代償分割とは何でしょうか(遺産分割の方法)
2020.12.14
飯田橋法律事務所
弁護士中野雅也
遺産に実家の不動産しかなく預金がほとんどないようなケースが散在されます。このようなケースは、実家の不動産をめぐって相続人で激しい対立が生じることがあります。
本記事では、遺産をどのように分けるかという遺産分割の方法を解説します。
遺産分割には次の4つの方法があります。1 現物分割 2 代償分割 3 換価分割 4 共有分割になります。
1 現物分割
遺産を現物で分ける方法です。
例えば、遺産に土地と預金があり相続人が子供2名の場合、相続人Aさんは土地、相続人Bさんは預金を取得するということが考えられます。
これが現物分割です。あるものを分けるという考え方です。
しかし、Aさんの取得する土地の評価額が3000万円で、Bさんの取得する預金が1000万円であったとするとどうでしょうか?
Bさんは遺産4000万円のうち1000万円しか相続できないことになり不公平が生じてしまいます。
このような場合は、下記2の代償分割を検討することになります。
なお、測量を行って一筆の土地を分筆することも現物分割になります。
土地を分割した場合において、建築関係法令により十分な面積の建物が建てられなくなるなど土地の効用が毀損されることもあります。
土地を現物分割する場合は十分な調査が必要になります。
2 代償分割
代償分割は、複数人いる相続人のうち、特定の相続人が財産を相続し、他の相続人に対して調整のための金銭を支払う方法になります。
前述したとおり、遺産に土地(4000万円)・預金(1000万円)があり、相続人が子供2名の場合、
相続人Aさんは土地(4000万円)・相続人Bさんは預金(1000万円)と分割すると、
Bさんの取り分が少なくなってしまいます。
そこで、土地を取得するAさんが、Bさんに対し、「代償金」として1500万円を支払うことにします。
そうすると、Bさんは預金1000万円+代償金1500万円を取得することになりますので、Bさんは2500万円を取得したことになります。
また、Aさんは土地4000万円-代償金1500万円を取得することになりますので、Aさんは2500万円を取得したことになります。
このように代償分割により公平な分割が実現されることになります。
故人が経営者であった場合には、経営を引き継ぐ長男が「自社株」を相続し、次男は「金融資産」と長男から「代償金」を受け取ることとで調整することもあります。
なおオーナーとして会社を経営されている方は「後継ぎに自社株を集中させる」要請がありますので自社株が分散しないよう遺言書を作成しておく必要性が高いでしょう。
代償分割においては、計算の前提として土地や自社株の評価額が適正なものであるか等の問題が生じることもありますので注意が必要になります。
遺産分割協議書の作成において、相続人全員が参加し、相続人全員が納得して合意する必要があります。
上記の例では、AさんがBさんに対して代償金1500万円を支払う資力があれば問題はありません。
しかし、遺産分割協議が成立しても、代償金が後払いとされているようなケースでは、不払いとなる可能性があります。
代償金を受け取る方は、遺産分割協議書に調印する前に、銀行が発行する預金の残高証明書等により「資力」を確認するなどの手当てが必要になります。
3 換価分割
遺産を換金してその合計額を分ける方法です。土地・建物や金融商品を売却して金銭にすれば、相続人の相続分に従って分けることになります。
売却した金銭を相続分で分けるので公平な分け方になります。
しかし、実家の土地建物に故人と生前から同居していた相続人としては、実家の土地建物に居住し続けたいとの意向があり、反対することがあります。
そうすると、売却して売買代金を分ける換価分割の方式では、相続人全員の同意が得られないことになります。
上記の現物分割や代償分割を検討することになります。
4 共有分割
相続分に応じて土地などを共有で取得すると公平ではありますが権利関係が複雑化することから、
家庭裁判所での遺産分割調停では推奨されておりません。一般的に最後の手段とされています。
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