ことしン冬は、とても永ァくさぶい冬じゃったけン、あたし珍しく二度も風邪ばひいちょって、ホンに冬がなければ・・・と、思いよったン。
その、待ち遠しかった春がやって来る。
でも、ことしンだけ、あたしにはその春のうれしさも、すこしばかり半分じゃった。
なぜなら姉ちゃん学校さ卒業したら、東京の方の工場さ就職が決まっちょって、この家、この村から出て行っちまうンだもの。
まーだ家には兄ちゃん二人もおるし、こないだベゴッコ(仔牛)も産まれて賑やかだからいいンだけど、姉ちゃんが居なくなると、さびしい。
姉ちゃん、あたしンことすっごく可愛がってくれて、母ちゃんのように面倒見てくれたもン。
姉ちゃん、東京さ行って東京モンになって、東京で嫁に行っちまうンかな・・。
いつまでも残っていた雪の下からあおい芽が顔をのぞかすようになって、
やがて一面緑の野になり、村人皆ンなが真っ黒な土を耕す春がやって来る。