまで待ちきれない方はこちらまでお問い合わせくださいませ。

京都北山杉の里総合センター   TEL 075-406-2212

 

  


京都北山杉の里総合センター(1)

2012年11月01日 | 北山丸太・みやこ杣木 使用事例

お久しぶりです。「Trick or treat?」と呟きながらお菓子を食べているうちに11月になりました。今年も残すところ2ヶ月。え~っ! もう2ヶ月?月日の過ぎるのは本当に早いですね。

朝晩は冷え込んで、当組合の事務所もすでにストーブを焚いています。今月半ばには素晴らしい紅葉がみられるのではないでしょうか?

このブログでもよく登場します、北山杉の里総合センター。先日も現地講義で大学生の方々が見えましたとフェイスブックでご紹介しましたが一体、何をする、どんな所なのか。何回かに分けてお送りしようと思います。

遠くの方は「ふぅん、こんな所なのか。。」とか、比較的近くの方は「こんな風に使えるんだ、行ってみようかな。」とか思っていただけたら幸いです。

 

場所は京都市北区中川川登。国道162号線を京北・美山へ向かってひたすら走ります。

市内からは車で40~50分、紅葉が美しい高雄からはおよそ10分ほどでしょうか。

中川の町並みを眺めながらも良し(トンネルが出来るまではこちらの道しかなかった歴史街道ですf^^;)、長いトンネルを通ってさっさと走るも良し、しばらく行くとゆるいカーブを曲がったら緑色の大きな看板が見えてきます。 

 

道路からは建物に「ようこそ北山杉の里へ」とウエルカム・ボードが。あっ、でもこれが見えたら行きすぎですからね。 

 

全景はこんな感じです。北山杉の山をバックに、いいところでしょう? 

 

JRバスも運行していますよ。「北山生協前」で下車して下さい。生協前と言っても、「CO-OPの建物があるのかな。」とか期待しないで下さい(笑)。実は北山丸太生産協同組合前の略なんです。そして、本数もあまりないのでお帰りの際の時刻をしっかり見てからお過ごし下さいますように。

 

この大きな看板を目印にウィンカーを出して入って来て下さい。逆方向から来られる方は少し見通しが悪いので、ご注意を。 

 

緩やかな下りで入ってくると、そこには駐車場が広がっています。マイカーも観光バスもよ・ゆ~のスペースです。

奥に見えるのが丸太を保管したり、市が行われる倉庫。シャッターの塗装を新調したばかりなので鮮やかなグリーンが目に飛び込んできますよ。 

 

右手に建物が並びます。看板にありましたように、京都市森林組合北山支所、京都北山丸太生産協同組合、京都市域産材供給協会の管理・活動の場です。一番奥の少し背の高い建物は丸太の乾燥室になっています。 

 

こちらが総合センターの入り口です。入って来られる時から木の温もりを、北山杉の香りを感じていただけます。

外から行けるバリアフリーのお手洗いもございます。 

 

大きな北山杉の輪切りが表札です。この玄関(?)の前で記念撮影をされる団体さまも多いようです。 

 

引き戸の扉を両側に開けると・・・中はこんな風になっています。右側にはタッチパネル式デジタルサイネージ。

見学・研修、体験学習はお一人様から団体数十名さままで、いくつかのコースがありますが、このタッチパネルだけでも北山丸太の歴史や育成から製品になるまでの流れを見ることが出来ます。 

 

左側には色いろな種類の北山丸太が展示されています。代表的な磨丸太・絞丸太、他にもちょっと変わった木などを実際に触れて味わっていただけます。 

 

展示丸太の下には「菩提の滝砂」が敷き詰められています。現在は機械で磨き作業の部分まで出来ますが、以前は菩提の滝で掬ってきた磨き砂で女性が一生懸命磨いていました。磨丸太のルーツとも言える砂を実際に手にとって指の先で擦ってみて下さい。手がツルツルになりますよ! 

 

中は北山杉をふんだんに使用した展示スペース。ゆったりくつろげる空間で、見学の合間に美味しいオーガニックコーヒーはいかがでしょうか。

喫茶はお休みの日がありますので、ご予約される場合に確認して頂いた方がよろしいかと思います。

 

高い天井を見上げれば、照明と外光がやわらかな光を小丸太に映し出しています。 

 

少人数でしたら、一つひとつ丁寧に作られた椅子に腰掛けて、こちらでDVDをご覧下さい。 

 

クラフトの展示、販売も行っています。お手頃な価格のものもありますので、お土産にはピッタリ。

そして、写真の展示もしています。昭和51年から57年にかけて、ここ中川で北山杉とそこに生きる人々を撮り続けた写真家・沢井 輝子さんの作品です。とても悲しいことですが2011年にご逝去されまして、夫君が北山杉の里の記録に、そして訪れる人々に北山丸太の歴史を見てもらいたいと膨大な枚数の写真を寄贈して下さったのです。

モノクロの一枚一枚は、沢井さんがファインダーごしに見つめ続けてきた、北山丸太と人々との暮らしを物言わず語りかけてくるようです。

 

ひとたびテラスに出てみれば、せせらぎを聞きながら爽やかな空気を胸いっぱいに。

夏は風が心地よく、冬は寒いですけれど雪景色も絶品。ここでも木造建築の美しさをじっくりと見ることが出来ます。

 

北山丸太づくしの空間はいかがだったでしょうか?

広いスペースで木の香りを満喫しながらゆったりと過ごしていただけます。研修のように堅苦しくなく、でも見るもの全てに納得できる、そんな北山杉の里総合センターの展示コーナーなのです。

さて、次回は海外からのお客様にも是非、見ていただきたいお部屋をご紹介します。どうぞお楽しみに!

 

 お問い合わせ先  

京都北山杉の里総合センター   TEL 075-406-2212

 

 

 


毎日放送「住人十色」にDOMA House登場!

2012年08月24日 | 北山丸太・みやこ杣木 使用事例

とても急で申し訳ないのですが、明日8月25日放送のテレビ番組についてお知らせ致します。

毎日放送「住人十色 ~家の数だけある 家族のカタチ~」。毎週土曜日に放送されている番組ですが、ご覧になっている方もいらっしゃるでしょうか。

今週は「京都西陣 町屋をリフォーム 日本&ハンガリー国際シェアハウス」と題して、西陣にあるユニークな町屋DOMA Houseの特集です。

 

ハンガリーからの留学生、バルナ・ゲルゲイさんは京都工芸繊維大学で工芸科学研究科造形工学専攻に在籍中。日本での暮らしは7年目を迎え、KPFA(京都府名誉友好大使)にも任命されています。京都の町屋の改修に興味を持ち、ついには友人たちと一緒に町屋を借りて、リフォームしながら共同生活が始まりました。

っと、あまり言っちゃうと種明かしになってしまいますね^^ここからは番組の予告編だと思って下さい。

 

 

場所は西陣。周りにはお寺の塔頭や商店街があり、道も狭く京都らしい町並みで生活感が溢れています。

何故「DOMA House」・・・?

 

 

DOMA=土間。

今ではほとんど見られなくなりましたが、日本の伝統的な民家の屋内空間。地面より高くしつらえた床に対し地面と同じ高さなのが土間。

されど土間は地面と同じ扱いの靴を脱がないで過ごす屋内の部屋であり、戸外と屋内の中間的な存在となっていました。

地面は珪藻土やコンクリート、タイルなど。旧家では主に土間に竈(かまど)が据えられた炊事場がありましたが、火や水を使う調理において防水性があり床のように腐る心配がなく、燃え移るものも少ないなど、非常に理にかなっています。

そして、土間は必ず家族や人が出入りする、交流の場であったにも違いありません。

また、江戸時代初期に歌舞伎劇場で、地面にじかに敷き物を敷いて観劇したことから、1階正面の観客席を土間とも言ったそうです。

 

 

ここに集ったメンバーは、この土間に一目惚れしてしまいました。築140年。想像以上にボロボロでフニャフニャな家だったけど、この土間があればなんとかなる、勇気を持ち続けられる、そう思ったのだそうです。

そう、自分たちでリフォームするセルフビルドのシェアハウス。この町屋は「土間の家」と名づけられました。

 

 

昨年の3月からスタートした「土間の家」リフォーム。

シロアリか腐食でスカスカになった構造材にため息をつきつつ、壁を塗りながら網目を研究。昔の左官に思いを馳せる。

時には屋根を歩いてみたり、ダンスをしたり、古いものに囲まれて新しい新しい技術を使う生活。それをテクノロジカルパラドクスと表現しています。

そんなんじゃぁ、なかなか進みませんよねぇ(笑)

でも、バルナさん曰く、「見た目は同じでも見えない変化を待たないといけないのかもね。」

一見、健康そうに見えても長い間かけて弱った体は徐々に、様子を見ながら順応していかないと、って感じでしょうか。けれど仕事が進まなかったもう一つの理由は・・・

 

日当たりの良い中庭に置かれたアンティークな乳母車の中には。。

 

バルナ・ゲルゲイさんと奥様のヤンカさんの間に産まれた新しい家族、マツキちゃんがすやすや~zzz 天使みたい。

トントンカンカン!の音で赤ちゃんがビックリしないように、眠りから覚めないようにの思いやりで作業はスローペースに^^

この時から半年が過ぎました。マツキちゃんはスクスクと大きくなっているでしょうか?番組で映ってくれたらいいな。

 

 

京都市内ですので、京都市内産木材・「みやこ杣木(そまぎ)」を使ったリフォームの補助を受けることが出来ました。 

京都市域産材供給協会から補助相当分の「みやこ杣木」を提供。広い町屋、もちろんこれだけでは足りませんが。

提供した材料がほぼ施工できた今年2月の半ば、確認のため土間の家に伺いました。真ん中にいらっしゃるのがバルナ・ゲルゲイさんです。

 

床材をチェック!

 

床材は京都市内産のスギです。提供した材料と幅があっているかメジャーで確認します。

 

敷居をチェック!

 

敷居はヒノキ。

 

鴨居をチェック! 鴨居は杉です。

審査を通過すると、リフォームの設計に沿ってどこにどんな材料をどれだけ使いたいかを京都市域産材供給協会に申請します。

プランが変更されることも稀にありますが、協会は申請どおりに提供部材が使用されているかを必ず確認しなければなりません。

 

 

土間の突き当りから中庭へ。この時は素通しだったので寒く、風よけのため木枠にビニールが貼ってありました。

 

 

現在、この中庭はミニシアターとなり、定期的にmovie nightが開催されています。

自分たちの仲間だけでなく、近所の人も自由に入れる開放的な空間。バルナ・ゲルケイさんの目指す異文化交流です。 

この大きな木は何の木かわかりませんけど、長い間、町屋の歴史を見守ってきたはず。国境を越えて土間を愛するハンガリーや外国の方が暮らすことになるとは思いもしなかったでしょうけれど、家族や隣近所の楽しげな声はきっと嬉しく響いているに違いありませんよね。

あれから半年。「土間の家」がどんな風に変わっているか、明日の放送が楽しみです♪

 

8月25日(土) 放送時間 16:54~17:30

毎日放送 「住人十色 ~家の数だけある 家族のカタチ~」

京都西陣 町屋をリフォーム 日本&ハンガリー国際派シェアハウス

ホームページはこちら http://www.mbs.jp/toiro/

 

そして土間の家 DOMA House のブログはこちら。http://d.hatena.ne.jp/doma_house/20120823/1345689165

ぜひ一度のぞいてみて下さい。新しい世界が見えて来ると思います。 

 

 


床の間のお話。

2012年08月23日 | 北山丸太・みやこ杣木 使用事例

8月も後半に入り、夕方にになるとツクツクボウシの声。朝晩は大分過ごしやすくなってきました。

今日は突然、雷とともに激しい雨が降りましたが、雷に打たれて命を失うこともあります。

小説「古都」では美しい雨宿りのくだりがありましたが、激しい雷の時は間違っても大きな木の下に入らないように気を付けましょう。

 

 

今回は少し、床の間のお話をしてみようと思います。

今では無駄なスペースだと、失われつつある「床の間」。けれどそこにはきっと歴史と意味があるはずです。どんな背景で生まれどのように使われてきたのか・・・。

室町時代、僧侶の住まいで仏画の前に机を置き、香炉・花瓶・燭台の三具足(みつぐそく)を並べたものが起源と言われています。そして机を造りつけにした押し板が登場し、貴族や武士の住まいでは飾り物を飾るようになりました。

やがては書院造に発展し、他の部屋よりも一段高い押し板が付けられ、主君が家臣と会う時などに使う「上段の場」となっていきます。

それは主君の座。聖なる空間でありハレの場であり、その人の権威を象徴する場であるとも言えます。


トコという日本語は、人が座る「座」「寝床」などの意味のほか、「とこしえ(永久)」「とこよ(常世)」などと使われるように、絶対に変わらない「永遠」というイメージもあるそうです。

家を造る際には床板を張り、その上に畳を敷いたり化粧板を張ったりしますが、その中で、絶対に安全で抜けたりはしない一隅が「床の間」。

その家が永遠に絶えることがないように祈りを込め、清潔に保ち、まるで見えない主君がそこに座しているかのように。

床の間はそんな特別な空間だったのではないでしょうか。

 

床の間を背にして着座できるのはその家の長のみ、もしくはお客さんですから客間では上座と呼ばれたりもしています。

その昔、武家では戦の勝利を祈願して鎧兜を置いたり、商人は商売繁盛を願って心得や家訓が記された掛け軸をかけたりしていたようです。

江戸時代になると庶民が床の間を造ることは贅沢なことだと規制されましたが、明治時代以降は上座として客間に設けられるようになりました。 

床の間のある和室を「座敷」と呼びます。

 

【資料画像】

 

現在の床の間は一畳程度で人が座れるような広さではありませんが、床柱に銘木(北山丸太f^^;)を使ったり床板や床天井に特別の材木を使っています。やはりそれは、床の間を家の中で最も聖なる空間として大切にしてきた、畏敬の念にも近い気持ちの表れなのかも知れません。

それでは床の間がどのような収まりになっているかをご紹介しましょう。

 

【資料画像】

 

床の間の形式には本床・琵琶床・洞床・蹴込み床・釣り床・袋床など様々なタイプがありますが、 これは一般的な本床(ほんどこ)の形式パターンです。

 

①床柱(とこばしら)

②床框(とこがまち)

③床板(とこいた)

④落とし掛け(おとしがけ)

⑤廻り子(まわりこ)

⑥天井板(てんじょういた)

⑦無目鴨居(むめかもい)

⑧長押(なげし)

⑨書院欄間(しょいんらんま)

⑩出書院地袋(でしょいんじぶくろ)・床脇地袋(とこわきじぶくろ)

⑪床脇天袋(とこわきてんぶくろ)

⑫床脇違い棚(とこわきちがいだな)

⑬雪見障子(ゆきみしょうじ)

⑭書院組子障子(しょいんくみこしょうじ)

⑮欄間(らんま)

 

・・・と、まぁ本床はたくさんのパーツで成り立っていますね!

主役とも言える床柱を中心に床の間と床脇。よく耳にする落とし掛けや長押は、もともとは柱と柱を水平につなぎ、構造を補強するためのものでしたが現在は装飾的な部材となっています。

出書院や違い棚などは南北朝時代以前に生まれているものだそうです。書院はもともと、禅僧が書を読むために出窓のように室内からはり出して付けられた「出文机(だしふづくえ)」という机でした。

縁側の方に明かり障子をつけて、明かりを取りながら行に勤しむ僧の姿が浮かんできます。

南北朝時代以降は、飾り棚として用いられるようになり、「書院」と呼ばれるようになりました。縁側に十分なスペースがない場合は出窓のように外に張り出さない、「平書院」(ひらしょいん)という形式もあるようです。

時代と共に、その家に住む人の事情や環境によって歴史や形式がだんだんと変わってきたのが解ります。

 

北山杉の里総合センター内の小会議室は、立礼式のお茶室になっていて床の間も少し形式が変わっています。

たくさんの可能性を多くの方々に見てもらいたいという意図のもと、床柱は釘など一本も使わずに取り替え可能。

 

上段の場で取替え可能な床柱なんて、 昔の主君は「ジョーダンじゃない!」とお怒りになるかも。

 

けれど、チョウナではつった落とし掛けや美しい木目の天井板、面皮柱など極上の粋を見ることが出来ます。

何もない空間の美。見えない部分に施された細かな技。これが侘び・寂びの世界でしょうか。

千利休は「時と時の間に、お茶くらい飲める時間が必要」と言ったそうです。

私たちは日々の暮らしの中で、心のゆとりの時間を失うと同時に、空間さえ溢れるモノで埋め尽くしてしまったのかも知れません。

考え方を変えてみると、「床の間は無駄なスペース」は「何もない空間があるスペース」。

時代の流れで住宅事情は近代化・極小化と大きく変化してきました。けれど狭い家の中だからこそ、たとえ小さくても床の間のような空間が必要な気がします。

少しだけ歴史を振り返ってみて、その小さな空間が自分の家の特別な部分だと思えれば。

季節の花を生けたり好きな器を置いてみたり、そしていつも清潔に保つ暮らしは、親から子へと受け継がれ日本の床の間の歴史を繋いで行ってくれるのではないでしょうか。

たとえ小さくてもどこかに北山丸太を使って欲しいというのがホンネですけどf(^^);

 

【資料画像】 

 

最後になりますが、こんな面白い画像を見つけました。

民宿か旅の宿のようですけど、見事に床脇には冷蔵庫が押し込められ、床の間はテレビが鎮座ましまして子どもが一生懸命見ています。

広くお部屋を使ってもらうには致し方ない措置、他にも長押にカーテンレールをつけてクローゼットになってる画像もありました。違い棚に靴が並べてあったりして。(笑)

何とも嘆かわしいですが、こういう使い方をしている家は結構ありそうですね。

う~ん、せめて子どもが「何でこんなんなってるの?」って聞いてきたら「ここはね、床の間って言うんや。昔な・・・」っていうのもコミュニケーションの一つと思って、頭の中のちっちゃなスペースに床の間のトコ、いやコトを置いてもらったら嬉しいです♪

(了)

 

 


本町教会 献堂式に参列して

2012年08月17日 | 北山丸太・みやこ杣木 使用事例

7月最後の日曜日、教会の献堂式へ行ってきました。場所は京都市東山区、京阪電車七条駅の近くです。

じりじりと夏の陽射しが照りつける午後。 教会、教会っと…

 

商店街とまではいきませんけど、お漬物屋さんや布団屋さんがある本町通りに面して、モダンな建物と思いきや・・・

ここが目指す教会でした。 

 

日本ナザレン教団 本町教会。

キリスト教にもいろいろありますが、こちらはプロテスタント・福音主義キリスト教会です。ナザレン教会は1908年にアメリカで組織されました。日本でもほぼ同時期に牧師や宣教師が伝導を始めたそうですが、その最初の場所がここ京都と言いますから、すでに100年以上の歴史を紡いでいることになりますね。 

 

ここ本町教会は1922年に設立されて以来、信仰の継承を課題として現在も尾添牧師のもと、多くの信徒の拠り所となっています。

1993年に会堂建て替えの決議がされたものの、諸々の問題で凍結していましたが、2008年、この話題が再浮上し國吉設計事務所の國吉氏によるプレゼンテーション設計が提案されました。

 

國吉さんは「気持ちのよい建築」をコンセプトに、日本の風土や歴史を考えて住まいに取り入れながら、そこに住む人の夢が実現できるような、そんな建築に取り組んでいます。

一般住宅・集合住宅のみならず、福祉医療施設や商業施設、妙心寺の塔頭など、あらゆる建物の建築設計を手がけています。

私たちはプレゼンやセミナーを通じて出会う機会があり、北山杉や北山丸太のことを國吉さんはいつも頭の中に置いて下さっているようです。

教会の正面入り口左側の通路、これは集会室や牧師館に通じていますが、最初に目につくのが明るい檜を数本建てたウォール。

 

そしてもう少し奥へ進むと…あれに見えるは… 

 

艶々と輝く磨丸太ではありませんか!

これは、國吉さんが設計の際に教会という、たくさんの人が集まる建物の中に京都を意識できる、そしてPRにもなるように北山丸太を取り入れたらどうだろう?という提案のもと、私たちが教会に寄贈した北山磨丸太なんです。 

 

教会に北山丸太?それも柱じゃないって、一体どんな風になるのでしょう?

きっと建築委員長や牧師さまもハラハラな思いだったのじゃないでしょうか。 

 

出来上がってみれば…さすが國吉さん!雨よけや下からの湿気対策も万全に、丸太の特徴を最大限に生かしながら樋隠しにもなり、オブジェの要素で京都を感じられる素晴らしいデザインに仕上がりました。 

いつでも教会に訪れる人や子ども達の目に入り、つい触ってみたくなるような佇まいに國吉さんの狙いがあります。「まずは目に触れてもらわなくちゃ。」

 

・・・という訳で、國吉さん、施工工務店のあめりか屋さんと共に京都北山丸太生産協同組合も記念すべき本町教会の献堂式の日に、感謝状をいただくことになったのです。

 

それでは教会の内部をご紹介しましょう。一階は玄関ホールと集会室、厨房。一番奥に牧師館(牧師さまの住居) 。

 

2階へと続く階段はなだらかで吹き抜けになっているのでとても明るいです。 とてもモダンで教会ではなく違う施設のようにも見えます。

 

素材はホワイトアッシュの集成材。固くて、色白で見た目も清潔感があり、白いイメージの教会にぴったりです。 

 

吹き抜けの壁にはこの日に合わせて特別に描かれた絵画が。 

 

淡いパステル調のタッチで、イエス・キリストが天からみんなを見守っています。 

 

上から見ると、こんな感じです。 

 

2階はホールと会堂、そして奥は牧師館。もうすぐ献堂式が始まるのでホールまで人が溢れています。

左側に見えるのは母子室で、むずがる赤ちゃんと一緒でも礼拝することが出来るような配慮がされていて、開閉も引き戸です。

 

 

高齢者、小さなお子様にも優しいバリアフリー。爽やかな青色を施してあるのはお手洗いです。

 

会堂へのストロークもバリアフリーです。車いすの信徒さんもそのままラクラク。 

 

オルガンの音とともに、厳かに献堂式が始まりました。

 

大きなホール窓には真ん中にクロスが組まれていますが、その両側は木の格子です。見た目も柔らかく街になじんでいて、國吉さんのおっしゃる「モダン建築でありながら和の要素を取り入れた」設計になっています。

  

式が進んで行きます。建築委員長による建築経過の報告や特別賛美、日本ナザレン教団理事長の式辞が粛々と述べられ、折々にオルガンと讃美歌を歌う声が会堂にこだまします。

日々の信仰の場であるだけに、教会の新築は人びとにとっても牧師にとっても大変な出来事です。けれど、向かいのお布団屋さんが荷物を預かってくれたり、近くのマンションに仮の礼拝堂としての部屋を借りれたりと、日頃からの近隣とのお付き合いの様子や牧師さまご夫妻のお人柄の良さがうかがえます。

そして隣が料理屋さんですので、「食べ物のことやさかい、埃だけは散らんように」の要望に、工務店もきちんと応えてスムーズに工事が進んだとのこと。

この新築は、施主と設計・施工、近隣住民が三位一体となって心を寄せ合い完成したもので、建築委員長も 感謝の意を述べられていました。

 

写真を撮りながら知らない讃美歌を歌ったり「アーメン」と言ってみたりしますf^^; 

 

そしていよいよ感謝状の贈呈。まずは國吉さんが尾添牧師さまから感謝の言葉を受けます。

最初のプレゼンから3年半以上かかっての献堂式。それぞれの思いもひとしおです。國吉さんに伺ってみました。

「時間がかかってイライラした時はありませんか?」

すると返ってきた答えは「不思議となかったですね。逆に心が洗われるというか、そんな気持ち。」

 

そして生産組合にも感謝状が。この歳で賞状をいただくなんて、ドキドキしますねえ。。(笑)

後で牧師さんと少しお話したのですが、北山丸太は見たことがなくて、その美しさに驚いた。手触りもいいし、たくさんの人に触って見て欲しいと言って下さいました。

牧師さまの話し方はとても静かで一言一言噛みしめるようで、私も心が洗われたような気持ちがしたのでした。

 

最後に記念撮影。中央が牧師さまご夫妻です。

  

皆さんが出られた後、少し会堂を撮影しました。自然光も取り入れながら、やわらかく落ち着いたイメージを感じます。 

 

一段高くなっている講壇。 

 

木の温かみに、天上からの光が降り注ぐようなイメージ。 

 

クロスはLEDで常に灯りがともり、火災の心配もなくエコ上手です。 

 

外から見るホール窓。このクロスと会堂のクロスが重なって、とても幻想的。こういう部分に緻密な計算がされている、國吉さんの設計です。 

 

教会という洋風の建物に和を取り入れるのは難しいのでは?と誰もが思うはずです。

國吉さんのそれは和のままに使うのではなく、いかに町並みに融合し、いかに暮らしになじんでいるかという所にあります。そして京都という地に長く根差した歴史ある本町教会だからこそ、表現できること。

「北山丸太の床柱としての長い役割は終わった」と國吉さんは言い切ります。だからと言って丸太の使い途がなくなるわけじゃない、この木のぬくもりをどのように暮らしに取り入れるかが今後の課題だと。

 

献堂式の後、一階の集会室でパーティが行われ楽しい時間を皆さんと共に過ごさせていただきました。

集会室は全面サッシになっているので外の北山丸太がよく見えます。

それぞれに触ってみたり、國吉さんに質問をしたり。これからもここを通る度に目に入る北山丸太。触れたりもたれてみたり。

年月とともに色艶がよくなり、本町教会のさりげないシンボルのような存在になってくれたらいいなぁと思うのでした。

 

尾添牧師さまご夫妻は、「本町教会は門戸を開いた教会です。宗派が違っても、いつでも遊びに来て下さいね。」とおっしゃいます。

普段、南無阿弥陀仏や南無妙法蓮華経と唱えていても大丈夫。お近くにお越しの際は是非、本町教会をたずねてみて下さい。

優しい笑顔と北山丸太が迎えてくれるはずです。

 

最後によくわからないけれど、いくつか歌った新聖歌の中から何だかこの日にピッタリと思った499番をご紹介いたします。

 

新聖歌499 祈りに祈りて

 

1. 祈りに祈りて 建て上げ終わりし 栄えの神殿を 献ぐる日は来ぬ

  うれし うれし 祈りは聴かれぬ 栄えの神殿を 献ぐる日は来ぬ

  うれし うれし 祈りは聴かれぬ

 

2.御神よ この殿 祝いきよめて 御言葉うち出す 砦としたまえ

   うれし うれし 祈りは聴かれぬ 栄えの神殿を 献ぐる日は来ぬ

   うれし うれし 祈りは聴かれぬ

 

3.花婿 来ます日 迎えに出でうる かしこきおとめの 仮屋としたまえ

   うれし うれし 祈りは聴かれぬ 栄えの神殿を 献ぐる日は来ぬ

   うれし うれし 祈りは聴かれぬ

 

  ア~~メ~ン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Dreams come true-宏庵

2012年07月10日 | 北山丸太・みやこ杣木 使用事例

京都府が発表した昨年の京都市を除く京都府内観光客数は、震災などの影響もあり前年比86万人の減少となりました。全国統一の共通基準では市の特性が反映されないとして京都市の観光客数は公表されませんでしたが、市内の年間宿泊者数は海外からも含め、4月は大幅に落ち込んだようです。

そんな中、修学旅行生は西日本の需要が伸びたことで前年とほぼ同水準の107万人が訪れました。この中にはきっと北山杉を見に来てくれた学生さんもいることでしょう。街なか以外にもたくさん見どころのある京都市ですが、今月はやっぱりコレ!

日本三大祭りの一つ、「祇園祭」です。梅雨のさなかの真夏日。京都も33℃を超える中、祇園祭りの鉾建てが始まりました。今日から16日の山鉾巡行までコンチキチン♪コンチキチン♪とはんなり、賑やかな祇園囃子が四条界隈を埋め尽くします。

この方が宵宮に浴衣姿で行かれるかどうか・・・はまだ聞いていませんが、京都に魅せられて、いや北山杉に魅せられてこ~んなリフォームを成し遂げました。

「何ということでしょう!」(笑)なお家をご紹介しましょう。

 

右京区梅ケ畑。近くには平岡八幡宮や占いで有名な某氏の邸宅があり、自然豊かなところにその家はありました。

エクステリアは普通に洋風な感じですが、む!表札にチェキ!これは後で聞くとして…

「ごめんくださ~い!」 

 

ドアを開けると、木の香りと共に目に映ったものは、北山丸太!

3階建てのこのお宅。まさか玄関だけではあるまいと胸がドキドキしませんか?

それではお施主さんの夢が現実となった、このリフォームの全貌をご覧いただきましょう(かなりパクリ気味f^^;) 

 

上がり框の右手には5本のタルキ。それぞれが様々な表情を持ち、窓からの光を受けて優しく、入ってくる人を出迎えてくれます。 

今年の2月、生産組合の駐車場に止まった1台の青いゴルフ。ナンバーは鹿児島。それがこの家のあるじ、Mさんと私たちとの最初の出会いでした。

 

以前にもお仕事でこの辺りや京北に来られたことのあるMさんは、北山丸太が大好きでリタイア後は京都に住むと決めていました。

そして念願の住まいをこの地に構えたあとは早速リフォームです。丸太を見に来られたMさんの目はキラキラと輝いていました。

前にイマトコでご紹介しました里仁舎のオフィスも訪ね、北山丸太のインテリアを参考にされます。

Mさん邸のリフォームは壁や床は触らず、生活空間にふんだんに北山丸太を取り入れるというものです。

階段では磨丸太が二本。結構太いですけれど圧迫感はありません。

 

タルキの手すり。緩やかなカーブの階段に沿って取り付けられています。

 

自然の「えくぼ」が表情ゆたか。見た目に軽やかで生活の手助けとなって。そして年月を追うごとに色艶を増していくことでしょう。

 

玄関を見下ろして。 どこに視線を向けても、そこに丸太の姿がある。それが不自然じゃないのが配置のよさと北山丸太の持つ優しさなのでしょうか。

では2階へ・・・

 

2階はL字型の広くて明るいリビングダイニング。真ん中に2本の天然出絞と磨丸太、窓と窓の間の空間にアクセントを添えています。

左の壁には4本。ソファに腰掛けながら丸太の息遣いを感じます。

Mさんの北山丸太への思いは特別です。恐らくお客さま、大工さん、インテリア屋さん、出前屋さん、それに林業家さん・・・初めてこのお家を見たら、「何やここは~~!」と思われるでしょう。

今回のリフォームに使われた北山丸太は総数28本、タルキは9本。

 

種類をランダムに並べたり、あえて背割りを見せる、それがMさん流。

「色んな見せ方があっていいんじゃない、と思うんだ。」「うんうん。」

 

そしてテレビと反対側の方、キッチンへと続く壁を飾るズラ~リ10本の丸太たち。大好きだとおっしゃる東山魁夷の額と生け花は、まるでお店のインテリアのよう。あら、テーブルの上にはバナナ、で~んとマッサージチェア。

 

それでいいんです。自分だけの美術館、それがMさん流。

 

そして3階は和室・小部屋・書斎の3部屋の間取り。こちらは和室です。床の間ではなく北山丸太の間。こちらも圧迫感はありません。

Mさんはここでおやすみになりますが、丸太に囲まれてどんな夢をご覧になるのでしょう?もしかしたら丸太たちの囁きや香り、呼吸する音が良い眠りを誘っているかも知れませんね。

 

こちらは人造絞り2、磨丸太1といった配列です。

 

畳を傷つけないよう工夫された施工。勿論、安全面でもさまざまな配慮が要所要所に見られます。 

 

こんな可愛らしい椅子まで。花器や壷を置いても良し、もちろん腰掛けても良し。

この後、北山丸太で作った照明(行燈)も納めさせて頂きました。まさに北山杉づくしの暮らしです。

 

小部屋の住人(?)はロシアンブルーのナターシャちゃん。このコも、Mさんがひと目見てビビッと来たそうです。

本当に出逢いは不思議。このお部屋には丸太はありませんでした。だってナターシャちゃんが爪研ぎしちゃうかもだし、丸太を大好きなMさんにヤキモチを焼いちゃうかも知れませんものね。

 

書斎は一部だけですけど。。この写真の左側にはデスクがあってMさんは只今、神社検定のお勉強中です。

クローゼットの前にはお気に入りの全て北山杉で作ったツリーハンガー。その後ろにも丸太が見えます。

 

北山丸太の良さを生かした手作りの一品。実用性がありながら、インテリアとしての存在感も際立ちます。

 

帰宅してバッグを置き、コートやジャケットを掛ける、そんな普段のMさんの暮らしに既に馴染んでいるふうでした。

「これはいい、ほんとにいいんだ。」

ツリーハンガー、愛されてます❤ 

 

 

 お邪魔する際にチェックを入れた(笑)、表札もこだわりの特注品です。

お名前のひと文字を入れた「宏庵」。これにはどんな思いが込められているのでしょうか?

「庵」の意味を広辞苑で引いてみました。

1.小さくて粗末な住居。

2.僧尼や隠遁者の住む家。

3.文人・茶人の雅号や料理店の屋号などにも用いる。

 

第二の人生は、北山杉に囲まれて好きな絵を眺め、好きな音楽を聴き、好きな本を読み、愛猫と過ごし、また勉強に励む、そんな生き方と空間。それは世界でたった一つの丸太をデザインした家。それがMさんの雅号・「宏庵」であり、長い間育んできた夢の集大成なのだと思います。

 

「何をやっている人だろう・・・?」前を通りかかったらそう思う人もいる筈。。

「宏庵」のピンポン♪を押してみて下さい。きっと「はいはい、どうぞどうぞ。」とダンディなおじ様が笑顔で迎えてくれますよ。

但し、今週来週は祇園祭ですので、はも寿司を食べに夜の祇園へ出掛けてられなければですが・・・(笑)

 


無垢材の魅力

2012年06月11日 | 北山丸太・みやこ杣木 使用事例

西日本に続き関東甲信・北陸地方も梅雨入りしました。

蒸し暑かったり急に冷えたり・・・相変わらず不安定な気候が続いていますが、ここ北山杉の里は美林の作業も進み、どんな天候でもその美しい姿が変わる事はありません。

 

中川は夜更けの部屋に蛍が舞い込み光の尾をひいたり、清滝川では乱舞が見られることもあるそうな。

今年はどんなファンタジックな夏を迎えるでしょう?今からワクワクしますね!

 

蛙たちが卵を産みつけています。もうすぐ可愛らしいおたまじゃくしの姿も見られることでしょう。

 

さて少し前のことになりますが、5月31日、京都市上京区の西陣織会館の横につけられた1台のワゴン。

そしてハッチバックを開けて職人さん風の男性二人して重そうに運び出しています。どうやら木のようです。

 

西陣織会館はその名の通り、伝統工芸品・西陣織をはじめとする京都の衣文化を見て触って学べる、貴重な資料館です。

きものショーや主な和装史料の展示のほか、直接伝統に触れることの出来るさまざまな体験教室も開催しており、一般の旅行者や修学旅行生、府・市内の学校の課外学習にも人気のスポットです。

ここが2階。手織り機や色とりどりの糸が見えます。お土産用の小物などもここで買えます。

 

西陣織会館は十数年前、建物に北山丸太を使って下さったという馴れ初め(笑)があり、今回2階のスペースに置くテーブルと椅子のご依頼がありました。

北山杉の里総合センター・小会議室のテープル(タモ)と生産組合事務所にある欅の大きな輪切りのようなテーブルをご覧になり、無垢の一枚板をご所望。

さて、どんな木でどんな形が良いでしょう?

 

そこで西陣織会館に設置されたのは欅の無垢一枚板。数パターンの中からこれを選んで下さいました。

長さ2400mm、天然の外形を生かしていますので幅900~1200mm、厚み60mm。60mmでもかなり分厚いですがプレーナー加工をする前は70~75mmはあります。

 

無垢材とは、一本の原木から角材や板を直接必要な寸法に切り出したもののことで、木本来の質感、風合いという面で魅力があり、化学物質を含まない自然素材としても注目されています。

一番の特徴としては調湿作用があり、湿気の多い日は水分を吸収し、乾燥している日は水分を放出して湿度を一定に保とうとするため、「縮む」「膨らむ」という性質を持ちます。またコンクリートのおよそ2倍ともいわれる優れた断熱性があり、周囲の温度に影響されにくいため夏は涼しく、冬は暖かい環境を生み出す素晴らしい素材です。

このように優れた性質を持つ無垢材ですが、反りや割れを最小限にとどめるため、原木をひいてからの管理が重要になります。

 

重さおよそ80㎏。この一枚板を脚に乗せて留めます。脚も欅材です。

 

脚にヌキを通し、クサビで固定します。色の濃いのがクサビです。これはブビンガというマメ科の材木で非常に硬く太い木になるそうです。世界中でも硬質材でブビンガ以上の大径木はないと言われています。

  

少し見えにくいかも知れませんが、無垢板の手前の方に色の濃い小さな部分があります。これは「千切り(ちぎり)」と言って割れ止めとして行われる方法ですが、杉や檜の死に節(枯れた枝の穴)を埋める「埋め木」の処理と似ています。

「千切り」も硬いブビンガで、長方形に見えますが実は蝶々のような形で、両側の幅が広くなってしっかりと固定されています。

 

そして6月5日、丸太いす8個を納品しました。

椅子は京都市内産材、「みやこ杣木」の桁丸太から直径290~300cm、高さ430cmで取ります。430~450が椅子としての適度な高さだそうです。

背割りはもちろん、今回は両側に持つ部分(手掛掘込)が付けてあります。

 

無垢のテーブルと丸太のイスは、とても良く似合っていますね。

幅広の一枚板なので、数人が一度に作業してもへっちゃらです。作業台としてでなく、ミニ会議や打ち合わせとして使ってもイイ感じ。

長時間座ってお尻がちょっぴり痛くなったら西陣織のハギレでお座布団を作ってみてはいかがでしょうか?

欅の無垢一枚板のテーブルと丸太のイスを置いていただいたことで、訪れる方々がより京都を感じて、そして温もりを感じながら作業出来たらいいなぁと思います。

そして身近なところで暮らしていても、まだまだ私たちが知らない織物の文化や伝統があるはず。西陣織会館へ行ってみればきっと、そんな京都市民が知らない京都の魅力を再発見できるのではないでしょうか。

箪笥に眠っている着物の手入れをしたり、祇園祭りに浴衣を着て出かけてみようかな…そんな事を思う梅雨の午後でした。

 

西陣織会館のホームページはこちら。http://www.nishijin.or.jp/kaikan/index.html

 

 

 

 

 

 

 

 

 


北山杉に出会えるユースホステル

2012年05月16日 | 北山丸太・みやこ杣木 使用事例

新緑が眩しい季節、GWでなくても少しのお休みがとれたら友人と、家族と、そして一人でもふらっと旅に出てみたいな。そんな気持ちになりませんか?

旅の計画を練る時・・・まずは行き先と、その拠点となる宿えらびですね。限られた時間の中で、ここも行きたい、あそこも行ってみたい、便利なところに泊まりたい、などなど。

旅行に人気のある京都。街中を離れたところにもお寺や神社など有名な観光スポットがあり、それらを囲む自然の中で散策やサイクリングをするのも楽しみ方の一つです。

今日は京都市の北西部にある素敵な宿をご紹介したいと思います。 

 

嵐山から大覚寺、嵯峨野、広沢の池~仁和寺や金閣寺へと続く道路。高雄方面に向かう山越えの交差点を少し過ぎて左に入ると緑ゆたかな閑静な住宅街が見えます。すぐに広~い入り口がようこそと迎えてくれました。

 

ここは宇多野(うたの)。嵯峨野周辺は奈良時代の後半に開発されて、平安時代に入ると「宇多野」のもととなる「宇太村」という地名が使われていたそうです。

そして10世紀の初めに宇多天皇が仁和寺に入るとこのあたりは御室御所と呼ばれるようになり、双ケ丘を含む宇多野の地は景色のよいところとして貴族の別荘や邸宅が建てられました。

また一説では、京都の右京区や西京区は昔は桂川や西高瀬川の氾濫で度々人々が泣かされたところでしたが太秦や宇多野はその近くではあるものの比較的高いところに位置し、そういう意味でも「よいところ」、またはよいところであって欲しいという願いのこもった土地である、という資料もありました。

う~ん、、「宇多野」の名前は天皇にも由来しているし、景色のよい、水害もない、素敵なよいところっていう意味がこめられているんですね。宇れしいことが多くさん、とか^^

で、ここはその名も「宇多野ユースホステル」。皆さん、ユースホステルってご存知ですか?

 

ユースホステルはドイツで始まった「旅の宿」のネットワーク。安全で楽しく、かつ経済的な宿泊場所を提供しようという主旨で生まれた世界的なシステムです。現在90ケ国に4000箇所以上、全国およそ320箇所のユースホステルがあります。

京都府内には4つのユースホステルがあり、宇多野ユースホステルはその一つ。

緑に囲まれた広大な敷地、そして2008年に7月に全館リニューアルオープンして建物もピッカピカ!

 

エントランスに向かいます。「遊す=ユース」なんてオシャレな暖簾、そして白木が美しく明るい、和風な佇まい・・・白木? 

 

天井チェック!むむ、この木目は! 

 

エントランスを入ると、見慣れた文字とタルキがジャジャ~ン!

 

そう、こちら宇多野ユースホステルでは地産地消を促進し、人と環境に優しい京都市域産材「みやこそまぎ」をふんだんに使っているのです。

ですから、ホステラーさん(ユースホステルの利用者のこと)も入って来られて「木のいい香り~」と言われるそうです。

 

広々としたロビー。明るさと、木の温もりが感じられます。

ユースホステルの良さはアットホームな雰囲気の中で、旅をする人々どうしが出会い交流を楽しめるところ。

ここでは毎日、「Everyday One」として、ミニコンサートや生八橋を作る体験などのイベントが宿泊者を対象に行われます。

楽しそう!

 

京都らしさが感じられるディスプレイ。こちらでは利用者の30%が海外からの方だそう。さまざまな文化が出会うインターナショナルな「旅のわが家」のような雰囲気を目指しているそうです。

 

2階から望む景色。緑の芝生と建物のコントラストがとても綺麗です。さぁ、いよいよお部屋を見せていただきます。

 

それぞれのお部屋には「高雄」や「鳴滝」など、この地域の地名が付けられています。

 

ツインルーム。ユースホステルは基本的に男女別のドミトリー(相部屋)です。えっ?知らない人と同じ部屋で寝るの?と思われるかも知れませんが、それが良いところ。新しい交流が生まれます。隣の人のイビキで寝られなかった…なんてコトはご愛嬌f^^;

 

そしてベッドサイドに使われているのが・・・絞り丸太です。初めて見た方は「ナニコレ~ぼこぼこしてるぅ」とか、わざと模様をつけてあるみたいに思われるのでは?

これこそが北山杉、みやこそまぎなのです。ほら、寝相が悪くてベッドから足がはみだしてもツルツルだから痛くないでしょう?

 

こちらは懐かしい雰囲気の2段ベッドが向かい合わせに設えてある4人部屋。

先ほどドミトリー(相部屋)と言いましたが、一部屋を貸し切ることも出来ます。例えば親しい友人グループや家族などで。この場合も、部屋を利用する人数分の料金が必要です。

 

見て下さい、この素晴らしい北山杉の絞りを!(手前味噌?)ハシゴの上部には手すりが付けてあり、人の手にも優しく温かい感触を味わっていただけます。 

 

部屋全体を見ても、ベッドや収納に、このようにふんだんに北山杉をはじめとした京都市内産木材を使用してあり、清潔感あふれ、開放的でありながら就寝時のプライバシーや安全も保たれています。2段ベッドのお部屋は家族にも人気のようです。

 

1階のロビーに備えてあるパンフレットやリーフレット。

近くには龍安寺、仁和寺、そして世界文化遺産の金閣寺。嵯峨野、嵐山などたくさんの観光スポットがあります。歩いて、自転車で、バスや電車に乗って・・・それぞれが好きな方法で京都を楽しむ。それが宇多野ユースホステル流です。

 

自転車のレンタルは一日乗っても500円と格安♪

ホームページでは、おススメのスポットや効率の良い観光の仕方をコース別にして紹介しています。

 

インターネットのレンタルもあります。ご自分で別のルートを見つけたり、名所旧跡の由来を調べたり、穴場を探ったり・・・現代人には欠かせないツールですね。 

その他コインランドリー、集会室やテニスコートなどの施設も備えています。(有料)

 

食堂にはもうたくさんの配膳の準備がされています。この日は修学旅行生の利用があるとのことでスタッフさん達も大変、忙しくしておられました。

お夕飯のメニューは何かしら?きっとはんなり、京都を感じてもらえるような心遣いがあるような気がします。

 

お食事のご案内。ユースホステルの宿泊料金は一般のホテルなどと比べると断然お安いですが、これは「素泊まり料金」で食事は事前予約の別料金となります。

何と、材料の持ち込みも可能で自炊室もあります!でも、せっかくの京都旅行なんですからご自分のスケジュールに合わせてですけど、こちらでお食事される方が多いのではないでしょうか?メニューも豊富でとっても美味しそうなんです^^

旅なれたホステラーさんには言わずもがなですが、必要なアメニティは持参して、その土地土地の美味しい食事を味わい、快適な睡眠を得る。経済的で、なおかつ世界のホステラーと交流して旅の楽しさを分かち合える。

それがユースホステルを利用する醍醐味なんでしょうね。

 

1階のロビーの奥はまるで旅館のよう! 

 

こちらは和室です。5名以上で利用できます。木と畳の香りに包まれて、う~んJapanese!

修学旅行と言うと、楽しくて眠れない夜。昔よくやった枕投げなんかは・・・?と聞いてみると、最近の学生さんはマナーが良くてあまりやらないそうです。

 

エントランスから見た風景。「行ってきま~す!」そんな風に大きな声で挨拶して出かけたくなる、アットホームなスタッフさん達。そして旅の終わりには名残惜しさを感じる宿。

きっと、「また泊まりたい。」誰もがそう思うはずです。そして皆さんの記憶に、木の温かみや丸太の優しさが残っていてくれたら・・・そう願います。

 

宇多野ユースホステルは、国際ユースホステル連盟Hostelling International (HI) より、2009年に引き続き「HI BEST HOSTEL AWARD Most Comfortable Hostel 2011」に選ばれました。

これは「もっとも居心地のよいユースホステル」という賞。

世界中に数あるユースホステルの中で、ホステラーが最も求めるところに認められたのはマネージャーを始めとして運営に携わるスタッフ達の、日々の姿勢とたゆまぬ努力があるからに違いありません。

今回ご紹介したのはほんの一部分です。(北山杉を使ったベッドがメインのつもりf^^;)

~旅と人と自然と、そして京都を愛する人に~ home away from home

あなたも一度、宇多野ユースホステルの"居心地のよさ"を体感してみませんか?

 

 

京都市宇多野ユースホステル

〒616-8191 京都市右京区太秦中山町29

TEL:075-462-2288

 http://yh-kyoto.or.jp/utano/index_j.html