maidoの”やたけた”(ブログ版)

ジジイの身辺雑記。今日も生きてまっせ!

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Today's maido (日記)を主に、新しい記事と併せて、OCNの旧maidoの”やたけた” 内の関連のある日付のToday's maidoや記事も此方へ再掲載しております。


☆☆☆ お薦め与太話 ☆☆☆
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虚々実々-心筋梗塞顛末記 目次 をアップしました。(2016-11-12)
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白姫伝説-07 転の巻

2006-09-22 06:21:55 | 支離滅裂-迷想迷夢-白姫伝説

<お断り>
例によらず、難儀な事に記事の内容は部分的に特定の団体や個人と関係あるんですねぇ。
というのは、元ネタとして踏まえているのは、大正十三年(1924年)実際にあった出来事なんですよ。
枝葉の部分には見ていたような虚構・フィクションもございますが、幹は実話でございます。

アレレ?と思い当たられる方があったら貴方の事かもしれません。
大正十三年(1924年)生まれなら今年(2006年)82歳。
主要な登場人物は当時既に成人していたから、存命ならば100歳を超えてるでしょうね。
まさかとは思いますが、記事内容について、ご本人から訂正削除のお申し入れがあった場合は、事の如何に関らず全面的に受諾、可及的速やかに実行します。
ただし、ご本人以外の親族・係累・通りすがり等のお方からの因縁・イチャモンにはお相手しかねますので、前以てお断りして置きます。
</お断り>



さすが若いだけあって先に息を吹き返した若い衆、しかし何時までも若い衆ではこの先話がしにくい。
この兄ちゃん、野田市衛門という侍のような名前の癖に、これ以上のビビリは世間に居らんやろ、というほどの怖がり。
少々、いや相当温(ヌル)いところもあるからか、いまだに独り者。
気は優しいてエエ奴やのに、若い連中には立てて貰えず、年長者からはチョンガ代表と、何かとこき使われる真に哀しい立場。

「保治郎さん、保治郎さん、大丈夫でっか。目を醒ましとくんなはれ!」
「おっ、市衛門か、どうしたんや、ところで巳(ミ)ィさんは?佐太郎はんは何処へ行った?」
「どうしたんやも無いもんや、エライ勢いで私にぶつかるよって、二人して此処でノビてたんやおまへんか。」

「そやけど、確かに佐太郎はんが大蛇に変身・・・。ワッ、そこに白蛇様が!
何のことは無い、市衛門が首に巻いてた手ぬぐいが、ぶつかった拍子に叢に落ちて、月明かりにボンヤリと浮かんでるんですわ。
怖がりというのは、一旦怖いと思うてしまうと、見るもの聞くもの何もかも怖い。
ギャッ!とばかりに、今度は二人して佐太郎と金助が居る莚小屋へ飛び込んだ。

元々が小さな仮小屋に恐さでブレーキが故障した二人が勢いよく駆け込んできた。
保治郎は年が年だけに脚が縺れてヘッドスライディング。
市衛門は倒れた保治郎を踏むまいとして足元が狂い、笊に足を突っ込んでズッテンドウ。

この騒ぎで佐太郎にスイッチが入ったか「ウ~ム」とうめくなり白目をむいて突っ張らかった。
泡を食って立ち上がった金助が柱に掴まると、やっつけ仕事だけに仮小屋は脆くも崩壊、
棟に使っていた太い孟宗が白目をむいている佐太郎の額を直撃。
そっくり返っていた佐太郎が、突然クタッとなったのには周りが驚いた。

「おい、えらいこっちゃがな。まさかお参りしたのやないやろな?」
「いや、大丈夫死んでは無いようでっせ。」
「市衛門、何で判る?」
「今こそばしたら、ヒクッヒクッと動いた。」

「この大変な時にしょうもないことするんや無い!ん?静かに、静かに、何か言うてるみたいやで。」
「う~・・・、しんぱいするなお前にいらん迷惑が掛からんよういちもくさんににげるよって、ワシが祈ったくらいであめがふるはずがない・・・・・・」
「オイ、市、聞いたか、聞いたか!シンパイスルナ、ニイイチサンニアメガフルといううたんとちゃうか。これはお告げかも知れんぞ!」
まぁ、都合の良い聴き間違いをしたもんで、そう有って欲しいと思うと無理やりにでも聞こえるんでしょうなぁ。

「保治郎さん確かにシンパイスルナ、ニイイチサンニアメガフルと聞こえたような気はするがそれが何ですねん?」
「そやからお前は皆んなに温(ヌル)湯のイッちゃんとよばれるねんがな。」
「あれは私が全身猫舌で暑い風呂によう入らんから・・・」

「ええい、全身猫舌の話なんかどうでもエエのじゃ!心配するな、二一三に雨が降ると言うたやろ。」
「貴方もくどいねぇ、今そう聞えたといいましたやろ。」
「貴方もくどいねぇ、とは目上に向かうて何ちゅう口の利きようや!」

「私のほうが背が高いから目の位置は保治郎さんの方が下、イテッ!」
「そんな事はどうでもええのや、ニイイチサンというからには二十一日の三時、午前か午後かは判らんが兎に角三時に雨が降るというてるんやがな。」
「え~っ、ホンマに雨が降るんでっか?もしも降れへんかったら、保治郎さんどうしてくれます?」
「ワシにそう言われても、答え様が無いがな。ホンマに降るかどうかは知らんけど、そう聞こえたで、なぁ金助」

「へっ?」
「へっ、や無いがな、今の佐太郎はんのお告げを聞いてへんかったんかいな。」
「お告げ、でっか?へぇ、一向存じませんが。」

「なんとまぁ、従兄弟やというのに頼りにならんこっちゃなぁ!あれ?市衛門は?」
「ほんの今、エライコッチャ、エライコッチャと喚きながら村のほうへ走っていきましたで。」
「しょうの無い奴やなぁ、気付けの水を取りにやろうと思うたのに。」
「あ、水やったらここにもおまっせ。」

「おお、おお、これは用意のエエ、それを佐太郎はんに飲ましたげなはれ。」
「え~、これをでっか?それはあんまり・・・」
「こんな時に水ぐらい惜しんで、大体お前は普段からけち臭い。早よしなはれ。」
「いや惜しんでるわけや無いけれど、掛けるなら兎も角、飲ますのは一寸どうかと、」
「一々口ごたえせんと、早ようしなはれ!」

「ブェ~ッ!オェ~、オェ~、何をするねん!」
「あっ、良かった気が付きはったかいな。」
「エエ事あるもんか、今のましたんは一体何やねん。」
「水神さんにお供えしてあった花活けの水・・・」

「おのれ金助、お前は何の恨みがあって、折角はるばる訪ねてきた従兄弟を殺そうとするんや!」
「アヒィ~、シム~、シム~、!」
「佐太郎はん、止めなはれ!金助が死んでしまうがな。ところで二十一日三時に雨が降るというのはホンマでっか?」

「何やそれ?」
「いや、今あなたがお告げで雨が降ると・・・」
「おっ、雨が降りますのんか、それはそれはよろしおましたなぁ♪私もお役御免でほんに結構、ところでそのお告げというのはナ~ニ?」

「そやから、さっきあなたがそうお告げを・・・」
「へぇ~!私がでっか?」
「へぇ~、や無いがな!」
大騒ぎをしておりますと、ワイワイという声が近づいてきた。

よしよし、充分転びましたねぇ。
転んでゆく方向が今一定まってない事が問題やねぇ。
まだ雨が降ってないから「お池にはまってサァ大変」になる心配はないけれどね。
草むらにでも転がり込んで行方知れずになったら探すのが面倒な。
その時はその時で、また胴体着陸でもするか・・・。


2006/09/22

白姫伝説-00 目次


白姫伝説-06 承を今暫くの巻

2006-09-21 06:17:07 | 支離滅裂-迷想迷夢-白姫伝説

<お断り>
例によらず、難儀な事に記事の内容は部分的に特定の団体や個人と関係あるんですねぇ。
というのは、元ネタとして踏まえているのは、大正十三年(1924年)実際にあった出来事なんですよ。
枝葉の部分には見ていたような虚構・フィクションもございますが、幹は実話でございます。

アレレ?と思い当たられる方があったら貴方の事かもしれません。
大正十三年(1924年)生まれなら今年(2006年)82歳。
主要な登場人物は当時既に成人していたから、存命ならば100歳を超えてるでしょうね。
まさかとは思いますが、記事内容について、ご本人から訂正削除のお申し入れがあった場合は、事の如何に関らず全面的に受諾、可及的速やかに実行します。
ただし、ご本人以外の親族・係累・通りすがり等のお方からの因縁・イチャモンにはお相手しかねますので、前以てお断りして置きます。
</お断り>


五月山(サツキヤマ)の向こうに夕日が落ちるのを待つ間に、保治郎は金助から佐太郎の事を聞き出した。
戦争で死にかけた事、一時は霊能者として在所の大川郡では評判であった事、何時の間にか伯父さんの下で修験者になっていた事くらいで、詳しい事は金助も知らん。
しかし、それならまんざらド素人のインチキでも無さそう、と何とかして希望的に考えたい保治郎は一安心。

実はその安心は夢幻(ユメマボロシ)の蜃気楼、九割がたはド素人のインチキなんやけれど、そんな事は知らぬが仏。

これだけ何処も彼処も干上がっているというのに、一体どこにボウフラが湧く水溜りがあるというのか?
火縄の蚊燻しも物ともせず群がり寄る蚊を叩きながら、日暮れをジリジリする思いで待つ二人をようやく夕闇が包み始めた。
そろそろ良かろうと、暮れなずんだ池の傍を莚小屋に近ずくと、何やら異様な声が聞こえて来た。

うめき声とも雄叫びともつかぬ声がしているのは、紛れも無く小屋の中。
「金助、行者というのはああいう声を出して祈祷するもんかいな?」
「さ~。知りまへんで・・・、」
「お前も従兄弟やろうが、そのくらいは知っとけ!」

「従兄弟でも知らん事は山ほどおますわいな。そのかわりあんたの娘のオイドのホクロの数知ってまっせ。」
「ぬわにぃ!世帯持ちの癖にウチの娘にちょっかいを出すとは、トンでもない奴っちゃ、おのれ!」
「落ち着きなはれ、ウチの嬶が子守りの手伝いしてる時に、この子のオイドには北斗七星があるのやで、とオムツ替えしなに見せてもろたんやがな。」

「今は取り込み中からマァそうしといたろ。後日ゆっくり言い訳を聞かせて貰うよってな。」
「言い訳も何も、それが真実、真実一路。それより何や静かになりましたで。」
恐る恐るそ~っと莚の裾を持ち上げて見ると、暗い中に横たわった佐太郎と空になった笊の影が。

突然「ウ~~~!」と一際大きな声で喚かれて、おっかなびっくり覗いていた二人はビックリ仰天。
素っ飛んで逃げようとした保治郎と金助は、慌ててもつれ合うて余計に恐怖が増幅。
年に似合わんえらい勢いで、保治郎が金助を佐太郎の上へ突き飛ばした。
食い過ぎの腹の上へ勢い余った金助が倒れ掛かる。

「ウグェ~!」という佐太郎の叫び声に、後ろから蹴られたように保治郎は一目散。
おあつらえ向きに下り坂、そのまま坂なりにどんどん下って行けば、猪名川にはまって帰ってこれんようになる。
幸いそうはならず、薩摩池横の墓場まで走ったところで、様子を身に来た村の若い衆とぶつかって運良く止まれた。

さてこちらは莚小屋の中の佐太郎と金助。
「一体どうしたんや?大丈夫か?オイ、まさかあれだけの飯を全部食うて、食い過ぎてな事では無かろうな?」
「くぅ~たわぁ~、くわいでかい・・・、う~、ぐるじぃ~・・・」

「お前、若い時から大飯食いのウワバミ腹やとは聞いてたが、何ぼなんでもそない無茶したら死ぬるぞ!」
「心配するな、今まで重ねた死ぬほどの修行は伊達や無いわい。」
「オイオイいかにもちゃんと修行したような事をいうやないか、大食いも修行の内か?」
「そうや命懸けの立派な修行。食える時には食うとかんとんな。心配するな、しばらくこうして横になってたらそのうちにこなれて、生まれ変わったように元気になるよって。」

満月から三ッ日目の月が枚方丘陵から、雲ひとつない濃紺の夜空に顔を覗かせたのは21時過ぎ。
丁度この頃嫌がる若い衆を引っ張って、保治郎が月明かりの中を恐々戻ってきた。
「オイオイ、まさかとは思うがお前今の話を聞いたか?」
「へぇ、保治郎さん。所々は聞き取れんかったけど大体は。」

「ワシの耳には、若い時から死ぬほどの修行をしたとか、ウワバミの修行がどうとか、命懸けで生まれ変わった、というたように聞えたがなぁ。」
「へぇ、保治郎さん私にもそのように。」
「この文明の世にそんな事があるもんやろか?」
「へぇ、保治郎さんあるかも知れまへんなぁ。」

丁度その時「グェ~~~ェ、・・・」と食い過ぎの佐太郎がえずいたから堪ったもんやない。
魂消てウワ~ィと逃げ出した二人、闇雲に走り出したのはエエが、思いっきり鉢合わせ。
目の前に火花が散ったと思った瞬間、その場に倒れてしもた。
夢現(ユメウツツ)の中で佐太郎が蛇になったり、蛇が佐太郎になったり。

片や小屋の中では佐太郎と金助がヒソヒソ話。
「佐太郎どないするつもりや、ホンマに雨を降らせられるんかいな?」
「お前も判りきったことを聞くなよ。そんなこと出来るわけが無いやろ。出来たらこんなところでウロウロしてるもんか!」

「えらそうにいえる立場や無いやろ。ただ飯、それも一升飯の食い逃げやないか!」
「食い逃げとは人聞きの悪い。遠慮してオカズは塩だけで辛抱してるやろうが。」
「そやけど、保治郎さん、どうやらその気になってるで。」

「それは勝手というもんや。ワシに雨を降らす自信が一寸でもあったら、先に祈祷料を貰うわい。そうせんかったんは降らんのが判ってるだけに、後でお前が辛い目に逢わんようにと思うからこそ。感謝せぇよ。」
「すまんなぁ、えらい気ぃ使わして。」

「まぁ、ええがな従兄弟やねんから、このくらいは当たり前や。」
「ん?待てよ何でワシが礼を言わんならんのや?」
「そんな事かまわへんから気にするな。腹さえこなれたら、朝までにはそ~っと居らんようになるさかい。」

何とかして転がそうとしておるんですが、簡単には転び出しませんなぁ。
次回は無理やりにでも「転」にしますわ。
さてうまいこと転ぶやろか?


2006/09/21


白姫伝説-00 目次


白姫伝説-05 やっと承の巻

2006-09-20 06:12:13 | 支離滅裂-迷想迷夢-白姫伝説

<お断り>
例によらず、難儀な事に記事の内容は部分的に特定の団体や個人と関係あるんですねぇ。
というのは、元ネタとして踏まえているのは、大正十三年(1924年)実際にあった出来事なんですよ。
枝葉の部分には見ていたような虚構・フィクションもございますが、幹は実話でございます。

アレレ?と思い当たられる方があったら貴方の事かもしれません。
大正十三年(1924年)生まれなら今年(2006年)82歳。
主要な登場人物は当時既に成人していたから、存命ならば100歳を超えてるでしょうね。
まさかとは思いますが、記事内容について、ご本人から訂正削除のお申し入れがあった場合は、事の如何に関らず全面的に受諾、可及的速やかに実行します。
ただし、ご本人以外の親族・係累・通りすがり等のお方からの因縁・イチャモンにはお相手しかねますので、前以てお断りして置きます。
</お断り>


呆然と立ち竦む金助の後ろから「金助、この修験者さんは知り合いのお方か?」と声をかけたのは村の世話役庄司保治郎。
昨夜萱野であった近郷十ヶ村の寄り合いでも、「困った困った、雨が降ってくれんもんかのぉ。」と言い合うばかり。
「こうなっては神頼みしかないぞ。」と冗談とも諦めともつかん話に落ちる始末。

この文明の世の中でアホらしい、神さん頼みで雨が降るくらいなら苦労があるもんか。
ここ数ヶ月というもの、全国数え切れんお寺やお宮さんに誰も彼もが雨乞い祈願をしてる。
そんなもんで雨が降るなら、今ごろは日本中水浸しいなってる筈やないか。

とはいうもんの、ここまで追い詰められると、困ったときの神頼み、ひょっとしたらひょっとするかも知れん。
駄目で元々とは言うものの、何処の馬の骨か判らんインチキ拝み屋に引っ掛けられるも口惜しい。
誰ぞそういう筋に伝手は無いもんかいな、と思っていた矢先。

金助が口を開こうとしたら、岩が転がり落ちるような大声で「金助の従兄弟、多田佐太郎と申します。」
瀧安寺の護摩法要の後、祈祷の依頼を多数待たせておるので、早う国へ帰らねばと思うところが引き止められて、やっと帰れる目途がついたと思えば、其の前に是非と勝尾寺からたっての招き、仕方なく顔だけでも出すか、と向かっているところです。

まぁ聞かれもせんのに、もっともらしいことを言うたもんです。
保治郎さんも決して初心や無いが、余りの日照りで水気が飛んでるところへ、見た目の嵩高(カサダカ)さに惑わされた。
「金助さん、従兄弟さんは若い時から修験道をやってはるんかいな?」

金助も従兄弟のお陰で「さん」がつくようになったのは保治郎さんの気の迷いの現われか。
「へぇ、日露戦争から帰って何年かしてから、伯父さんの元で講の先達を」
「お~、それは立派なホンマもんやがな、そんなお方が従兄弟さんとはありがたい!」

「いや、ホンマもんやのうて、真っ赤な」「夕日に照らされた金峯山で修行を積み、その後諸国を遍歴しました」
「どうですやろ、お忙しいとは存知ますが、一つご縁ですので雨乞いの護摩などおねがいできませんでしょうか?」
「今まで散々待たせたから、勝尾寺や国許はもう一日二日待たせてもどうという事はなかろう。他ならぬ金助がお世話になっているのにお断わりするも心苦しい。お引き受けしましょう。」

「ところで、お礼のほうはいか程?」
「何を仰る、そのような物は祈祷の験が現れて雨が降ってから、お気持ちで頂けば良いこと。」
さぁ、これで保治郎さんコロッとまいってしもた。

お金がいるとなれば、村役、長老へもお伺いを立てねばならず、万一効果が無かったら言い出し兵衛は針の莚。
この先何年も事あるごとに持ち出されて、いびられたんでは間尺に逢わん。
祈祷料が出来高払いとなれば、お伺いを立てる必要も無し、よしんば降らずともそう責められる事も無かろう。

「少々お聞きしたいが、」
「へぇ、何でもおっしゃってください。」
「この近くに水神様の祠のようなものがございましょうか?」
「五藤池というこの少し上の池の北側に己(ミィ)さんの祠がありますが・・・」

早速見たいというので三人一緒に祠へ。
この祠、言い伝えでは水神の白蛇をお祀りしていると言われているものの、それ以上は誰も知らん。
一抱えほどの岩の上に置かれた赤塗りの粗末な木箱みたいな祠。

何時ぞやは大風で吹き飛んでバラバラになったから、それ以来土台の岩に針金で大回しに括りつけてある。
中には握り拳くらいの石ころと、蒲鉾板くらいの書かれた文字も定かで無い朽ちかけた木の札が入ってるだけ。
それでも、毎朝手を合わしに来る年寄が何人かいて、欠けた古徳利にそのへんの花を供えたりするので、捨てるに捨てられへん。

佐太郎もまさかここまでお粗末とは思うてなかったかして、一瞬げっそりした表情になった。
そこはそれ、彼方此方で辛い目に遭ってきた修行の賜物、直ぐに何事も無かったような顔にもどった。
「それでは本式の祈祷をする前に、水神様にお伺いを立ててみましょう。祠の前に、莚(ムシロ)で結構、簡単でええから小屋掛けをお願いしたい。それと塩二握り、白飯を二升笊(イカキ)に盛って用意してください。」

「おや、お神酒は要りませんのか?」
「私の流儀に神酒は不要」て単に自分が下戸なだけ。
「ちょっと待って、冷でよろしいよってに、五合壜を一っ本。」
「アホ、お神酒に燗なんかつけるもんか!お前に呑ますんやないわいな。」

村中に触れて、一軒あたり一握り二握りと米を集めると保治郎の家で炊きに掛かる。
その間に、保治郎が指揮の下(モト)、竹を切り出し莚小屋を設(シツラ)える。
丁度小屋が出来上がったところに飯も炊き上がった。

小屋に飯と塩を運び入れさせると、佐太郎は戸代わりの莚を下ろし、日が暮れるまでは一丁(約109m)以内には近づかんようにと言い残して中に閉じこもった。
締め出された保治郎と金助は、干上がった薩摩池のほとりで、蚊に食われながら日暮れを待たんと仕方がない。
この日北摂の日没は18時43分、何もせずにただ待っていると、お日さんが何時までも同じ所で留まってるみたい。

このまんま日が沈まんのとちゃうか?と本気で心配になってきた。

「日没は18時43分」と具体的な時刻を書くといかにもホンマっぽいでしょ。
実は、ドンピシャリでは無いかもしれませんが、結構近い数字の筈なんですよ。
さて、なんとか「承」と名をうったものの、これをどう転ばして「転」にして行くか・・・。


2006/09/20

白姫伝説-00 目次


白姫伝説-04 まだ起の巻

2006-09-19 06:08:53 | 支離滅裂-迷想迷夢-白姫伝説

<お断り>
例によらず、難儀な事に記事の内容は部分的に特定の団体や個人と関係あるんですねぇ。
というのは、元ネタとして踏まえているのは、大正十三年(1924年)実際にあった出来事なんですよ。
枝葉の部分には見ていたような虚構・フィクションもございますが、幹は実話でございます。

アレレ?と思い当たられる方があったら貴方の事かもしれません。
大正十三年(1924年)生まれなら今年(2006年)82歳。
主要な登場人物は当時既に成人していたから、存命ならば100歳を超えてるでしょうね。
まさかとは思いますが、記事内容について、ご本人から訂正削除のお申し入れがあった場合は、事の如何に関らず全面的に受諾、可及的速やかに実行します。
ただし、ご本人以外の親族・係累・通りすがり等のお方からの因縁・イチャモンにはお相手しかねますので、前以てお断りして置きます。
</お断り>


ところが、そんなものは、それなりに世間の景気が良ければこそ。
世界大戦の跡の不況に加えて旱魃で、農閑期に旅行どころの騒ぎやない。
ここで救いは景気の良かった間に、両親と伯父さんを無事(?)向こう岸へ送れた事。

そうなりゃ自分の面倒さえ見りゃぁエエという一人者の強味。
本来農繁期のはずが雨が降らんから仕事の仕様がなく、春からず~っと心ならずも結果的には農閑期。
加持祈祷そのものが激減した上に、以前のように腹いっぱい無制限に食えるような結構な事は皆無。

たまに気前の良い拝み先に当たると、自慢の食い溜めの聞く提灯腹に二~三日分を食い溜め。
後は出来るだけ動かんように、ジ~ッとしているというまるで蠎(ウワバミ)みたいな食生活。
ところがそんな時に限って、力仕事の手伝いの口が掛かって、腹を減らす事になる。
情け無い事に行った先でのあてがい飯が、丼盛り切りときては収支が合わん。

しかし、今度また何時お声が掛かるか判らんだけに、丼飯は厭と断りも出来ず、実に人生とは難しい。
旱魃のお陰で雨乞い祈祷だけは一時的に賑わったものの、実はこれが良し悪し。
何が困るというて、雨乞いばかりは祈祷の効果がど素人にも判断できて、効果が現れん場合に言い逃れるすべが無い。

もっと具合いが悪い事には、さんざインチキ雨乞いの拝み屋に騙されて、頼む方もこれでは堪らんと考えた。
そこでお礼は雨が降ってからと出来高払い、責任施工、成功報酬、それが厭なら手付に雨雲でも見せてくれ。
そんな事をいわれて「ハイそうですか。」と雨雲を出せられるなら何の苦労があるもんか。

眞に困った状況で、一度雨乞いに失敗したら最期、先ず二度とお声は掛からん。
ただ働きだけでも辛いのに、頼りにならん、効き目が無いという悪い評価だけは確り残る。
残るだけやなしに拡まるから始末が悪い、雨乞い以外の注文も途絶えがち。
遂に我が身一つも養い兼ねる情け無い事態に立ち至った。

近所周りは行き尽くして、やむを得ず修行旅と言えば聞こえは良いが、早い話が浮浪者の一歩手前。
海を渡って山陽道を、あっちへウロウロこっちへウロウロ、メシを求めて右往左往。
都会でなら何とかなるかいな?と流れ着いた神戸の街の安宿で、同じような野良山伏から聞き込んだのが耳よりな話。

八月七日(木曜日、農暦七月七日七夕)箕面山瀧安寺の護摩法要、大人数が集まるから一人や二人紛れ込んでも判らんやろう。
首尾よく紛れ込んで、久し振りに腹いっぱいのメシにありついて甲斐甲斐しく働いては見たものの、後が続かん。
法要の後片付けが終れば筋目の良い修験者は夫々に帰って行く。

帰るあてないこの私、どうすりゃいいのよ思案橋。
何とかこのまま居候になれぬものかと、儚い願いを胸に一週間、さすがにそろそろ居辛うなってきた。
え~い、勝尾寺へでも行って見るか、と連山の裾を西へ、約半里(2km)の白島(ハクノシマ)に差し掛かった。

此処から、應頂山勝尾寺へは真北の稜線を越えて約一里(4km)
勝尾寺と特別に縁があるではないけれど、役の行者のご縁でせめて何日かでも、と下手な語呂合わせ。
白島といえばそうや母親の実家、従兄弟の明石金助のところで腹ごしらえしてから山に登ろう、とやって来たんですなぁ。

明石金助にとっては道を歩いてて、突然牛に舐められたようなエエ迷惑。
自分の食い物にも困ってるのに、底なし沼みたいな胃袋の佐太郎に食わせる物があるもんか。
伯父の葬式に香川に行った時、凄まじいまでの食いっ振りを目の当たりにしたのは何年前やったろう。

食い物が瞬時に消えてゆく様に、呆気に取られた事を思い出したら貧血を起こしそうになった。
伯母から愚痴混じりに旅が多いとは聞いたけど、まさか此処へ来るとは・・・。
他人の空似と思いたいけど、あの姿は間違い無い。

そうかというて、訪ねて来る用事が有る筈無いから、偶然通りかかったんやろ。
偶然にしても、何にもこんな山裾へ、わざわざ来る事は無いやろうに。
いずれにしても、今は自分のことで精一杯、係わり合いになっては一大事、目を合わさんようにしょう。

気付くなよ、早う行け、と俯いてると妙に目の前が暗うなった。
目を合わさんどころやない、目の前に多田佐太郎が仁王立ちになってるのやがな。
いや山伏だけに不動立ちか?そんな事はどうでもエエけれど、これは困った驚いた。

「金助!元気か?久し振りやのぉ。喜べ雨降らしに来たったぞ。何やねん、その辛気臭い顔は、雨を降らして欲しないんかい?そんな事より腹が減った、先ずは何ぞ食わせてくれるか。」
思わず立ち上がったらホンマに貧血か熱中症か、クラッとよろめいた。

「オイ大丈夫か?」と愛想笑の積もりか、ニタ~と歯を剥いた其の顔は、恐ろしいやら気色が悪いやら。

さて、「起承転結」が「起章転欠=書き始めたものの、話は一向に展開せず尻切れトンボ」となりそう。
こうなっては無理にでも次回は「承」にせなイカン、「承」で勢いがついたら「転」は何とかなるやろう。
一番の問題が「結」やけれど、そんな先の事は今から考えてたところで、いざとなったら忘れてしまう。
しかし、この話を早いこと片付けんと、「気紛れ展示場」の「maidoとお散歩」への写真をアップする段取りが悪いんですわ。
何で?てそれはこれからのお楽しみ。


2006/09/19

白姫伝説-00 目次


白姫伝説-03 しつっこい起の巻

2006-09-18 15:16:02 | 支離滅裂-迷想迷夢-白姫伝説

<お断り>
例によらず、難儀な事に記事の内容は部分的に特定の団体や個人と関係あるんですねぇ。
というのは、元ネタとして踏まえているのは、大正十三年(1924年)実際にあった出来事なんですよ。
枝葉の部分には見ていたような虚構・フィクションもございますが、幹は実話でございます。

アレレ?と思い当たられる方があったら貴方の事かもしれません。
大正十三年(1924年)生まれなら今年(2006年)82歳。
主要な登場人物は当時既に成人していたから、存命ならば100歳を超えてるでしょうね。
まさかとは思いますが、記事内容について、ご本人から訂正削除のお申し入れがあった場合は、事の如何に関らず全面的に受諾、可及的速やかに実行します。
ただし、ご本人以外の親族・係累・通りすがり等のお方からの因縁・イチャモンにはお相手しかねますので、前以てお断りして置きます。
</お断り>


大当たりで商売繁盛は結構やけれど、毎回本当に泡を吹いて突っ張らかってたんでは体が保たん。
そうや、目の前で鏡をキラキラ光らされて一日何回もぶっ倒れんでも、芝居をしたらエエのやがな。
元ネタは事前に村の墓場を廻って、戦死者の碑文を見たら簡単に集まる。
用意した碑文のメモを参考に、几帳紛いの陰に隠れて交霊の真似事をしよう、となったんですなぁ。

しかし、そうなると別に佐太郎が居らんでも出来るやないか。
二人組みより一人の方が、経費削減手取り倍増とマネジャー役の拝み屋は考えた。
行きがけの駄賃に有り金は勿論掻っ攫って、前受け、寸借り何もかも、佐太郎後始末を押し付けて逃げてしもた。

後に置いてきぼりを食った佐太郎は、攻め立てられてワヤクチャ。
そのショックでか、キラキラ光る物を見てもあんまり引繰り返らんようになった。
その代りと言えば何やけど、桁外れの大飯喰らいになったのは、果たして良かったのか悪かったのか。

さて、大川郡といえば、お大師様の八十八ヶ所霊場まいり結願の地。
八十八番医王山大窪寺のお膝元で薬師如来はお友達。
「おんころころせんだりまとうぎそわか」を子守唄に育って、弘法大師さんとは縁が深い。
そんな結構な所なら「空海命、南無大師遍照金剛」と言うてりゃぁエエ物を、何処にも変わり者はおるもんです。

修行というよりは役の行者ファン旅行同好会気分の大峰講がありまして、まんがエエやら悪いやら、この講の先達が伯父さん。
さすがに空海さんの真言宗の縄張りだけに、天台宗の聖護院ではなく醍醐寺を本山とする当山派。
果たして正式な修行をして装束を許されたのか、大峰講を取り纏めているので大目に見てもらったのか、その辺は定かではない。

その伯父さんもさすがに年で、幾ら長年お山へ参って慣れているとはいえ、最近は足腰がチトつらい。
この大峰講、お山で修行するより、帰り途の洞川、龍神での修行が楽しみ。
どうみても講仲間には、先達の後継ぎに出来そうなのは見当たらん。
さてどうしたもんかと思案していた所、一応五体満足の甥っ子がブラブラしてるが目についた。

それに妹に聞けば、粗雑ながら何やら霊感らしき物もチラッとあるそうな。
先ずは使い物になるかどうか、一度お山に連れて行ってからと、とりあえずは講にゴマメの参加。
タダで連れて行ってやる代わりに、皆さんの荷物運搬を一手引き受けするか?と聞けばハイハイと二つ返事で承知。

我甥とはいえ、さすがに本山に何の断りも無く突然山伏の格好をさせるのは具合が悪い。
白装束に草鞋がけ大荷物を風呂敷包みにして背ったり負い、尻絡げをしたところは亡者の夜逃げ。

どころがこの佐太郎、大峰参りで大活躍。
へたばった同行者を風呂敷包みの上に引っ担いで、スタスタと金峯山(山上ヶ岳)の山道を歩く。
度はずれた大メシを食うのだけが珠に瑕ではあるけれど、味はもとより内容品質に一向に無頓着やからまぁエエか。

講中の皆さんもゴチャゴチャした荷物を運んでもらえて大助かり。
いざとなればおんぶして貰えると思えば心丈夫で大安心。
好評の内に大川郡に帰ってくれば、顔見知りになった講中から馬力があるのを見込んでの手伝い依頼で大忙し。

いや、エエ甥子さんや、と誉められて気を良くした伯父さん、つい魔が差したかその気になった。
費用は講中が奉加帳を回してくれ、衣装だけは新調、法螺貝、独鈷、錫状等は伯父さんネットワークでの中古貰い物。
醍醐寺三宝院で得度をさせて、何処でどうしたのか、山伏仮免装束着用の黙認を取り付けた。

護摩刀は母親が仏壇の奥から出してきた道中差、見事なナマクラ粗末な拵え。
先祖の誰かがお伊勢参りにでも差して行ったか、竹光やなしに本身が入っていただけでも儲け物。
偽山伏ではないけれど、大きな顔で醍醐寺三宝院をノシ歩けるわけでもない、少々微妙。

微妙でも何でも、誰に似たのか図体がでかいから、修験者の装束をつけると中身はともかく見た目が立派。
先達の伯父さんのカラス天狗の一夜干のような、貧相な修験者姿とエライ違いの押し出しの良さ。
この先達さんとなら、いかにお山が荒れようとも心丈夫と思うのは大きな間違い。

立派なのは見た目だけで、一応得度はしたけれど、金峯山(山上ヶ岳)葛城山どころか天保山での初級コースすら受けてない。
去年講中とお山参りをしたけれど、メシの量が少なかった事以外は綺麗サッパリ何にも覚えていないという潔さ。
始覚、本覚、修験道の何たるやどころか、大峰山の道も知らにゃぁ、法螺貝さえ吹けん。

ま、しかし伯父さんの後ろを付いて廻っているうちに、習うより慣れか、護摩を焚いて祈祷の真似事も出来るようになった。
祈祷の後の振舞で腹いっぱい飯が食えるのが何よりの楽しみ。
「本来修験者は在家の修行者や、修行の場はお山にあり」と利いた風な事を言うてる割りには、山に篭もろうとせんのは何で?

しかし、人間何か取り得はあるもので、でかい図体の割りには腰が軽い。
仮に旅先で揉め事に出くわしても、ヌッと目の前に立たれると押し出しだけで相手がビビッてしまう。
運悪く気の強いのに出くわしても、いざとなれば泡を吹いて白目をむいて見せると、相手は大抵度肝を抜かれる。

この秘密兵器、しばらくしたら自力更生、何事もなかったように元気になるから、繰り返し使えて経済的。
大峰講以外の旅でも連れてゆけば便利安心この上なし、用心棒兼荷物持ちで旅行付き添い。
見よう見真似の加持祈祷に加えて、万(ヨロズ)手伝い承り、飯さえ食えれば言う事なし。


2006/09/18

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