さてどっちへ向いて話が流れてゆくのやら・・、
ついつい物の弾みで鬼共が大挙居候する事になりましたねぇ。
書いてる私も、まさかと思う展開やがな。
粗筋くらいは考えてから書きゃぁエエのに、カップラーメンすすりながらの思いつきで始めるから、こういう目に遭うんですなぁ。
「正直者探し」で往生しときながら、全く学習してないのも困ったもんでっせ・・。
いずれにしても、特定の個人はモデルにしてるけど、このお話はほぼフィクションです。
「まぁ、まぁお兄さん方、この年寄りの相手してくれはって、おおきににありがとうさん。若い男衆(オトコシ)に囲まれて、久し振りで気が晴れましたわ。フ ワァ~、欠伸が出てしもた。ワタイどうやら又眠れそうな。あんさんらも明日お仕事でっしゃろ。ほな、どちらさんも、お先にお休み。」
「お兄さんや無いで、オバアチャン、鬼さんやがな」
「グ~ッ」
「寝間にも行かんと、もう寝てるんかいな、折角、新町の住吉団子貰ろてきてるのに・・」
「住吉団子!久し振りやねぇ。寝る前やから二つだけ、頂くわ」
「起きてるのんかいな、寝る前で二つ?昼間やったら一折二十個みな食べるんとちゃうか?」
「いくらワタイでも皆は無理。どうしても三つ四つは残りそう。」
「我親ながら恐ろしいなぁ・・。そうそう、この間の植木屋の払いの事やけどなぁ・・」
「グ~ッ、グ~ッ・・・」
「団子は要らんのかいな?」
「二つ言いましたやろ」
「植木屋・・」
「グ~ッ!ワタイ眠てまっせぇ・・、グ~ッ・・・」
言うても相手は百戦錬磨、「妲妃のお百」「八百比丘尼」と差しで勝負してもめったな事で引けは取らん。
大正三年五黄の寅(ゴオウのトラ)、明治三十九年丙午(ヒノエウマ)の癇馬みたいな亭主を「ヘイヘイ、ハイハイ」とあしらいながら手玉にとった剛の者。
やっと還暦に成ったか成らん、甲申(キノエのサル)やら癸羊(ミズノトのヒツジ)かはっきりせんような、頭は禿げてもくちばしの黄色いオッサンの敵う相手や無い。
食べる物を食べたら、とっとと我部屋に引き上げて、バタンキュ~。
こうでないと長生きは出来まへん。
「オバアチャンも寝てしもたし、あんたらもお休み、先の事は明日落ち着いて相談しまひょ」
「何分よろしゅうお願いします。お言葉に甘えて休ませてもらいま。お休みやす。」
「ヘイ、ほな旦さん奥さん、お先に」
「お先に」
「おやすみ」
言うたかと思うと畳やら天井板を通り抜けて居らんようになってしもた。
「何やいな、そんな器用な事が出来るんやったら、わざわざウチに避難する事も無いやろうに!」
言うが早いか、天井裏、床下、あっちゃこっちゃ、此処彼処から、
「グ~ッ」
「悪い事を覚えよったなぁ、朱に交われば赤くなるというけれど、青鬼は赤青の縞模様?それとも紫色になるのやろか?」とショウも無い事を言いながら眠って、翌朝は立春。
朝の早うからゴソゴソするのはこのオッサン、何時もの事。
安売りで買うたブルックボンドのダージリンを淹れてると、今朝は何やら様子が違う、仏間がエライザワザワしてる。
覗いて見たら、仏壇の前に座ったバアさんの後ろで鬼共が押すな押すなで神妙に座って、「な~もあみだんぶ、な~~もあ~みだんぶ」と大合唱。
「オイオイ、鬼が阿弥陀さん拝むか?お前等も門徒かいな」
「いえ、そう言うわけではないけれど、これも浮世のお付き合い」
エライ、人付き合いのエエ鬼で、年寄りのあしらいもそつが無うて、中々上手。
オッサンは此所商売が面白う無うて、何ぞ金の儲かるエエ仕事は?と思うてた所やから、
「オオ、そうじゃ!ひとつこの連中を使うて介護サービスなと始めようかいな?人件費は只やし、これは儲かる事間違いなし。ウヒョヒョヒョ・・」と虎の皮な らぬ獲らぬタヌキの皮算用をしてますと、突然、廻り一面に紫色の光がパァーッと差して、何処からとも無く、正月でもないのに雅楽みたいな楽の音が。
こら又一体何やいな?と驚いていると、座敷の中ほどに五彩の雲がモワモワモワッと湧いて出まして、
「善哉(ゼ~~ンザイ)、善哉(ゼ~~ンザイ)・・・」と雲の中から声がして現われたのは一尺ほどの仏さん。
「妙なもんが現われたで、鏡開きはトウに済んでるがな。朝っぱらからゼンザイはいらんなぁ、マンゴープリンは持ってやないかい?」
「エェ~ィ、口数の多い、茶市(飲茶)で甜点心の引き売りしてるんや無いわいな!賎の凡夫控え~ぃ、我こそは阿弥陀如来」
「嘘ォ、凄いもんが出て来たなぁ・・。しかし阿弥陀さんて、そないに小さいんでっか、ウチの仏壇(ブッタン)の仏さんと似たり寄ったりでんがな。それとも阿弥陀さんのお子さん?」
「最近は経費節減、五彩の雲も小型化、省エネタイプじゃによって、どうも出足が悪うて乗っておってもストレスがたまる。馬力アップは違法改造に引っ掛かっ てままならぬ。こうなりゃぁ最期の手段、馬力あたりの重量を軽減と必死こいてダイエットしたら、チト度が過ぎて縮み過ぎてしもうた。ゼンザ~イ」
「どうでもエエけど、嘘っぽいなぁ・・。ほんで、また今朝は何用でお越し?」
「鬼共が、殊勝にも一心に念仏するじゃによって、浄土へ成仏させてつかわすぅ~」
「なんと!鬼でも成仏出来るんでっか」
「弥陀の本願、努々(ユメユメ)疑う事無かれ、ゼンザ~イ」
「どうでもエエけど、そのゼンザァ~イ言うのんが気になりますなぁ」
「自分で南無阿弥陀仏と言うのはグツが悪い。これを言わぬと調子が出んのじゃ。合の手見たいなもんじゃによって気にする事は無いぞぇ~。ゼンザァ~イ、ゼンザァ~イ、」
「ウワッ、二連発でっか!」
「それでは鬼の衆、共にお浄土さして、イザ成仏ゥ~」
一際厳かに楽の音が響くと、
鬼奴等の念仏と共に、「ゼンザ~イ、ゼンザァ~イ、ゼンザ・・・」阿弥陀さんと一緒に鬼共がス~ッと虚空に消えてしもた。
「ありゃりゃ、皆んな行ってしもたがな、有難いような、拍子抜けしたような。しもた!ついでにオバアチャンも連れて行って貰ろたら良かったんやがな。折角 仲良うなって道中退屈せんでもエエし心丈夫やがな。三途の川も団体やったら割引で渡れるやろう、阿弥陀さんが添乗なら、六道の辻で道間違うて浄土に行き損 ねる心配事も無かったやろうに」
「ワタイもそう思ててんけど、鬼さんたちは異界の者、ワタイは生身の人間、一緒には出来んのやけど特例で、というて貰ろたんに外れてん」
「外れたて何が?」
「そらあんた阿弥陀籤やがな・・・。」(「」内を選択していただくと・・・)
何時ものように天下御免の竜頭蛇尾、バレバレのオチでんなぁ・・・。
あんまりにも恥ずかしいから、ちょっとだけ隠さしてもらいました。
気散じに書き散らす妄言なんて、こんなもんでっせ。
こういう口から出任せは、書いてても気楽でよろしいなぁ。
待てよ、相当プライバシーが混じってしもてるような気もするなぁ。
まぁ、エエか。
ウフッまだ昼休み10分あるがな。
未練が残ったらイカンから、読み直しなんかせんとこぉっと。
2004/02/04
節分の妄言 福は内-1