Journal de Tsurezure

雑多な日常、呟き、小説もUPするかもしれません。

恨んでいたと言われた男の末路

2024-10-02 12:34:55 | オリジナル小説

 彼氏はいるのかなあ、独り言のように呟いた言葉にそばにいた男はいないだろうと断言するように、手にしていた缶コーヒーを飲み干した。
 一ヶ月前、突然、やってきた事務員の女性の事が気になっているようだが、そばにいた男は内心、呆れたように心の中で吐いた。
 おまえみたいな、豚みたいな男、相手にされるわけないだろうと。
 仕事ができても、それだけでは見た目も大事なんだと言いたい。
 だが男は、その言葉を腹の中で毒づいた。
 人は見かけによらないという言葉通り、目の前の男は仕事ができる、それも自分以上に。
 だから、仲良くしているのだ。
 
 社内でも女にモテると思っていた男は、その日、仕事帰りに寄った飲み屋で、そのカップルを見つけて驚いた。
 豚のように太った男、だが、その男と一緒にいるのが、美人なのだ
 なんで、あんな男と思ったが、もしかして金目当てかと思った。
 女は美人局、マッチングアプリの女かもしれない、男から金を引き出そうとしているのかと、そうでなければ不釣り合いだ。
 よし、助けてやるかと思い、二人に近づいた男は声をかけた。
 
 知っている人間に出会ったことで男の顔色は一変したが、女の方は平然としていた。
 女に名前を呼ばれて男は驚いた、自分を知っているようだが、だが、覚えがない、すると同じ会社でしょうと女は笑った。
 事務員の顔を思い出し、別人じゃないかと男は驚いた。
 
 翌日、男は事務員を見つけると声をかけた、よかったら夕食をと声をかけたが、用があるのでと断られてしまった。
 「付き合ってるのかな、あいつと」
 その言葉に女はちらりと男を見ると、軽く首を振った後、男の顔をまじまじと見た後、似てますねと呟いた。
 「あなた、知りあいに似てます」
 「いい男かな」
 「顔はよかったですよ、女性にもモテていました」
 でも、続く言葉を女は飲み込んだようにみえ、男は尋ねた。
 思わず聞き違いかと思ったが、恨まれていたんでしょうという言葉に男はどきりとした。
 最近、その言葉を聞いたからだ。
  
 あなたを恨むわ、不思議なことに言葉だけは覚えていた。

 「その男性、死んだんです」
 はっきりと言われて男は驚いた。
 「でもね、気の毒な事に」
 人違いだったんですと言いながら、女は笑った。
 事務員の女は男の顔をじっと見ながら言った。
 「本当に似ています、もしかして」
 続く言葉を聞きたくなくて男は足早に、その場を立ち去った。
 
 自分にそっくりな男が刺されて亡くなった。
 数日前のニュースです、女の言葉を思い出し、スマホを取り出して調べようとした。
 だが、毎日、色々なニュースがテレビやネットに溢れているのだ簡単には見つからない。
 そうだ、動画サイトならと思って調べようとしたとき、どんとした衝撃に思わず転けてしまった。
 「大丈夫ですか」
 男が自分に声をかけてくる、だが、歩きスマホをしていた自分が悪いのだと言い訳して立ち上がる、ところが。
 相手の男が、小さな声を漏らした。
 「なんで、あ、あんたっっ」
 自分の顔を見て相手は驚いているようだ、何故と思い、声をかけようとした瞬間。
 「おおいっっ、ここだ」
 まるで、自分の存在を知らせようとしているようだ。
 「ここにいる、あの男だ」
 周りの人間が振り返ると男を見た、まるで、そう。

 ビルの中の喫茶店で珈琲を飲んでいるのは気分を落ち着けるためだ。一体、どういうことだ、自分は何もしていない、それなのに。
 あのとき、通行人達が一斉に自分を見たのだ。
 自分は何もしていない、恨まれるようなことなど。

 あなたを恨む、不意に思い出した、何故だと自問自答する。
 
 「ここにいたのか」
 突然、声をかけられてかおょをあげると見知らぬ男が自分を見下ろしていた。
 初めて見る顔だ、相手は自分の向かいの席に座ると。
 「恨まれているよな、君は」
 「な、なんだ、突然」
 いきなり、失礼だろう、だが、男は笑いながら、それは自分じゃないのかと返してきた。
 「普段から人の事を見下していただろう、豚やろうって、そのくせ、仕事になると助けてくれと寄ってくる」
 笑いながら言われて男は相手の顔をじっと見た。
 まさか、この男、いいや、そんな筈はないと思った。
 だが、男が口を開くたびに事実だと認めざるえない。
 「彼女は君を恨んでいたよ、随分と」
 「何を言って、るんだ」
 女性に気のあるふりをして恋愛感情を弄ぶ、ひどいねと言われて男は何か言いたげな顔になった。
 だが、言葉が出てこない。
 「事務員ばかりを狙うのは金目当てかい、君のほうが」
 美人局じゃないかと言われて男は席を立とうとした、だが、できなかった。
 見られている、視線に気づいたのだ。
 少し離れたところから一人の女が自分を見ている、このとき思い出した。
 平凡だが、事務員の顔は似ているのだ。
 
 「どうするんだ、僕になにをしろというんだ」
 ついて来いと言われて案内されたのはアパートの一室だ。
 そこで男は女達の相手をさせられた、普通の男なら悪くはない待遇だろう、だが、女達は男を罵倒した。
 
 取り柄は顔だけ。
 役にも立たない。
 女を馬鹿にしていない。
 
 ベッドの上で拘束されたまま、無理矢理女達に奉仕させられた後、今度は男達の相手だ。
 殴られ、蹴られて、暴力だけではない、セックスの相手もさせられた。
 男達は女性達の妻や愛人だ、抵抗使用にも体力は限界だ。
 そうして、男は自宅に戻った。

 翌日、出社した男は事務員の女性に声をかけられた。
 顔色がよくないで、すると、太った男が近寄ってきた。
 「どうしてんだ、具合でも悪いのか、女とデートだろ、ほどほどにしろよ」
 しかし、返事ができない。
 わかるのは恨まれた結果、こうなってしまったということだけだ。
 仕返しされたのだ、だが、その事実を現実を、どうやって切り抜ければ良いのか、わからなかった。


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