すべてが海で包まれ
歓喜の歌が響く中……
それぞれのドラマが繰り広げられる──
ナカジマは人魚たちに逆らい、波を押し返して阿佐倉たちを助ける。
珠代は阿佐倉の息があることを確かめると、ナカジマに後を託して去る。
「……水は…」
「引いたよ。もうすぐ元の世界に戻るからね。ここもただの稽古場になる」
「あん子は魔女との契約ばなくすために自分ん命絶つつもりばい。お前が生贄になるっちゅう呪いは、あん子が人魚じゃ無くなれば…つまり死ねば消ゆる」
「そっちの世界におるったいね。連れてかんね。」
「戻れんごつなるばい」
あの水槽の中に珠代。
その手にはあのナイフが……
「人魚」熱唱──
♪~♪~つめーたい夜わあああああ!!阿佐倉くん!
「ほら、帰ろう」
「無理。見てわかるでしょ?この中でもあたし全然平気なの!もう人間じゃないの!人魚になっちゃった」
「いいよ別に」
「よくない」
「いいから!」
「人魚になるとかさ…死んで泡になるとかさ…そういうの勝手にさあ…ホント…やめろよ…。やめてよ。…俺置いて、どっか行くのとか、ホント」
「…うん…。ごめん…」
「ヒロシ…その子の手ェ、つないで、離さんごつね。あたしがちーっとだけ世界閉じるの、おくらすけん。別にお前んためじゃなかよ。あんたが選んだ子が何かほっとけんかっただけたい。
大人ん男なら、早う父親になんなっせ。
……子供っちゅうとはよかもんよ」
阿佐倉「ずれが…戻ったんだ」
バンバ「卵たちは…」
阿佐倉「あっちの世界に戻ったんだ。人魚たちも」
常田「タイコも…」
加藤「阿佐倉くんのお母さんも…か」
バンバ「卵たちは大丈夫かな」
加藤「そういやバンバさん、あんた…」
バンバ「ああ…手を貸したよ。なんか…なんとなくだけど」
「掃除してって貰わないと困るよ!こんなぐっちゃぐっちゃにして!」
「稽古場は、来た時よりも、美しく!」
「子供とか…その、将来的にはアレ、だったり、する?」
「へ?…あ…やだ!お母さんに言われたからって」「いやそんなんじゃ!」
「今はまだいいよ。無事に帰れたってだけでとりあえず。」
「でもそんな余裕かましてる年じゃ」
「うっさい!」
そのころ、人魚たちの世界では……ナカジマの裁判が。
「子を思う気持ちは人も人魚も変わらぬもの。よって今回は不問!」
「じゃあこれで裁判ごっこ終わり!」
「他の者への示しがつかないじゃないですか!」
「他のって全部でこんだけしかいないのよアタシら!」
タイコ「卵たち、タマとワカメが見てたの」
ワカメ「うごいてた」
タマ「うごいてたの」
稚魚「うごいてたの…たまご」
サザエ「ほんと…ほんとに…?」
稚魚「うん」
サザエ「バンバさん…」
「…おねえさんに…なるのよ」
「人魚の子…実は、ここにも…いるよ」
「あらっ!」
「タイコさん!ホントに?」
「えへへ!頑張っちゃった」
「えらいっ!」
「バンザーイ!」
──やったやったぁ!
と人魚たちの弾む笑いの中──
明日へ向かう希望に満ち……
おしまい。
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