家畜化の経緯[編集]
馬が家畜化されたと考えられる紀元前4000年という時期は、ヤギ・ブタ・ヒツジ(紀元前8000年頃に家畜化)や、ウシ(紀元前6000年頃に家畜化)に比べると遅い。これは、馬は主にステップ気候の寒冷な降雪地帯の草原に棲息しており、また、ウシ等の反芻動物に比べて消化能力や食性が低く太り難いため、食肉用の家畜としては不適格だったためである。ウクライナの草原地帯に進出した人類は紀元前5000年頃のドニエプル・ドネツ文化期には既に他の地域から連れてきたウシやヒツジを家畜として飼育していたが、この地域は降雪地帯であり、降雪時に雪の下にある草を食べる習性のないこれらの動物は人の助けがなければ飢死してしまうため、家畜として飼養するのは難しかった。ところが、この地域に棲息している馬を見れば、蹄で雪をかきわけて草を食べている。そこで、人類は馬を家畜化する事を思いついたのである。
家畜化された時期[編集]
ウクライナにおける紀元前5000年~紀元前3500年頃の遺跡では、貝塚から食事のゴミと一緒に馬骨が出土する。この事は馬が食用であった事を示している。紀元前5000年~紀元前4700年頃のドニエプル・ドネツ文化期の遺跡では出土した馬骨の量とウシ・ヒツジ等の骨の量から推定すると、馬肉の消費量は全体の肉の約20%に過ぎない。ところが、紀元前4200年~3700年頃に人が居住していたと考えられる、スレドニ・ストグ文化期のデレイフカ遺跡では、馬の肉の消費量は全体の肉の約60%にまで達する。この馬肉の消費量比率の飛躍的な増大は、馬を家畜化し馬肉を大量に供給出来るようになった結果であると考えられ、したがって馬が家畜化された時期は紀元前4000年頃と推測されるのである。
騎乗の起源とする言説