① 米国の衛星打ち上げ会社オービタル・サイエンシズは28日(日本時間29日)、国際宇宙ステーションに物資を運ぶ無人補給機「シグナス」(直径約3メートル、長さ約5メートル)を、米バージニア州にある米航空宇宙局(NASA)のワロップス飛行施設から打ち上げたが、ロケットが直後に爆発、発射場に落下して炎上し、打ち上げは失敗した。
NASAによるとけが人はなく、被害は発射場の周辺に限られる。オービタル社は「破滅的な失敗だ」として調査チームを設置し原因究明を始めた。(共同)
米無人ロケットが爆発
② 打ち上げに失敗した無人補給機「シグナス」には、千葉工業大惑星探査研究センターの流星観測カメラ「メテオ」が搭載されていた。発射場では、開発に携わった教員ら5人が打ち上げを見守ったが、目の前で起きたロケット爆発に、衝撃を隠せない様子だった。
メテオは国際宇宙ステーション(ISS)の米国実験棟に設置され、2年間、流星を観測する予定だった。同センターの荒井朋子・上席研究員は「1年半かけてカメラを開発してきた。あぜんとしている」。松井孝典所長は「観測は多少遅れることになるが、カメラの予備機を早く整備し、早期の打ち上げを待ちたい」と話した。シグナスには、日本実験棟「きぼう」の船外に取り付けて実験を行うためのアンテナ用素材なども搭載されていた。
③ 千葉工業大学惑星探査研究センターでは、国際宇宙ステーション(ISS)から超高感度CMOSカラ―ハイビジョンカメラにより流星の長期連続観測を行う「メテオ」プロジェクトをNASA,The Center for the Advancement of Science in Space (CASIS)及びSouthwestResearch Institute(SwRI)と協力して2012年から進めてきました。米国バージニア州NASAワロップス飛行施設より、オービタル・サイエンシズ社(OrbitalSciences Corporation)のシグナス補給船運用3号機(Orb-3)に搭載され、同社で開発したアンタレスロケットで打上げられる予定。(打ち上げ失敗)
ISS流星観測プロジェクト
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【ワシントン時事】米民間宇宙企業オービタル・サイエンシズ社のロケット打ち上げ失敗により、米国が整えた国際宇宙ステーション(ISS)への民間企業による物資輸送体制は大きな試練にさらされることになった。ISSへの影響は限定的となる見込みだが、失敗の原因を究明し、対策を講じて打ち上げを再開するまでには長い時間がかかるとみられる。
米航空宇宙局(NASA)は2011年のスペースシャトル退役後、ISSへの物資運搬を米民間宇宙企業へ委託した。スペースX社に続き、オービタル社は今年1月、本格的な商業ベースの物資搬送を開始。2社による輸送体制が確立してから1年もたたずに今回の事故に見舞われた。
事故後に記者会見したオービタル社幹部は、打ち上げ再開までの期間について「どれくらいかかるか分からない」と述べた。原因究明のための調査では、現場の残骸の一つ一つを詳しく検証し、打ち上げ時に記録したデータや映像を解析する必要がある。
南部バージニア州ワロップスにある打ち上げ施設もロケットの爆発で相当な損傷を受けたとみられる。オービタル社幹部によれば、同社のロケット打ち上げに使えるのはこの施設だけで、再開には施設の復旧も不可欠となる。
一方、NASA当局者によると、ISSの補給物資は4~6カ月間の蓄えがあり、当面の懸念はない。ISSへの補給はロシアの無人宇宙船でも実施している。ただ、今回の爆発事故によって千葉工業大の観測カメラなど各種の実験機器と共に、いずれは交換が必要な予備の部品も失われたという。