潜入捜査官ハサウェイ『聖人画』の続きです
読んでいない方はカテゴリー「潜入捜査官ハサウェイ『聖人画』」で読めます→こちら
「オックスフォードミステリー ルイス警部」はAXNミステリーで放送しているドラマです→こちら
ホームページにキャストの説明がないのでざっと説明しておきます。
ジェームズ・ハサウェイ:このファンフィクの主人公。オックスフォード署ではルイス警部とバディを組んでいる、30代後半の長身でハンサムな刑事。かつて神父を目指して勉強していた。
ロバート・ルイス警部:ハサウェイのバディで上司。ベテラン刑事で熱血漢。
ホブソン監察医:ルイスの恋人の女性医師。
イノセント主任警視:ルイスとハサウェイの女性上司。
以上を頭に入れながらお読みください。
ロビンはハサウェイを見て満足していた。
「本物の聖セバスティアヌスみたいだ!神父様をモデルにしてよかった。」
ハサウェイはルイスを信頼している。絶対に助けに来てくれると信じている。しかしこのままだと…もしかすると自分はルイスの到着前に殺されるかもしれない。そろそろロビンは次の行動に移りそうだ。
「これ見てください神父様。」
ロビンが得意げに見せたのはクロスボウだった。
やっぱり!ロビンはハサウェイに矢を射るつもりなのだ。ルイス速く!速く来い!
ロビンは矢をセットするのに時間がかかった。手馴れている感じはしない。だとすると命中率は低いだろう。しかしこの距離なら外す方が難しいくらいだ。下手が災いして致命傷になりかねない。どう考えても悲観的なことしか思い浮かばない。
矢をセットし終わったロビンは一旦クロスボウを置くとハサウェイのところに来た。
「どこがいいですか?ここら辺?それともこっち?」
追い詰められた獲物を弄ぶ獣のように楽しんでいる。それでもハサウェイにとって時間稼ぎができるのはいいことだった。ほかにもっと時間稼ぎができるようなことはないかと必死に考える。
「聖セバスティアヌスは体中に矢が刺さってるんですよね。だから僕も真似ようと思って。」
ロビンが傍らにある矢の束を見せた。
「たくさんあるから心配しないで。一発で殺したりはしませんよ。」
気味が悪い。もうロビンに正気は残っていないのかもしれない。せめて口がきければ…ハサウェイは顔を左右に振り詰め物をされた口から呻くような声を出した。ロビンには目の前の獲物が無抵抗の囚われ人で、自分は最後の施しをする聖人になったような気分だった。
「神父様、何か言いたいの?僕と話したいの?」
ハサウェイの口の詰め物を外した。
「ロビン、聞かせてくれ。君が描いた絵のことを。どの聖人を描いたんだ?」
「神父様なのにわからないの?」
「いや、君は絵がうまいからわかるよ。サン・ドニとそれからこま切れのヤコボスだろう?」
ハサウェイはロビンの機嫌を損ねたくない。
「ビンゴ!さすが神父様は聖人のことに詳しいですね。僕も神父様を描くのが楽しみですよ。」
「それで絵を描いた後はどうするの?」
「ふふふ…知りたいですか?」
「聞かせてくれ。これから自分がどうなるか知りたい。」
言ったものの聞きたくはなかった。
「じゃあ特別に教えてあげますね。」
ロビンは嬉しそうにハサウェイを見た。
「今までのモデルはすぐ死んじゃったからその後で聖人に似るように工夫したんだけど。神父様は準備万端だから大丈夫。聖セバスティアヌスと同じように体中に矢をいっぱい突き刺して、それから絵を描いて、それから同じような格好で埋めてあげます。」
「埋めるって、殺してから?」
「そうですよ。僕は慈悲深いから生き埋めなんかにはしませんよ。ふふふ」
「そうか…そうなんだ。それはよかった。」
もうこれ以上聞くことが無い。頭を働かせろ!考えるんだ!何か話すんだ、ハサウェイ!
「三つ目の、三つ目の絵は誰なの?」
ロビンの顔が曇った。
「聖ヒエロニムスですよ。聖ヒエロニムスの火を知らないんですか?」
「いやいや、知ってる、知ってるよもちろん。知ってるけどあれ…聖ヒエロニムスの火って病気だから。これだけ病気なんだなと思って…死因じゃないんだなって…」
ハサウェイは必死に話を繋げた。
「・・・そんなのどうだっていいじゃないですか!」
都合の悪いことを聞かれて機嫌が悪くなったロビンは再びハサウェイの口に詰め物を戻した。
もうこれ以上は時間を稼ぐのは無理だった。ロビンはハサウェイから離れると正面に立ってクロスボウを構えた。
ニコニコと笑った次の瞬間、凍りついたような冷酷な表情に変わりクロスボウで狙いを定めた。
ルイスはよく当たる自分の勘が今回ばかりは当たらないでほしかった。ハサウェイが連続殺人犯に囚われているなんて当たってほしくない!イノセントから聞いた住所は教会からは町の反対側で苛々しながら車を飛ばした。
中心部を突っ切り町の反対側の寂しい地域に入ると、耕作地ばかりで家と家は離れて建っている。カーナビが示すハサウェイの携帯のある場所はさらに外れだ。何かあっても近隣の住民から通報があるような場所ではなかった。ルイスはもうハサウェイの身に何か起きているとしか考えられなかった。速く速く!細い道を出せる限りのスピードで飛ばした。
ようやくポツンと建っている農家とその納屋が見えてきた。近くには車が一台止まっている。誰の車だろう。ハサウェイのものだろうか。ルイスは慎重になった。大きな音をたてたら犯人が逃げるかもしれないし、ハサウェイが殺されるかもしれない。家と納屋からは見えないような場所を選んで車を止めた。応援を待つ余裕はなかった。
ルイスはホルスターから拳銃を抜き、用心して家に近づいた。窓にはカーテンが掛かっておらず中が良く見えた。外から見る限り無人だ。長いこと人が住んでいる感じはしなかった。物音も聞こえてこない。ベテラン刑事の勘がここにはハサウェイはいないと告げている。
少し離れたところにある納屋を調べることにした。納屋といってもガラス窓もあるしドアもきちんとしていて、少しぐらいなら生活ができるようなしっかりした造りだ。ハサウェイはここで監禁されているのだろうか。ルイスが中の様子を窺っていると物音がした。
ここで間違いない!
ルイスの鼓動が大きくなった。慎重に中の様子を探る。窓はあるが上の方に付いていて中は見えない。ドアから入るしかなさそうだ。音がしないようにそっとドアを開け銃を構えて中に入った。しかし入ってすぐの小さな部屋には誰もいなかった。
足音を忍ばせて奥に進む。しきりのドアの向こうにハサウェイがいるはずだった。ドアのところで止まり向こう側の様子を窺う。中からは話し声が聞こえる。ルイスは確信した。
息を止め、右手で銃を構え左手でドアを開けると、ルイスは勢いよく中に突入した。
**コメントありがとうございます
進さん
楽しみだよね~^^
地上波だから誰でも見られるしねwww
老眼になると読書つらいもんね^^;
ランキングに参加しています
←これをクリック
別タブで開くバージョン
←これをクリック
タブが開かないバージョン
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます