太田市では、たった一つ残っている市立保育園である新田第一保育園と市立幼稚園4園のうち藪塚本町幼稚園を2017年4月に民営化する計画が進められています。
市ではすでに、2005年3月の太田市、尾島町、新田町、藪塚本町の合併後の2007年4月に、それまで2園あった市立保育園のうち浜町保育園を民営化しています。この民営化には議会でも日本共産党以外の保守系議員も反対しましたが、多数で可決されています。
なお合併より7年前の98年4月にも、やはりそれまで2園あった市立保育園のうち鶴生田保育園を民営化しています。
新田第一保育園
一つは公立を残すと言ったのに
8,000万円もかけて改築し民間に無償譲渡
用地は無償貸与
二度にわたる市立保育園の民営化は今の清水聖義市長のもとで行われましたが、その際市長は、市内に一つは公立の保育園を残すと議会でも言明してきました。
17年度の新田第一保育園の民営化は、こうした市長の議会での言明を反故にするものです。
市長は、「民間のほうが市立より保育の内容がよい」と言いますが、けっしてそんなことはありません。
なにより市長のその言葉は、市長みずから、市が市立保育園の保育サービスの充実に力を入れてこなかったということを意味し、今後も力を入れる考えがないことを示すものになってしまいます。そして、それは藪塚本町幼稚園の民営化でも同様と言えます。
しかも新田第一保育園の譲渡先とされるのは、今年中に新たに設立予定とされる社会福祉法人。なんの実績もない法人に今年度中に8,000万円をかけて大規模改修する園舎を無償譲渡し用地は無償貸与とされます。
保育士の大半がかわる
今いる保育士は正規が10人で非正規が12人。非正規の保育士の雇用継続も未定で、仮に雇用が継続されたとしても賃金も含めて処遇はいっさい未定とされます。たとえ非正規の保育士が全員譲渡先の民間法人に雇用されても、正規の保育士は市の別の職場に異動することになります。
保育士の半数が替わるとなれば、子どもたちにとっても保護者にとっても、けっしてよいことではありません。しかも非正規の保育士への説明会はこれまでたった1回。非正規の保育士が希望しても雇用継続は未定で、雇用が継続されたとしても賃金も含めて処遇はいっさい未定とされます。
非正規の保育士への説明会は4月以降にもう1回行われるとされるものの、譲渡先法人から示された賃金など処遇を説明する程度ではあまりにも無責任と言えます。市が譲渡先に希望者の雇用継続や処遇の維持・充実を求めているかといえば、現在までそれもありません。
市によると、市立保育園の民間譲渡=民営化は民間ノウハウの導入による保育内容の向上と行政コスト削減のためとされますが、そもそもその二つは両立し得ないものです。矛盾のあることを無理やり実行すれば、結局、犠牲になるのは子どもたちと父母、そして保育士です。
藪塚本町幼稚園
認定こども園化と同時に民営化
2.5億円もかけて改築し
用地も園舎も民間に事実上の無償貸与
10,000円以上の保育料値上げも
藪塚本町幼稚園の民営化は17年度からの認定こども園化に伴い、16年度中に2.5億円をかけて園舎を増改築したうえで市内で幼稚園を経営する学校法人に運営を委託する計画。市から委託費は支払われず、子ども・子育て新制度による施設報酬が委託先の学校法人に支払われる形態です。委託とはいえ事実上の民営化であり、園舎も用地も委託する民間学校法人に事実上無償で貸与するのと同じことになります。
太田市立幼稚園は昨年4月から子ども・子育て新制度に移行しましたが、新制度が適用される認定こども園の1号認定(教育標準時間4時間が適る用=従来の幼稚園)の子どもの保育料と市立幼稚園の保育料は、市民税額によって変わるため、認定こども園化によって10,000円以上も保育料が上がることもあります。(表1・2参照)
表1 現在の市立幼稚園の保育料
表2 市立幼稚園を認定こども園化した場合の保育料
(認定こども園での従来の幼稚園の子どもの保育料)
(①1号認定=3歳以上=教育標準時間4時間適用)
なお市立幼稚園の保育料は、小学3年以下の子どもから数えて2人めは半額、3人めは無料ですが、認定こども園になっても、市立でも私立でも、この仕組みは変わりません。
市立も私立も、認定こども園の1号(幼稚園)の子どもの保育料は市民税額で変わります。市立幼稚園の保育料は、生活保護世帯0円、市民税非課税世帯2,000円、市民税の均等割りのみ課税世帯2,800円、市民税の所得割課税世帯7,000円です。
市立幼稚園が認定こども園になると、市立を民間委託する場合でも民営化する場合でも、1号(教育標準時間4時間が適用=従来の幼稚園)の保育料は、生活保護世帯0円、市民税非課税世帯2,000円、市民税均等割りのみ課税世帯2,800円、市民税額48,600円未満7,400円…と、市民税額によって保育料が上がります。
市民税額48,600円以上は、税額に応じて10,100円~17,900円となります。
なお認定こども園の1号(教育標準時間4時間が適用=従来の幼稚園)の保育料も、小学3年以下の子どもから数えて2人めなら半額、3人目なら無料となります。
民間委託されても市立であることは変わりがありません。市立「幼稚園」から市立「認定こども園」になることで保育料が上がるのは納得できるものではありません。
また幼稚園の民間委託でも保育園の民営化と同様に、正規の先生は別の市立幼稚園や市の別の職場に異動となります。非正規の先生は、委託先の法人に雇用され、そのまま藪塚本町「認定こども園」に残ることもありますが、それはあくまで、その先生がそれを希望し委託先法人がそれを受け入れた場合の話です。
新田第一保育園の民営化と同様に藪塚本町幼稚園の民間委託でも、非正規の先生の雇用継続や委託先での賃金など処遇はいっさい未定のままです。先生の大半が変わることは保育園の民営化と同様に、子どもたちにとっても保護者にとっても、けっしてよいことではありません。
保護者のみなさんからは、先生がかわってしまうことや保育料値上げの問題とともに、現在は同じ敷地内にある市立藪塚本町小学校の調理場から届けられる給食が民営化後にどうなるのかという不安の声が寄せられています。
民間も含めた
保育サービス充実のためにも市立存続運動を
藪塚本町幼稚園の認定こども園化に伴う民間委託は限りなく民間譲渡に近いものとなり、事実上の民営化と言えます。ただし、「市立」には違いがないため市の責任は残ります。とはいえ、子どもたちにとっても、保護者にとっても、民間も含めた市全体の保育園、幼稚園の保育・教育サービスの質の充実のためにも、民間委託を中止すべきなのは言うまでもありません。
いま大事なのは、「民間ノウハウ導入」の名によるコスト削減を目的とした民営化ではなく、民間の保育園、幼稚園のサービスの指標、基準、モデルとなる市立の保育園、幼稚園のサービスの充実です。
保育園、幼稚園のサービスの充実に逆行する民営化を中止し、市立保育園、幼稚園を存続し、サービスの充実を求める大きな運動にみなさんと力をあわせて取り組んでいく決意です。みなさん。ご一緒にがんばりましょう。
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幼児期・幼児教育が大切といいながら、政治・行政の上ではなおざりにされることに暗澹たる思いに駆られます。
教育に対する首長の考えひとつで、民営化のスピードも違うものなんですね。
選挙の大切さをしみじみ思います。
がんばってください。
ご一緒にがんばりましょう!