西日本に続き関東甲信・北陸地方も梅雨入りしました。
蒸し暑かったり急に冷えたり・・・相変わらず不安定な気候が続いていますが、ここ北山杉の里は美林の作業も進み、どんな天候でもその美しい姿が変わる事はありません。
中川は夜更けの部屋に蛍が舞い込み光の尾をひいたり、清滝川では乱舞が見られることもあるそうな。
今年はどんなファンタジックな夏を迎えるでしょう?今からワクワクしますね!
蛙たちが卵を産みつけています。もうすぐ可愛らしいおたまじゃくしの姿も見られることでしょう。
さて少し前のことになりますが、5月31日、京都市上京区の西陣織会館の横につけられた1台のワゴン。
そしてハッチバックを開けて職人さん風の男性二人して重そうに運び出しています。どうやら木のようです。
西陣織会館はその名の通り、伝統工芸品・西陣織をはじめとする京都の衣文化を見て触って学べる、貴重な資料館です。
きものショーや主な和装史料の展示のほか、直接伝統に触れることの出来るさまざまな体験教室も開催しており、一般の旅行者や修学旅行生、府・市内の学校の課外学習にも人気のスポットです。
ここが2階。手織り機や色とりどりの糸が見えます。お土産用の小物などもここで買えます。
西陣織会館は十数年前、建物に北山丸太を使って下さったという馴れ初め(笑)があり、今回2階のスペースに置くテーブルと椅子のご依頼がありました。
北山杉の里総合センター・小会議室のテープル(タモ)と生産組合事務所にある欅の大きな輪切りのようなテーブルをご覧になり、無垢の一枚板をご所望。
さて、どんな木でどんな形が良いでしょう?
そこで西陣織会館に設置されたのは欅の無垢一枚板。数パターンの中からこれを選んで下さいました。
長さ2400mm、天然の外形を生かしていますので幅900~1200mm、厚み60mm。60mmでもかなり分厚いですがプレーナー加工をする前は70~75mmはあります。
無垢材とは、一本の原木から角材や板を直接必要な寸法に切り出したもののことで、木本来の質感、風合いという面で魅力があり、化学物質を含まない自然素材としても注目されています。
一番の特徴としては調湿作用があり、湿気の多い日は水分を吸収し、乾燥している日は水分を放出して湿度を一定に保とうとするため、「縮む」「膨らむ」という性質を持ちます。またコンクリートのおよそ2倍ともいわれる優れた断熱性があり、周囲の温度に影響されにくいため夏は涼しく、冬は暖かい環境を生み出す素晴らしい素材です。
このように優れた性質を持つ無垢材ですが、反りや割れを最小限にとどめるため、原木をひいてからの管理が重要になります。
重さおよそ80㎏。この一枚板を脚に乗せて留めます。脚も欅材です。
脚にヌキを通し、クサビで固定します。色の濃いのがクサビです。これはブビンガというマメ科の材木で非常に硬く太い木になるそうです。世界中でも硬質材でブビンガ以上の大径木はないと言われています。
少し見えにくいかも知れませんが、無垢板の手前の方に色の濃い小さな部分があります。これは「千切り(ちぎり)」と言って割れ止めとして行われる方法ですが、杉や檜の死に節(枯れた枝の穴)を埋める「埋め木」の処理と似ています。
「千切り」も硬いブビンガで、長方形に見えますが実は蝶々のような形で、両側の幅が広くなってしっかりと固定されています。
そして6月5日、丸太いす8個を納品しました。
椅子は京都市内産材、「みやこ杣木」の桁丸太から直径290~300cm、高さ430cmで取ります。430~450が椅子としての適度な高さだそうです。
背割りはもちろん、今回は両側に持つ部分(手掛掘込)が付けてあります。
無垢のテーブルと丸太のイスは、とても良く似合っていますね。
幅広の一枚板なので、数人が一度に作業してもへっちゃらです。作業台としてでなく、ミニ会議や打ち合わせとして使ってもイイ感じ。
長時間座ってお尻がちょっぴり痛くなったら西陣織のハギレでお座布団を作ってみてはいかがでしょうか?
欅の無垢一枚板のテーブルと丸太のイスを置いていただいたことで、訪れる方々がより京都を感じて、そして温もりを感じながら作業出来たらいいなぁと思います。
そして身近なところで暮らしていても、まだまだ私たちが知らない織物の文化や伝統があるはず。西陣織会館へ行ってみればきっと、そんな京都市民が知らない京都の魅力を再発見できるのではないでしょうか。
箪笥に眠っている着物の手入れをしたり、祇園祭りに浴衣を着て出かけてみようかな…そんな事を思う梅雨の午後でした。
西陣織会館のホームページはこちら。http://www.nishijin.or.jp/kaikan/index.html
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