量子コンピューターという思想(その4)
万物は情報である─ドイチの万物の量子コンピューター
4-3, 光子が開く潜象世界(1)
4-3-1・多世界平行宇宙と正反対称歪性平行宇宙
◇D ドイチの懐中電灯物語に始まる
「川の流れ」を眺めてミクロとマクロの深いつながりを洞察しようという、禅僧のような D ドイチ の立場は ”(その4)-2-2 モンスタームーンシャインとミクロ ブラックホール ” でじっくりと見ました。そうなんです、平行宇宙を語ろうとすると、どこか禅問答でもしているような空気が流れてきます。
そもそも「潜象」という用語を私はこれまでできる限り控えてきたつもりなのです。その理由は、まず馴染みのない言葉であるとともに、これを「物性物理」を語る言葉とするには禅問答ではないけれども、かなり異質なイメージを与えかねないからなのです。アインシュタインじゃないけど「神はサイコロを振らない」と言われるわけです。
パウリは1948年の春に、虚数が登場する夢を見ました、パウリは彼自身が名付けた「背景物理」とスペクトル線の微細構造の物性とを結びつける構想を膨らませていったのです。しかし時代を飛び越えた発想をもった背景物理は、その基盤がユング(Carl Gustav Jung)との親密な関係から必然的に神秘主義的な傾向を持っていました。こんな事情から、潜象と親和性のある背景物理という斬新なアイデアはこの時代には物理学の世界では認められることはありませんでした。
さて、この「背景物理」と同じ発想に基づく「潜象」ですが、私はこの用語を物理用語として使ってゆくにあたって、最も良いガイドを果たしてくれるのが D ドイチ であると考えているのです。それが禅問答 ”川の流れ” でした。さて、今度は D ドイチ が挑戦してくれるのは、懐中電灯つまりハンドライトの話なのです。これこそ平行宇宙への入り口だとD ドイチは強調します。
D ドイチの話にはパウリの背景物理のような神秘主義的なものは全くありません。また後ほど出てくる「ベルの不等式」など量子論の基礎的な研究がパウリの時代から飛躍的に前進しましたので、エヴェレット(Hugh Everett)が受けたような多世界平行宇宙論への専門家からの拒否反応も今ではすっかり払拭されました。
わたしは今こそ潜象という言葉を表面に出すことができると考えています。W パウリの「背景」という概念と「潜象」とは内容はかなり違いますが、位置づけからすればほぼ同じものです。つまり、現象として認識できる存在の「背後 → 背景」に重大な別の存在がある、じつはこの背後の存在こそこの宇宙に対して決定的な支配力を持っている、とでも説明出来る壮大なものなのです。
D ドイチの懐中電灯物語は光の微細構造の話になります。この点で、スペクトル線の微細構造からヒントを得たW パウリの話と出発点は似たものです。D ドイチにおける主役は量子光学と「光子の影」つまり → 「影=見えるものの背後=背景」の存在ですから、ほぼ W パウリと筋立ては同じものになってくるわけです。
” 光子の2重スリットの実験は量子の世界の不思議を劇的に表している” とD ドイチは言う。ここで量子の不思議というものは、はもちろん”量子コヒーレンス(重ね合わせ)と量子エンタングルメント(テレポーテーション)”のことを指しているわけです。翻って考えれば、光にはアインシュタインの思考実験があったわけです。懐中電灯物語風に言えば、相対性理論は光の中から生まれたと言えるのです。
こうした事情から、光はとても特別な存在であることが想像されることでしょう。そして、まさしく光はあらゆる物質の中でも特別な物性をもった存在であることが解ってきます。それはこれからご紹介する、Kamu Number Theoryが解明した光量子の前駆状態である4個の分身が現象としての光に随伴していることに観られます。
◇D ドイチが発見した平行宇宙への扉
光が特別な物性をもった存在である理由は、Kamu Number Theoryで見ると、光は潜象から現象へと遷移した最初の物質であることから示されているのです。光と同じ仲間はボース粒子群の中のゲージ粒子の中に存在しています。しかし、残念ながら人間の知覚に反応できるものは光子の他には重力を除いて存在しないのです。なお、重力子は発生の遷移過程が光のユニタリー過程と源泉は同じなのですが、一方で多少光子とは異なりますので、しばらくは触れないことにいたします。
さて、D ドイチが強調する ” 平行宇宙への入り口 ” が光子であるという主張を肯定的に頷ける理由がここ「見えるものの背後」の存在にあるのです。懐中電灯から流れてくる光線は100兆個の光子からなる束として目の中に飛び込んでくるのです。つまり川の流れと同じ、連続した光子流だと知覚するのが私達の『現象世界知覚』というものなのです。
一個の光子をまな板の上に乗せて料理することが出来る。これは最新の量子光学の実験技術力の高さによるのですが、一個の光子がスリットを通過して投影される面に縞々のスペクトルを描き出すという驚異的な実験が可能になりました。これこそ現代の実験物理学の実力の凄さです。これなくして、D ドイチの議論は進展できないのです。つまり光子の数は問題ではない、光子は単独でスリットを通過すると、スクリーンに干渉縞として波動と同じ痕跡を残してしまうという驚くべき現実。
日経サイエンスの2013年7月号では『揺らぐ(現象とその背後との)境界 非実在(潜象)が動かす実在』と題して ” 量子光学者のアスペ(Alain Aspect)が実際に単一光子を使って実験したところ,「ベルの不等式」は破られたという結論に到達したのです。(括弧内は私による補足)
ミクロな量子の世界では,測らなかった物理量が測ったら出てきたはずの値を持つと思ってはいけないのだ ” と科学雑誌としてはかなりセンセーショナルに記しました。どこがセンセーショナルなのか?、、それは、私達の『現象知覚世界』は量子の世界では通用しないということが実験によって確かめられたということなのです。
この記事で「ベルの不等式」と記しているのもは、『現象=現実』の世界と『量子=潜象』の世界は同じものというアインシュタインの主張を数式に置き換えたもののことです。マクロの現実とミクロの量子の世界は同質でひと続きで一体のものである、というのがアインシュタインの主張です。ところが、アスペの実験(1981年〜2007年)は、私達の現実である現象界は現象背後の量子界もしくは潜象界とは別の世界であると考える必要が生まれたということになりました。これが、2013年7月号の記事がセンセーショナルに記している内容なのです。
この記事の著者である谷村省吾の解説には更にもっと新たな証明が加わっていました。それは、「ベルの不等式の破れを代数的量子論で分析する」と題されるもので、実験抜きでも理論的に証明できるというものです。いよいよ来たか!、、谷村の証明は簡単に言ってしまえば「虚数」を使えばいいというものです。
(谷村省吾論文:https://www.nikkei-science.net/uploads/201307_036free.pdf)
例えば、(Sの2乘) =(4 ± 4) = 〈8または0)という計算が量子の世界では成立できる。これは(1 + 1 = √2 )ともなりうる虚数世界がここでは通用するというのだ。これは、潜象世界を虚数世界と同定しているKamu Number Theoryと一致したものになっているのだ。
少し見通しを良くするために、これから描くことになる現象背後の潜象界に至る全体的な流れを、背後の方から簡単にたどってみます。『非実在=光子の影=光子の背景』 → 『潜象=虚数』 → 『虚数^2=1=現象前駆光子』、へという遷移プロセスを描くこととなります。ここで、「前駆光子」と名付けているものが「光量子」として観測にかかってくる物性に成長するのには、潜象段階からKamu次元で数兆回に渡る重合を5回行い、別の物性へと5回もの遷移を重ね、光量子に成長し遷移する必要があるからなのです。
こうして、光子が現象世界と現象背後の世界とが形成する” 平行宇宙への扉 ”であるという考え方は「ベルの不等式の破綻」という実験結果からついに決定的になってきました。もう一つの宇宙、あるいはエベレットが主張したように、もっと多くの背後宇宙が現象宇宙に対して「2つのものが重ね合わせ⇔コヒーレント」しながら「エンタングルメント⇔平行的に共時で共役的」に存在していると認めざるを得ないのです。
◇4光子随伴から光量子へ
これまで物理学や私達の常識では光子という物性を固定的に一つの物性として見てきました。しかし、Kamu Number Theoryが明らかにしたことによると、そうではありませんでした。光子は「潜象物性から現象物性へと遷移し、”成長しながら進化”する素粒子」のひとつなのです。つまり、いきなり光子が現れ、光子が電子に変遷するというこれまでの固定したイメージは変えなければならないのです。
これを光子の脱皮、そして物理学の脱皮と表現したのは相似象の創始者である楢崎皐月でした。光子を生き物のように見るおもしろい表現ですが、実は光子も脱皮するということがその成長と進化を見ると解ります。潜象の世界では物と心の間の距離は近いと見ています。これはペンロースのところで出てきたコンピュータと心の間に横たわる課題でもありました。
光子は最初から光子ではありません。また、観測される光子はかなり成長した光量子として把握するべき別種なのです。この区別をKamu Number Theoryでは「前駆光子;Small Hi 」から発生し成長した「光;Hikari」、ここから「光量子;Hikarimi」へ、さらに「電磁波;Fukiho」へと遷移して成長を続けます。
ここはD ドイチの記述とは食い違うところの生まれる基盤になっているのですが、もともと前駆光子はE8が正反4個1組でユニタリ行列を形成して組織されているものです。従ってスリットを通過するときの光量子の状態は (sHi-4個1組) の”前駆光子=〈Hi〉”が ” 光量子=〈Hi(11),Hi(12),Hi(21),Hi(22)〉 ” の状態で通過することになります。
これだけではすぐには判り難いかも知れないのですが、先程の図式を少し変えて繰り返しますが『非実在=光子の影』 → 『潜象=虚数=前駆潜象光子』 → 『虚数^2=1=前駆現象光子』 → 『現象光量子=〈Hi(11),Hi(12),Hi(21),Hi(22)〉 』という遷移過程の関与が単一光子がスリットを通過しているときの状態ということになるのです。
ここで、D ドイチは「現象光量子」が 「4分身を随伴」していることを、彼らしい表現で記述しています。つまり、現象光子が「影の光子」を「随行者」としているとこの状況を次のように正確に述べています。”光子が4本のスリットのうちの1本を通り抜けるとき、いくつか(大群)の影の随行者が他の3本のスリットを通過するだけである” と記しています。D ドイッチュの直感力の確かさを実感出来るところだと思います。
ここからD ドイチは一気に(大群)多宇宙論へと突き進んでゆくのです。しかし、Kamu Number Theoryは、光子が 4分身を随伴していても、4つの平行世界があると見るような多世界平行性は考えません。あくまでも潜象宇宙と現象宇宙からなる ”潜象と現象の平行宇宙” にとどまるのです。
(引用は:世界の究極理論は存在するか―多宇宙理論から見た生命、進化、時間;D ドイチ 1999.からです)
◇宇宙の始元と絶対数学
ここで一度、D ドイチの多宇宙理論からKamu Number Theoryの「正反対称歪性平行宇宙」へ移りたいのです。同じ平行宇宙を謳っていても多宇宙を主張しない理由は「(単一の)始元」についての考え方がドイチとは大きく異なるからです。
ドイチは「コンストラクター理論」を2012年に発表しました。そこでは、科学の全領域のメタ理論として考えられた抽象理論には、始元の問題は古典理論の範疇に属する問題なので、積極的な意味で無視してよい課題であると主張しています。
一方、Kamu Number Theoryでは現象に於ける始元はD ドイチと同じく存在しないと考えています。しかし、ここからが違うのですが、「始元」はあくまでも潜象の中の問題として考えなければならないこととして重要視します。このことが一元体理論(Field with one Element)の中に全体の基礎が展開されてゆく起動力になってゆくのです。
さて、この一元体理論ですが、この宇宙にはたった一つの始元しかないという理論のことです。数学では ” Field with one Element ” と呼んでいます。これは最先端の数学です、最高に抽象的で、かつ広範囲の数学教養を総動員するものです。素人にもわかるように図版入りで解説してくれる黒川信重の著書がなかったら私には近づくこともできなかったでしょう。
整数論で世界最高のレベルにある黒川信重は、この数学を”絶対数学”と呼んでいます。つまり万物の数学理論であるという見通しを黒川は持ったからこのように呼んだのだと思います。Field with one Elementにおける ”Field” は代数学における”体”のことです。黒川信重は抽象数学と素粒子論とのあいだには”深い相似関係”があることを著書の中で図版入りで指摘しています。黒川信重は数学の一元体理論と物理の大統一理論との深い関係をつなぐものの存在を見出しています。
ここで、「数学モデルの健全性」についての議論を思い起こしてください。このブログの ” 4-1-1(前編)-1,数学モデルの理不尽なまでの有効性” で示すことができたのは「数学の理不尽なまでの有効性」ということでした。この信頼観を黒川信重は基盤にして絶対数学と物質の大統一理論 との間の相似象を示します。
Kamu Number Theoryではこの「代数的体」を「Kamu」と呼んでいます、ここから「数」との関わりが始まっています。そして「虚数」に到達するまでの長い遷移過程についてはすでに記しましたのでここでは繰り返しません。もともと相似象は数の物理を追求して来ました。そして虚数から整数1の生成を示すことができました。相似象の創始者の楢崎皐月は数1と数2から10進法を構築出来ると述べています。
◇進化し遷移する光量子と4光子随伴
始元の問題はすでにこのブログの ”量子コンピューターという思想(その3)─万物は回転する・ペンローズと宇宙大航海時代の羅針盤─(その3)- 2 万物のエントロピー増大、故に万物には始元が存在する” 等でご紹介いたしました。そこでは、まだブラックホールが潜象系だとは書きませんでした。そして今、光の問題を展開してゆく過程でブラックホールもまた光と同じく「潜象随伴系」を従えていることが光子と重力子との相似象として成り立つことをイメージしておきたいと思います。
なお、Kamu Number Theoryでは「重力子」という概念は存在しません。というのは、重力という概念は人間が感じ取る「知覚的な重さ」に基づいて編み出された人間主義の概念だからです。ここが「光」との大きな違いになります。重さはあくまでも地球上のものを基準として編み出されたものです。
宇宙では「向力=引力」と「斥力=反引力」、そしてKamu Number Theory独特のものとして「番力=マクロ結合力」の三種が重力とよく似た超遠隔性の力の物性として示しています。これも光子の脱皮と同じ意味で重力の脱皮と言うべきでしょう。
Gravityという用語も「重力」というより「引力」という意味で使われているようですから「引力子」という訳語が物理学としては正しいのだと思います。しかし、慣例として重力子という名称が使われますが、その内容は「引力の素粒子」として理解する必要があります。私も慣例に従って重力子という言葉は適宜使ってゆきますが。
遠隔性というのはファインマンのところで知ることとなった「遠隔作用」の物性です。これは、ブログの(その2)3 ”万物は粒子である” ─ファインマンの青春の夢─の中で、「存在するものは、粒子が相互に”遠隔的に作用”する世界であるとファインマンは考えた」。これは、「何ものかを粒子相互がやりとりすることが万物は粒子であるという宇宙観の根本であると設定したからだ」とファンマンは記しています。
今振り返れば、Kamu Number Theoryにおける三種の遠隔力である「向力=+Mukahi」と「斥力=−Mukahi」そして「番力=Tsugahi」の存在を、ファインマンはすでに予観していたのかも知れないと私は感じるのです。万物は粒子であるという思想はこのような既成概念の重力を根本から見直す深遠な物性観を捉えていたと言えます。
ファインマンもD ドイチに劣らず光子の謎には深い関心を持っていました。有名な”ファインマン・ダイアグラム”は「想像を超える準光子」の存在を前提に描くことができました。ファインマンはこの光子を ”仮想光子” としてダイアグラムの中に設定しました。ファインマン・ダイアグラムは進化する光子の未来像を想定していたかのように感じさせます。
実際、ファインマン・ダイアグラムには多くの謎が隠されています、その一つが時間の問題です。時間を遡って進行する反粒子はこのダイアグラムの目立った特徴と言われています。Kamu Number Theoryでは光子の段階では時間は独立したものとしては存在しないのです。つまり、とても不思議なことですが時間は光子の中に眠ったまま存在しているのです。従って、いま時間には触れないことといたします。
◇正反歪性平行宇宙と保型形式
Kamu Number Theoryで取り上げる〈正反・対称性・歪性〉から生まれる遷移図式を一体として組織化する構造とはどんなものなのでしょうか?…私が行ったのは図形と図式からの探求でした。
まず、一元体の始元は正反の2つの粒子に別れて遷移します。その正反は一つのものから生成された正反なのですから当然ながら対称性を維持していなければならないはずです。ところが、遷移の過程における数兆回にも及ぶ重合の履歴を考えると、その内部まで全く同じものであるはずはないのです。
この正反を陰陽と表現するとイメージしやすいことと思います。しかし、Kamu遷移図式はもっと抽象的な意味合いを持っています。それが正の〈Ma〉と反の〈Ka〉となります。これは正反共役関係を陰陽よりも強く持っています。次の段階ではいずれも正反の遷移が繰り返されますので、いよいよ複雑化してゆきます。
私は、ファインマンがダイアグラムを構想しているときの立位がこのようなものだったのではないかと想像しました。筋道は分かっている、しかしそれを具体的な図式にするには想定以外のものを組み込まなければならないのです。こうした難しい条件を満足出来る図式を見つけることは実際大変なことでした。
そんなときに現れたのが”カスプ型の保型形式”の図版でした。見事な図形でした、これならそのものズバリ正反歪性平行宇宙を表現出来るという確信がすぐに生まれました。永いことかけてまとめた ”Kamu正反遷移図式” は私の前にありました、これとカスプ型の保型形式の図版とを重ね合わせて点検を進めた結果は(図版1及び図版2)のようなものになりました。
(図版1)https://kamu-number.com/pdf/axio/113cuspidal.pdf
(図版2)https://kamu-number.com/pdf/axio/114clabiyau.pdf
なお「カスプ型」とは、尖点型という意味合いですが、ファインマンダイアグラムに描かれている図形の三角部分を構成するところがカスプと呼ばれる部分に当たります。これは離散型とか量子化あるいは整数化、衝突散乱型とも言われます。保型関数では整数論との深い関係を生み出す形式になります。
このカスプ型によって仕上がった遷移図式に、公理系を重ねてゆくことがかなりスムーズに進行しました。こうして最初の一個の粒子から万物が生成遷移する過程の全体像がダイアグラムとしてが出来上がったのです。ここからは物理との対応を確認する作業となりました。
さて、こうして進行する図式づくりは次々と最先端の研究と符合する場面に遭遇することとなりました。その一つがこれから見る量子光学理論と「4光子随伴」が手がかりとなる平行宇宙世界への扉の存在とその探求です。それにはこの平行扉のモデルを見る必要があります。量子光学の世界から提供される平行宇宙への扉の数学モデル化です。
翻って、平行宇宙とは正と反がお互いに「重ね合わせ⇔コヒーレント」しながら「エンタングルメント⇔共役的に共時的な平行性」という物理的な状態のことです。従ってユングの「シンクロニシティ」という概念は「正=現象」と「反=背景=潜象」が平行な構造を構成していることを的確に表現していたと言えるわけです。
2013年は平行宇宙元年とでも言うべき年になりました。量子論研究100年の成果が高度な実験技術と代数的量子論(量子力学基礎論)によって完全に決定したからです。量子光学と基礎論が平行宇宙論の先進性を証明してくれました。こうした新たな状況がこの2013年に始まったと私は考えるのです。平行宇宙論は永い成熟期間を経てようやく元年を迎えた今、光子が脱皮する姿を1970年に解明した相似象の先進性を改めて知ることとなったのです。
†
次回は、D ドイチが発見した平行宇宙への扉を数学モデル化できないかを相似象とKamu Number Theoryから探求したいと思います。その候補として ”コヒーレント多様体SU(1,1)/U(1)” を遷移図式及び図版とともに見てゆきたいと思います。
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Kamu Number Theory
https://kamu-number.com/
copyrght © 2021.Allright Rserved Masaki Yoshino
万物は情報である─ドイチの万物の量子コンピューター
4-3, 光子が開く潜象世界(1)
4-3-1・多世界平行宇宙と正反対称歪性平行宇宙
◇D ドイチの懐中電灯物語に始まる
「川の流れ」を眺めてミクロとマクロの深いつながりを洞察しようという、禅僧のような D ドイチ の立場は ”(その4)-2-2 モンスタームーンシャインとミクロ ブラックホール ” でじっくりと見ました。そうなんです、平行宇宙を語ろうとすると、どこか禅問答でもしているような空気が流れてきます。
そもそも「潜象」という用語を私はこれまでできる限り控えてきたつもりなのです。その理由は、まず馴染みのない言葉であるとともに、これを「物性物理」を語る言葉とするには禅問答ではないけれども、かなり異質なイメージを与えかねないからなのです。アインシュタインじゃないけど「神はサイコロを振らない」と言われるわけです。
パウリは1948年の春に、虚数が登場する夢を見ました、パウリは彼自身が名付けた「背景物理」とスペクトル線の微細構造の物性とを結びつける構想を膨らませていったのです。しかし時代を飛び越えた発想をもった背景物理は、その基盤がユング(Carl Gustav Jung)との親密な関係から必然的に神秘主義的な傾向を持っていました。こんな事情から、潜象と親和性のある背景物理という斬新なアイデアはこの時代には物理学の世界では認められることはありませんでした。
さて、この「背景物理」と同じ発想に基づく「潜象」ですが、私はこの用語を物理用語として使ってゆくにあたって、最も良いガイドを果たしてくれるのが D ドイチ であると考えているのです。それが禅問答 ”川の流れ” でした。さて、今度は D ドイチ が挑戦してくれるのは、懐中電灯つまりハンドライトの話なのです。これこそ平行宇宙への入り口だとD ドイチは強調します。
D ドイチの話にはパウリの背景物理のような神秘主義的なものは全くありません。また後ほど出てくる「ベルの不等式」など量子論の基礎的な研究がパウリの時代から飛躍的に前進しましたので、エヴェレット(Hugh Everett)が受けたような多世界平行宇宙論への専門家からの拒否反応も今ではすっかり払拭されました。
わたしは今こそ潜象という言葉を表面に出すことができると考えています。W パウリの「背景」という概念と「潜象」とは内容はかなり違いますが、位置づけからすればほぼ同じものです。つまり、現象として認識できる存在の「背後 → 背景」に重大な別の存在がある、じつはこの背後の存在こそこの宇宙に対して決定的な支配力を持っている、とでも説明出来る壮大なものなのです。
D ドイチの懐中電灯物語は光の微細構造の話になります。この点で、スペクトル線の微細構造からヒントを得たW パウリの話と出発点は似たものです。D ドイチにおける主役は量子光学と「光子の影」つまり → 「影=見えるものの背後=背景」の存在ですから、ほぼ W パウリと筋立ては同じものになってくるわけです。
” 光子の2重スリットの実験は量子の世界の不思議を劇的に表している” とD ドイチは言う。ここで量子の不思議というものは、はもちろん”量子コヒーレンス(重ね合わせ)と量子エンタングルメント(テレポーテーション)”のことを指しているわけです。翻って考えれば、光にはアインシュタインの思考実験があったわけです。懐中電灯物語風に言えば、相対性理論は光の中から生まれたと言えるのです。
こうした事情から、光はとても特別な存在であることが想像されることでしょう。そして、まさしく光はあらゆる物質の中でも特別な物性をもった存在であることが解ってきます。それはこれからご紹介する、Kamu Number Theoryが解明した光量子の前駆状態である4個の分身が現象としての光に随伴していることに観られます。
◇D ドイチが発見した平行宇宙への扉
光が特別な物性をもった存在である理由は、Kamu Number Theoryで見ると、光は潜象から現象へと遷移した最初の物質であることから示されているのです。光と同じ仲間はボース粒子群の中のゲージ粒子の中に存在しています。しかし、残念ながら人間の知覚に反応できるものは光子の他には重力を除いて存在しないのです。なお、重力子は発生の遷移過程が光のユニタリー過程と源泉は同じなのですが、一方で多少光子とは異なりますので、しばらくは触れないことにいたします。
さて、D ドイチが強調する ” 平行宇宙への入り口 ” が光子であるという主張を肯定的に頷ける理由がここ「見えるものの背後」の存在にあるのです。懐中電灯から流れてくる光線は100兆個の光子からなる束として目の中に飛び込んでくるのです。つまり川の流れと同じ、連続した光子流だと知覚するのが私達の『現象世界知覚』というものなのです。
一個の光子をまな板の上に乗せて料理することが出来る。これは最新の量子光学の実験技術力の高さによるのですが、一個の光子がスリットを通過して投影される面に縞々のスペクトルを描き出すという驚異的な実験が可能になりました。これこそ現代の実験物理学の実力の凄さです。これなくして、D ドイチの議論は進展できないのです。つまり光子の数は問題ではない、光子は単独でスリットを通過すると、スクリーンに干渉縞として波動と同じ痕跡を残してしまうという驚くべき現実。
日経サイエンスの2013年7月号では『揺らぐ(現象とその背後との)境界 非実在(潜象)が動かす実在』と題して ” 量子光学者のアスペ(Alain Aspect)が実際に単一光子を使って実験したところ,「ベルの不等式」は破られたという結論に到達したのです。(括弧内は私による補足)
ミクロな量子の世界では,測らなかった物理量が測ったら出てきたはずの値を持つと思ってはいけないのだ ” と科学雑誌としてはかなりセンセーショナルに記しました。どこがセンセーショナルなのか?、、それは、私達の『現象知覚世界』は量子の世界では通用しないということが実験によって確かめられたということなのです。
この記事で「ベルの不等式」と記しているのもは、『現象=現実』の世界と『量子=潜象』の世界は同じものというアインシュタインの主張を数式に置き換えたもののことです。マクロの現実とミクロの量子の世界は同質でひと続きで一体のものである、というのがアインシュタインの主張です。ところが、アスペの実験(1981年〜2007年)は、私達の現実である現象界は現象背後の量子界もしくは潜象界とは別の世界であると考える必要が生まれたということになりました。これが、2013年7月号の記事がセンセーショナルに記している内容なのです。
この記事の著者である谷村省吾の解説には更にもっと新たな証明が加わっていました。それは、「ベルの不等式の破れを代数的量子論で分析する」と題されるもので、実験抜きでも理論的に証明できるというものです。いよいよ来たか!、、谷村の証明は簡単に言ってしまえば「虚数」を使えばいいというものです。
(谷村省吾論文:https://www.nikkei-science.net/uploads/201307_036free.pdf)
例えば、(Sの2乘) =(4 ± 4) = 〈8または0)という計算が量子の世界では成立できる。これは(1 + 1 = √2 )ともなりうる虚数世界がここでは通用するというのだ。これは、潜象世界を虚数世界と同定しているKamu Number Theoryと一致したものになっているのだ。
少し見通しを良くするために、これから描くことになる現象背後の潜象界に至る全体的な流れを、背後の方から簡単にたどってみます。『非実在=光子の影=光子の背景』 → 『潜象=虚数』 → 『虚数^2=1=現象前駆光子』、へという遷移プロセスを描くこととなります。ここで、「前駆光子」と名付けているものが「光量子」として観測にかかってくる物性に成長するのには、潜象段階からKamu次元で数兆回に渡る重合を5回行い、別の物性へと5回もの遷移を重ね、光量子に成長し遷移する必要があるからなのです。
こうして、光子が現象世界と現象背後の世界とが形成する” 平行宇宙への扉 ”であるという考え方は「ベルの不等式の破綻」という実験結果からついに決定的になってきました。もう一つの宇宙、あるいはエベレットが主張したように、もっと多くの背後宇宙が現象宇宙に対して「2つのものが重ね合わせ⇔コヒーレント」しながら「エンタングルメント⇔平行的に共時で共役的」に存在していると認めざるを得ないのです。
◇4光子随伴から光量子へ
これまで物理学や私達の常識では光子という物性を固定的に一つの物性として見てきました。しかし、Kamu Number Theoryが明らかにしたことによると、そうではありませんでした。光子は「潜象物性から現象物性へと遷移し、”成長しながら進化”する素粒子」のひとつなのです。つまり、いきなり光子が現れ、光子が電子に変遷するというこれまでの固定したイメージは変えなければならないのです。
これを光子の脱皮、そして物理学の脱皮と表現したのは相似象の創始者である楢崎皐月でした。光子を生き物のように見るおもしろい表現ですが、実は光子も脱皮するということがその成長と進化を見ると解ります。潜象の世界では物と心の間の距離は近いと見ています。これはペンロースのところで出てきたコンピュータと心の間に横たわる課題でもありました。
光子は最初から光子ではありません。また、観測される光子はかなり成長した光量子として把握するべき別種なのです。この区別をKamu Number Theoryでは「前駆光子;Small Hi 」から発生し成長した「光;Hikari」、ここから「光量子;Hikarimi」へ、さらに「電磁波;Fukiho」へと遷移して成長を続けます。
ここはD ドイチの記述とは食い違うところの生まれる基盤になっているのですが、もともと前駆光子はE8が正反4個1組でユニタリ行列を形成して組織されているものです。従ってスリットを通過するときの光量子の状態は (sHi-4個1組) の”前駆光子=〈Hi〉”が ” 光量子=〈Hi(11),Hi(12),Hi(21),Hi(22)〉 ” の状態で通過することになります。
これだけではすぐには判り難いかも知れないのですが、先程の図式を少し変えて繰り返しますが『非実在=光子の影』 → 『潜象=虚数=前駆潜象光子』 → 『虚数^2=1=前駆現象光子』 → 『現象光量子=〈Hi(11),Hi(12),Hi(21),Hi(22)〉 』という遷移過程の関与が単一光子がスリットを通過しているときの状態ということになるのです。
ここで、D ドイチは「現象光量子」が 「4分身を随伴」していることを、彼らしい表現で記述しています。つまり、現象光子が「影の光子」を「随行者」としているとこの状況を次のように正確に述べています。”光子が4本のスリットのうちの1本を通り抜けるとき、いくつか(大群)の影の随行者が他の3本のスリットを通過するだけである” と記しています。D ドイッチュの直感力の確かさを実感出来るところだと思います。
ここからD ドイチは一気に(大群)多宇宙論へと突き進んでゆくのです。しかし、Kamu Number Theoryは、光子が 4分身を随伴していても、4つの平行世界があると見るような多世界平行性は考えません。あくまでも潜象宇宙と現象宇宙からなる ”潜象と現象の平行宇宙” にとどまるのです。
(引用は:世界の究極理論は存在するか―多宇宙理論から見た生命、進化、時間;D ドイチ 1999.からです)
◇宇宙の始元と絶対数学
ここで一度、D ドイチの多宇宙理論からKamu Number Theoryの「正反対称歪性平行宇宙」へ移りたいのです。同じ平行宇宙を謳っていても多宇宙を主張しない理由は「(単一の)始元」についての考え方がドイチとは大きく異なるからです。
ドイチは「コンストラクター理論」を2012年に発表しました。そこでは、科学の全領域のメタ理論として考えられた抽象理論には、始元の問題は古典理論の範疇に属する問題なので、積極的な意味で無視してよい課題であると主張しています。
一方、Kamu Number Theoryでは現象に於ける始元はD ドイチと同じく存在しないと考えています。しかし、ここからが違うのですが、「始元」はあくまでも潜象の中の問題として考えなければならないこととして重要視します。このことが一元体理論(Field with one Element)の中に全体の基礎が展開されてゆく起動力になってゆくのです。
さて、この一元体理論ですが、この宇宙にはたった一つの始元しかないという理論のことです。数学では ” Field with one Element ” と呼んでいます。これは最先端の数学です、最高に抽象的で、かつ広範囲の数学教養を総動員するものです。素人にもわかるように図版入りで解説してくれる黒川信重の著書がなかったら私には近づくこともできなかったでしょう。
整数論で世界最高のレベルにある黒川信重は、この数学を”絶対数学”と呼んでいます。つまり万物の数学理論であるという見通しを黒川は持ったからこのように呼んだのだと思います。Field with one Elementにおける ”Field” は代数学における”体”のことです。黒川信重は抽象数学と素粒子論とのあいだには”深い相似関係”があることを著書の中で図版入りで指摘しています。黒川信重は数学の一元体理論と物理の大統一理論との深い関係をつなぐものの存在を見出しています。
ここで、「数学モデルの健全性」についての議論を思い起こしてください。このブログの ” 4-1-1(前編)-1,数学モデルの理不尽なまでの有効性” で示すことができたのは「数学の理不尽なまでの有効性」ということでした。この信頼観を黒川信重は基盤にして絶対数学と物質の大統一理論 との間の相似象を示します。
Kamu Number Theoryではこの「代数的体」を「Kamu」と呼んでいます、ここから「数」との関わりが始まっています。そして「虚数」に到達するまでの長い遷移過程についてはすでに記しましたのでここでは繰り返しません。もともと相似象は数の物理を追求して来ました。そして虚数から整数1の生成を示すことができました。相似象の創始者の楢崎皐月は数1と数2から10進法を構築出来ると述べています。
◇進化し遷移する光量子と4光子随伴
始元の問題はすでにこのブログの ”量子コンピューターという思想(その3)─万物は回転する・ペンローズと宇宙大航海時代の羅針盤─(その3)- 2 万物のエントロピー増大、故に万物には始元が存在する” 等でご紹介いたしました。そこでは、まだブラックホールが潜象系だとは書きませんでした。そして今、光の問題を展開してゆく過程でブラックホールもまた光と同じく「潜象随伴系」を従えていることが光子と重力子との相似象として成り立つことをイメージしておきたいと思います。
なお、Kamu Number Theoryでは「重力子」という概念は存在しません。というのは、重力という概念は人間が感じ取る「知覚的な重さ」に基づいて編み出された人間主義の概念だからです。ここが「光」との大きな違いになります。重さはあくまでも地球上のものを基準として編み出されたものです。
宇宙では「向力=引力」と「斥力=反引力」、そしてKamu Number Theory独特のものとして「番力=マクロ結合力」の三種が重力とよく似た超遠隔性の力の物性として示しています。これも光子の脱皮と同じ意味で重力の脱皮と言うべきでしょう。
Gravityという用語も「重力」というより「引力」という意味で使われているようですから「引力子」という訳語が物理学としては正しいのだと思います。しかし、慣例として重力子という名称が使われますが、その内容は「引力の素粒子」として理解する必要があります。私も慣例に従って重力子という言葉は適宜使ってゆきますが。
遠隔性というのはファインマンのところで知ることとなった「遠隔作用」の物性です。これは、ブログの(その2)3 ”万物は粒子である” ─ファインマンの青春の夢─の中で、「存在するものは、粒子が相互に”遠隔的に作用”する世界であるとファインマンは考えた」。これは、「何ものかを粒子相互がやりとりすることが万物は粒子であるという宇宙観の根本であると設定したからだ」とファンマンは記しています。
今振り返れば、Kamu Number Theoryにおける三種の遠隔力である「向力=+Mukahi」と「斥力=−Mukahi」そして「番力=Tsugahi」の存在を、ファインマンはすでに予観していたのかも知れないと私は感じるのです。万物は粒子であるという思想はこのような既成概念の重力を根本から見直す深遠な物性観を捉えていたと言えます。
ファインマンもD ドイチに劣らず光子の謎には深い関心を持っていました。有名な”ファインマン・ダイアグラム”は「想像を超える準光子」の存在を前提に描くことができました。ファインマンはこの光子を ”仮想光子” としてダイアグラムの中に設定しました。ファインマン・ダイアグラムは進化する光子の未来像を想定していたかのように感じさせます。
実際、ファインマン・ダイアグラムには多くの謎が隠されています、その一つが時間の問題です。時間を遡って進行する反粒子はこのダイアグラムの目立った特徴と言われています。Kamu Number Theoryでは光子の段階では時間は独立したものとしては存在しないのです。つまり、とても不思議なことですが時間は光子の中に眠ったまま存在しているのです。従って、いま時間には触れないことといたします。
◇正反歪性平行宇宙と保型形式
Kamu Number Theoryで取り上げる〈正反・対称性・歪性〉から生まれる遷移図式を一体として組織化する構造とはどんなものなのでしょうか?…私が行ったのは図形と図式からの探求でした。
まず、一元体の始元は正反の2つの粒子に別れて遷移します。その正反は一つのものから生成された正反なのですから当然ながら対称性を維持していなければならないはずです。ところが、遷移の過程における数兆回にも及ぶ重合の履歴を考えると、その内部まで全く同じものであるはずはないのです。
この正反を陰陽と表現するとイメージしやすいことと思います。しかし、Kamu遷移図式はもっと抽象的な意味合いを持っています。それが正の〈Ma〉と反の〈Ka〉となります。これは正反共役関係を陰陽よりも強く持っています。次の段階ではいずれも正反の遷移が繰り返されますので、いよいよ複雑化してゆきます。
私は、ファインマンがダイアグラムを構想しているときの立位がこのようなものだったのではないかと想像しました。筋道は分かっている、しかしそれを具体的な図式にするには想定以外のものを組み込まなければならないのです。こうした難しい条件を満足出来る図式を見つけることは実際大変なことでした。
そんなときに現れたのが”カスプ型の保型形式”の図版でした。見事な図形でした、これならそのものズバリ正反歪性平行宇宙を表現出来るという確信がすぐに生まれました。永いことかけてまとめた ”Kamu正反遷移図式” は私の前にありました、これとカスプ型の保型形式の図版とを重ね合わせて点検を進めた結果は(図版1及び図版2)のようなものになりました。
(図版1)https://kamu-number.com/pdf/axio/113cuspidal.pdf
(図版2)https://kamu-number.com/pdf/axio/114clabiyau.pdf
なお「カスプ型」とは、尖点型という意味合いですが、ファインマンダイアグラムに描かれている図形の三角部分を構成するところがカスプと呼ばれる部分に当たります。これは離散型とか量子化あるいは整数化、衝突散乱型とも言われます。保型関数では整数論との深い関係を生み出す形式になります。
このカスプ型によって仕上がった遷移図式に、公理系を重ねてゆくことがかなりスムーズに進行しました。こうして最初の一個の粒子から万物が生成遷移する過程の全体像がダイアグラムとしてが出来上がったのです。ここからは物理との対応を確認する作業となりました。
さて、こうして進行する図式づくりは次々と最先端の研究と符合する場面に遭遇することとなりました。その一つがこれから見る量子光学理論と「4光子随伴」が手がかりとなる平行宇宙世界への扉の存在とその探求です。それにはこの平行扉のモデルを見る必要があります。量子光学の世界から提供される平行宇宙への扉の数学モデル化です。
翻って、平行宇宙とは正と反がお互いに「重ね合わせ⇔コヒーレント」しながら「エンタングルメント⇔共役的に共時的な平行性」という物理的な状態のことです。従ってユングの「シンクロニシティ」という概念は「正=現象」と「反=背景=潜象」が平行な構造を構成していることを的確に表現していたと言えるわけです。
2013年は平行宇宙元年とでも言うべき年になりました。量子論研究100年の成果が高度な実験技術と代数的量子論(量子力学基礎論)によって完全に決定したからです。量子光学と基礎論が平行宇宙論の先進性を証明してくれました。こうした新たな状況がこの2013年に始まったと私は考えるのです。平行宇宙論は永い成熟期間を経てようやく元年を迎えた今、光子が脱皮する姿を1970年に解明した相似象の先進性を改めて知ることとなったのです。
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次回は、D ドイチが発見した平行宇宙への扉を数学モデル化できないかを相似象とKamu Number Theoryから探求したいと思います。その候補として ”コヒーレント多様体SU(1,1)/U(1)” を遷移図式及び図版とともに見てゆきたいと思います。
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