あれだけ賑やかだったお祭り騒ぎのような公演、
そして初めてのソロ主役としての公演が一昔前に感じる今日この頃。
各メンバー達はそれぞれが新たな道へ進んでいます。
かくいう私も12月にある劇団の本公演稽古の真っ最中。
宮沢賢二の銀河鉄道の夜をモチーフとした、疾走人魚とは大きく違った幻想的・情緒的な作品です。
で、公演後の感想として
「今回の公演で印象に残った台詞はなんですか?」という質問がありました。
公演時間は90分でありながら、ハイテンポでスピーディーに進んだこの芝居、
台詞は自分は勿論、他の人のもかなりありますからね。
そうですね…えーと…
えーと…
………
不思議だ、思いつかない。
普通一つの公演には一つぐらい自分のお気に入りの台詞と言うのがあるものです。
それが自分の台詞でなくても。
ところが今回の「疾走人魚」、どれがといわれてパッと出てくるものがないのです。
勿論じっくり考えれば色々挙がると思います。
「不二子ちゃん気取りかババア!」は私のたっての願いで「ちゃん付けで突っ込ませて下さい」とお願いした台詞でしたし、
「面倒なのも全部ひっくるめて別にいいかって思うんだよ」はいい男の第一条件みたいな台詞だと思ってましたし、
その他も理由をつければ色々出てくるとは思います。
しかしすぐには挙がらない。
これは私的にはとても珍しいことなのです。
一体その理由は何なのでしょう…と考えてみたら、意外なところに答えがありました。
「疾走人魚」はいい大人たちが全力で楽しみ、そしてその楽しさをお客様にも共有してもらおうというものがテーマでした。
つまり、ある特定のシーンを見せたいというのではなく、作品全体を楽しんでもらいたい、という作品の雰囲気・空気感が勝負のお芝居だからです。
あれだけバカなことをやっているエンタメ作品に見えて、実はとても繊細なお芝居だからなのです。
こういう作品は全体を楽しんでもらうがために、突出しすぎるシーンや台詞を作らないことはよくあります。
つまり、印象に「残り過ぎる」台詞はあってはいけないのです。
見終わったあとお客様の感想が「○○のシーンがよかった」ではなく、「なんとなく楽しかった」とするために、全ての部分を高いレベルでキープする、実はそんなお芝居でした。
…ということにこうやって書いてて今気付きました。なんてこった!
「不二子ちゃん気取りかババア!」をはじめとするあらゆる突っ込みに全力を注いでいた私ですが、今もう一度やったら全く違うアサクラ像を創るかもしれませんね。
ま、そんな夢に耽るのもまた一興。
そして皆さんの心の中に残った「疾走人魚」は、皆さんの中で新たなストーリーを紡ぎだしていってもらえれば、こんなに素敵なことはありません。
色々な事を学ばせ気付かせてくれた阿佐倉に、そして公演に携わってくれた全ての人たちに、多謝。
男1(アサクラ)役・矢部亮
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