お金の重さ。
稼ぎが変われば変わるものだろうか。
少なくとも、学生の時のアルバイトから、社会人三年目になった今も、
私にとってのお金の重さは、まだ同じである。
知らない単語をあたかも常識かのように話掛けられる。
ここは海外ではない。全くの母国。むしろ地元。
私は何年か振りの歯医者にいた。
私は小さい頃から幸いにも虫歯に困らなかったため、
歯医者には滅多に行ったことがなかった。
しかし診察書に書かれている年齢は、大人の年齢20歳をとうに越えている。
もう何回も歯医者には来たことがあるだろうという扱いをされ、
戸惑いながら診察を受ける。
何もかも見慣れないもので囲まれ、
落ち着かない。
1回聞いただけではよく理解できない説明を
「はい」「はい」…
と聞いていたら必要もない歯型を取らされた。
知識がないということはこんなにも無力なのか…
自分の知識不足に項垂れる。
そこにふとWifiルーターが目に入った。
それだけでなぜか落ち着いた。
その、部屋の角だけ、何故か安心感と懐かしさが込み上げた。
いつも仕事場で見ると嫌気がさすLANポートに、なぜか触りたくなった。
1年前の私には馴染みも全くなく、まだ人生の中で新しいものだったLANポート。
ITに転職して1年しか経っていないのに、
私の中で、ネットワークが身近に、安心感まで感じるものにまでなったのは、
きっとこの歯医者の異空間がつくりだしたに違いない。
ここにもネットワークが張り巡らされている
私はしっかりと人の役に立つ仕事をしている
そう再確認しながら、
少し気だるそうだけど優しくて、しっかり目を見て笑顔のお姉さんに
また言われるがままに受付に戻る。
お会計で提示された金額は3万円。
私は自分の目と耳を疑った。
よくわからないことに、
一生懸命働いでやっと稼いだ3万円が一瞬で搾取された。
自販機のような精算機と書かれた機会は、その3万円の重みも知らず、感情もなくその3万円を吸い取った。
猜疑心でいっぱいで心がモヤモヤする。
非接触の為か、人件費削減の為か、
機械が私の大事なお金を無表情で扱ったのも
疑心感を増幅させた。
受付で何にどのくらいお金が掛かったのか聞くと、
お姉さんは明細を伝えてくれた。
私はお金の詳細を聞いたけど、
聞かなきゃ私たちは何にどのくらい掛かってるか知ることすら無い。
3万円あったら何ができる…
韓国旅行はできるし、
タブレットが買える。
AirPodsも買えてお釣りが返ってくる。
3万円を稼ぐのに…
1時間1000円の時給だと4日間8時間働く。
今のお給料を時給に換算すると3日間と半日。
朝憂鬱な気持ちで仕事場まで行って、頑張って働いて、
疲れた体を引きずりながら帰宅する
×4だ。
私にとってはなかなかな重さ。
それがよく分からない約1時間の検査で、
一瞬にして消え去った。
よく歯医者に行く人にとっては常識かもしれない。
いや、むしろ歯医者に3万円なんて常識中の常識かもしれない。
どうして旅行やタブレットには3万円の価値を見出だせて、
歯医者にそれだけの価値を私は見出せないのだろう。
世の中の価値観と私の価値観のズレ
平均は真ん中より少し上の値を指す時があると聞いたことがある。
きっとモノの価値観にズレを感じる人は、
相場だと感じる人に比べて多いのではないかと思った。
相場とは一体何か。
世間相場決定場の受付があったら、相場の明細の提示を求めてみたい。