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日本共産党 群馬・太田市議 水野正己のブログ
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インボイス延期を求める請願 6月議会で不採択に 共産党、参政党、若林議員の3議員が賛成

2023年07月27日 | 市議会・市政ニュース

 太田市6月議会では、インボイス延期を求める請願が日本共産党、参政党、若林たくみ議員の3議員以外の反対で不採択にされました。

 私が6月30日の本会議で行った賛成討論(要旨)は次のとおりです。

 
本請願は、今年10月から実施されようとしている消費税インボイス制度の実施の延期を求める意見書の政府への提出を求めるものです。

 
インボイス制度は、売上1,000万円以下の免税業者に、課税業者になって消費税を納める増税という負担を強いるか、あるいは、事務作業・事務費の負担の重いインボイスを発行しないことで取引から排除されてしまうかという、経営・廃業の危機に追い込むものです。同時にインボイスは、今の免税業者だけではなく、その親会社である課税業者にも、消費者にも、自治体にも負担増をもたらすものとなります。

 コロナ禍に加え、急激な物価高騰が家計、事業経営を圧迫し、地域経済の停滞、悪化を招いているもとで、いわゆる「物価高倒産」は、帝国データバンクが4月10日に公表した調査によると、前年度比3.4倍とされます。

 国会ではインボイス制度が実施されることで電気代が値上がりすることも明らかにされました。またシルバー人材センターへの発注単価を引き上げるように政府は自治体に求めていますが、こうした対応は住民の負担増にもつながりかねません。

 161万の業者や個人がインボイス制度の対象になり、2480億円の増収になると政府が試算しているように、インボイス制度は税率変更を伴わない消費税の増税策と言えます。

 このまま今年10月からインボイス制度が始まれば、コロナ禍や物価高から事業の維持・再建を図ろうとしている中小事業者やフリーランスに大きな足かせとなることは、あまりにもはっきりしています。

 インボイス制度における経過措置は、今年10月から3年間は、インボイスを発行できない業者からの仕入れ税額控除は8割のみです。3年後の10月から3年間の仕入税額所は5割に下がり、6年後の10月からは仕入税額控除がなくなってしまいます。結局、親会社は仕入にかかる消費税のうち控除できない分を、身銭を切るか、下請単価を切るか、親会社の売上単価を値上げして、末端小売価格が値上げされて消費者の負担増になるか、あるいは、インボイスを発行できない業者を切るかという結果になりかねません。なお政府は、免税業者であっても、いわゆる「益税」はないと認めていることも申し添えるものです。

 東京商工リサーチの昨年12月の調査では、インボイス制度に登録しない免税事業者と「取引しない」と回答した企業が10.2%と1割を超えています。

 日本商工会議所は2023年度の「税制改正に関する意見」で、「消費税インボイス制度の導入延期を含めた対応」を強く求めています。「同制度が導入された場合、免税事業者(約500万者)が取引から排除されたり、不当な値下げ圧力等を受けたりする懸念があることに加え、発行する請求書の様式変更、システムの入替・改修、受け取った請求書等に登録番号があるかの確認」などがあるとして、「事業者にとって多大な負担が生じる」と訴えています。

 さらにこの意見書は「制度導入後の混乱が避けられない場合は、制度の導入時期を延期すべきである」ともしています。

 個人タクシーの運転手は、会社員の乗客が経費で精算するためには、インボイスを求められます。課税事業者となれば、売り上げ300万円で消費税負担は、約15万円という試算があります。

 こうした延期や中止を求める声の広がりに、政府は「激変緩和」措置をとるとして、免税事業者が課税事業者になった場合、3年後の9月末まで税負担や事務負担を軽減するなどとしますが、これで問題が解消するわけではありません。

 請願者である東毛民商が加盟している全商連発行の商工新聞5月29日付では、「いない いない ばあ」という、年間約20万部、累計735万部を誇る日本で一番愛されている絵本をはじめ、紙芝居などを出版している「童心社」という会社が、「インボイス制度の導入は反対」と声を上げ、インボイスを発行しない絵本作家や取引先と、従来通りの取引を継続すると表明しているという記事を掲載しています。

 童心社の社長は、「『消費税をお願いします。駄目なら原稿料から引きます』とは、とても言えない。その人の作品や原稿、デザインが欲しくて仕事をお願いしているので、『登録事業者』で代わりを探せばいいという話では、ない」「技術を持っている小規模な業者とも協力して紙芝居を製作してた。そういう人たちを切り捨てるなんて、ありえない」と語っています。

 また社長は、「出版業界では著者や製作に携わるフリーランス等が免税事業者であっても『インボイス』の発行をお願いせざるを得なくなり、出版に携わる人々の関係を悪化させたり、免税事業者である人々が取引から排除されたりすることが起きかねず、出版活動に支障をきたす懸念が大きい」と強調しています。

 保育園へ給食材料を納入する地元業者が、インボイス非登録で取引中止になったという事例も生まれています。是正を求めた全商連に財務省は、「非課税取引ならインボイスは不要」「給食費が非課税なら仕入税額控除の影響はない。何らかの対応策を検討したい」と回答し、文科省も「分かりやすく踏み込んだ広報資料を作って、周知することを検討したい」と回答していますが、太田市の学校給食で地元食材の納入を担っている地元中小業者にも、インボイスが増税か廃業の危機をもたらすことが分かります。

 6月5日付商工新聞では、「インボイスの中止・延期などの意見書」を採択した地方議会が166という記事が掲載されていますが、この記事の後、6月21日には中之条町議会で、「消費税インボイス制度の10月実施を延期し、制度の中止を求める意見書」が採択されていることも申し添えるものです。

 さらに去年1月4日の厚労通知では、自治体がシルバー人材センターに発注する委託費について、シルバー人材センターの会員はインボイス登録をしないことが想定され、シルバー人材センターは、会員に払う消費税の控除ができなくなった分を負担することになるとしています。

 シルバー人材センターが会員からの仕入税額控除ができなくなった分を会員への配分金(実質賃金)から引くことはできません。会員にインボイス登録を強制することもできません。会員はインボイス登録などできるはずもありません。

 厚労通知は、インボイス実施後もセンターが会員に最賃を下回らない配分金を払うことが担保されるようにすること、そのうえで安定的な運営ができるよう、適正価格で発注すること、そのために必要な予算を確保することなど具体的な対応を求めています。

 厚労通知は、自治体とセンターそれぞれに具体的な対応を求めています。太田市シルバー人材センターは今年4月から、利用者が利用料とあわせて払う事務費を7%から9%に値上げしています。この値上げ総額370万円は、会員から仕入税額控除できない分に全額補てんされることになります。

 今年10月から3年間は、インボイスを発行できない業者から仕入税額控除できない分の8割は納める消費税から控除。3年後の10月からさらに3年間は、インボイスを発行できない業者から仕入税額控除できない分の5割は納める消費税から控除とされます。しかし6年後の10月からはこうした経過措置が終わります。

 太田市シルバー人材センターは今年、会員から仕入税額控除できない分を利用者からの事務費を2%値上げし、総額370万円の値上げで補てんすることになります。370万円は8割控除後の2割分。6年後の10月からは経過措置による控除がなくなり、センターの補てん分は単純推計で1,850万円になります。その1,850万円を利用者に求めれば事務費は17%になります。

 太田市シルバー人材センターの売上は4.2億円。うち市など公共団体は21%の8,800万円、民間(個人・業者)は79%の3億3,200万円。6年後の10月から市など公共団体がシルバー人材センターに払う事務費は、今年3月の7%から10%値上げされ17%になる可能性があり、事務費の値上げ総額1,850万円の21%、388.5万円は市など公共団体の負担増となります。

 インボイスの中止・延期を求めて政府に意見書を提出した地方議会の中には、シルバー人材センターの運営への影響、住民や自治体への負担増となる問題も指摘している議会もあります。

 北海道伊達市議会の意見書では、「形式的に個人事業者であることをもって、インボイス制度をそのまま適用することは、地域社会に貢献しようと努力している高年齢者のやる気、生きがいをそぎ、ひいては地域社会の活力低下をもたらすものと懸念されます。センターにとっては、新たな税負担はまさに運営上の死活問題」としています。

 以上、インボイス制度が免税業者だけでなく、その親会社である課税業者にも、消費者にも、自治体にも負担増をもたらすものであるかを指摘して反対討論を終わります。



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