潜入捜査官ハサウェイ『聖人画』 ⑥

潜入捜査官ハサウェイ『聖人画』は「オックスフォードミステリー　ルイス警部」のファンフィクです
潜入捜査官ハサウェイ『聖人画』の続きです
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「オックスフォードミステリー　ルイス警部」はAXNミステリーで放送しているドラマです→こちら
ホームページにキャストの説明がないのでざっと説明しておきます。
ジェームズ・ハサウェイ：このファンフィクの主人公。オックスフォード署ではルイス警部とバディを組んでいる、30代後半の長身でハンサムな刑事。かつて神父を目指して勉強していた。
ロバート・ルイス警部：ハサウェイのバディで上司。定年を間近に控えたベテラン刑事で熱血漢。
以上を頭に入れながらお読みください。





　聖セバスティアヌスの殉教を話題にした日以来ロビンは来なくなってしまった。ハサウェイはロビンにすまないことをしてしまったと思っている。彼は冗談半分だったが、ロビンには冗談とは受け取れなかったのだろう。しかしなぜそこまで不機嫌になってしまったのだろう。なぜあれほど怒ったのだろう。ロビンは小さな子どものように気分にむらがある、芸術家気質だと言えばそれまでだが。気にするようなことでもないのだからまた自分を描きに来てほしい。そんな感じでハサウェイはロビンのことが気になっている。
　ロビンのことを気になるのにはもう一つ理由があった。彼の以前住んでいた地名に聞き覚えがあるからだ。ハサウェイ自身は住んだことも行ったこともない地名を何で憶えているのか思い出せなくて歯がゆい。奥歯に物が挟まっているけれど手が届かないまさにあの感じだ。地名が頭の中でゆらゆらと漂っている。どこかに流れ着きそうになるけれど流れ着かない。

　いつものように朝食を摂りながら新聞に目を通していると【進展なし】という見出しに目が行った。オックスフォードの殺人事件のことらしい。手に取って詳しく読む。久しぶりに殺人事件のことを考えると頭が活性化するようで楽しい。この前読んだときよりは事件のことが詳しく書かれている。進展がないので少し情報を出して市民からの情報提供を求めているのだろう。
　新しい情報は死体の状態だった。頭部が切断されているらしい。切り離された頭部は一緒に発見された以上のことは書かれていない。どんな状態で発見されたかはわからない。容疑者が絞り込まれたときの決め手になるように情報を出していないのだろう。
　ハサウェイは頭部切断という言葉に不思議な既視感を覚えた。なんだろう…この既視感は。いつどこで頭部切断死体の話題をしたのだろう。考えるが思い出せない。

　ハサウェイが聖堂に続く石畳を歩いていると何か踏んづけた。ガムのような物を踏んだらしく靴底についてしまった。嫌な気分になりながらはがすと、それはガムではなく練ゴムだった。練ゴムはロビンがハサウェイをモデルにデッサンを描いた帰りに落していったものだろう。あれ以来ロビンは来なくなってしまった。聖セバスティアヌスの話をした時以来。それで思い出した。頭部切断死体の既視感とはロビンと話した斬首刑で殉教した聖人の話のことなのだと。殉教者が好きだと言っていたロビン。殉教場面を見たそうだった。描くのも好きなのだろうか。好きなのだろう、自分をモデルに聖セバスティアヌスの殉教を描こうとしていたのだから。いままで他にはどんな聖人を描いてきたのだろうか。殉教場面ばかりを描いてきたのだろうか。
　そんなことを考えていると唐突にロビンの住んでいたいくつかの地名が頭に浮かんだ。事件がらみのような気がする。いや事件があった地名のはずだ。どんな事件だ？何が起きたのだ？
　一日中モヤモヤしながら仕事をしていたが寝ようとして思い出した。以前に住んでいたというD市、あそこで殺人事件が起きていた気がする。どんな事件だったか…いつのことだったか…解決したのだろうか。記憶をたどるが管轄外の事件のことは詳細までは思い出せない。寝るつもりでベッドに入ったが眼は冴えてしまうし思い出せないのが気持ち悪くて仕方がない。とうとうネットで検索し始めてしまった。
　やはり殺人事件が起きていた。未だ解決していない、8年前の事件だ。ハサウェイの頭の中に黒い霧が広がっていく。彼が現在住んでいるこの町の隣のオックスフォードで殺人事件が起きた。そして以前住んでいた市で未解決の殺人事件が起きている。彼が住んでいた時期と重なるのかどうかはわからない。単なる偶然かもしれない。オックスフォードで起きた殺人事件死体の状況をもっと詳しく知らなければ何とも言えないだろう。まずは発見当時の死体の状況を知る必要がある。
　ルイスに聞こうか？ハサウェイは時計を見るが今は夜中の1時を回っている。明日電話してみよう。胸騒ぎがする。










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