量子コンピューターという思想(その3)
万物は回転する・ペンローズと宇宙大航海時代の羅針盤
(その3)-3 ペンローズの迷いとマイナスエントロピー
◇時空特異点・始元
ペンローズの熱力学第二法則探求の過程を眺めていると、彼の迷いとでも言えるものが見出される。
「我々はどうやら袋小路に行き当たったようである」と、ペンローズは現代物理学の袋小路が何処に潜んでいるかを顕わに示した。
Kamu Number Theoryからこの袋小路を見ると、現代科学の特徴を捉えることが出来るのだ、が。
少しペンローズの探求を辿ってみようと思う。
「エントロピー概念には(マクロ)主観性というやっかいな問題がある」と不信感を表明し、続けて「時間発展するときの前提は始元があると言うことだ」と展開し。
この前提となっている(ミクロ)始元はビッグバンにおいて見出されるものであるから、特異点こそ袋小路の場所であることになる。
我々は、とペンローズはつづけて「時空特異点・始元」が観測されるような構造になった理由を知る必要がある、しかし特異点は物理学に対するわれわれの理解が限界に突き当たる領域である。
◇始元とマイナスエントロピー
そして、(ミクロ)始元の状態は超低エントロピー状態と考えるのがマクロ物理の熱力学が要請するところである。
ここに至って、ペンローズは自らに向かって投げかける。
①(エントロピーのゼロ点)ビッグバンの前に何があったのか?
②(マクロ)主観的な私たちの宇宙の(マクロとミクロを繋ぐ)秩序の源泉は何ですか?
③(ミクロ始元から発展した)その(マクロ日常生命的)究極の未来は何ですか?
ペンローズの思考の流れは次のようなものだ、宇宙のミクロな始まりとマクロな終わりでは、重さゼロの粒子しか存在できない。
だから、回転する時空である特異点の「場、若しくは入れ物」は存在しないものになるはずだ。
ここで彼が言うところの特異点における時空は、Kamu Number Theoryでいう「容積量=Relativity-Capacitive-Quantity」に該当するものであることを思い出しながら、つぎへ。
(容積量については(その2)- 2 時空互換重合量子とペレルマンのエントロピー)
特異点では長さや時間が意味をもたなくなり、物理的に重要なのは「角度=共形幾何学 → 粒子の回転」だけになる、という彼の当初の理論に立ち戻ってしまう。
さて、ペンローズが指摘した「マクロ主観性の袋小路」は『角度=共形幾何 → 重力』という秩序の中に於いて突破される可能性を彼は見ていたようである。
まさに、そうなのだ。相対論の思考実験において中心を占めていたのがこの「遠隔作用の場所 → 場を超えた」としての重力なのだった。
Kamu Number Theoryにおいても、この意味での重力を再思考実験する必要性を要請するのだ。
こうして、重力こそ袋小路を突破する最後の砦だとペンローズは考えた、そしてついに重力共形サイクリック宇宙理論が彼の答えとなった。
◇始元から始元に終焉するサイクル宇宙モデル
共形サイクリック宇宙論によって、始元の中の袋小路は、「無限小に関して実証的に観察されることは時空的にいくら小さかろうと、定量的角度の性質はそのまま有効である」はずだ!、、という共形幾何宇宙理論に突破口を見出そうとした。
ところが、始元から発展して始元に終焉するサイクル宇宙模型ではマクロの問題が、つまり熱力学第二法則が整合的に組み込まれることは困難なのだ。
宇宙は終局において始元と相似な物理状態になる、したがって増大し続けたエントロピーはどこへ行ってしまったのか?
またもや、袋小路に突き当たってしまう。ここで、ペンローズはブラックホールの蒸発という事態の前で、エントロピ−の定義を書き換えてはどうかと提案する。
ペンローズの書き換え方法は、自由度(次元)の蒸発(時空4次元から2次元へ)として捉えるというのだが。この自由度とは運動の時空的自由度であって、あくまでも時間次元と空間次元を分離させた状態を前提としている。
困惑する私たちに対して、ここでペンローズは秀逸なイラストを制作した、イメージを大事にするこの人の真骨頂だ。
彼は、素人に向かってこの困難な状況をなんとか納得させようという情熱から、直感的に理解出来るこのイラストの制作となった。
提案の特徴は、位相空間の次元にこだわったと言うところだ。当然のことだが、ペンローズは空間次元が蒸発して縮小する世界をイメージした。
言い換えれば、時空は独立した空間次元と時間次元の合成されたものとし、空間次元の3次元を2つの次元が消滅して1次元になり時間との2次元平面への縮退と考えようとするのだ。
◇Kamu次元とマイナス・エントロピー
ところが、次元という概念にKamu Number Theoryでは現実的な位相空間で定義された次元とは全く別のものを導入するのだ。
このKamu次元は物性の遷移を解析できる統計物理学の『分配関数』と相似なものとして説明することができる。
具体例で言えば、電子の反粒子である陽電子のエントロピーを新たな角度から評価する方法の存在を考えなければならないのだ。
陽電子には、” 時間を逆行する粒子(正孔=反電子=Electron Hole)”というファインマンが図形から発見した斬新な思想がある。
だとするならば、ここからマイナスエントロピーという発想が不自然でなく受け入れられるのではないかと私は思う。
この周辺、マイナスエントロピーについては、Kamu Number Theoryのファイルを参考にして頂きたいと思います。
(陽電子とは何者か)
http://accwww2.kek.jp/oho/OHO%20text%20archives%202005-2011/OHO07%20web%20final/OHO07%20kamitani%2020070824.pdf
(“時間の矢” とはなにか)
https://www.saiensu.co.jp/preview/2004-4910054690743/200407.pdf
(反粒子を使ったタイムトラベル)
https://www.bttp.info/pickup/antiparticle-timetravel/
さて、” 時間を逆行する正孔=反電子=Electron Hole”という発見から、安易に時間逆行タイムマシンの可能性を追求しようという主張がある。
Kamu次元の遷移図式から解ることは、タイムマシン構想は否定されるということを注意しておきたい。
仮に、タイムマシンが実現した場合に想定される次元である Kamu D6 & D7 では時間と空間は互いに独立し分離している。
空間を互換重合的に随伴しない時間だけの逆行、若しくはジャンプは存在しないことがKamu Number Theoryから解っている。
時空分離世界の現象界では原理としてタイムマシンは製造不可能なのである。
つまり、時間が逆流する陽電子は、時空が互換重合状態の電子や光子と共に特別な物性を持っている、ということなのだ。
このKamu次元に立ったマイナスエントロピーという概念は、Kamu Number Theoryからの提案なので、Kamu次元から丁寧に説明しなければならないのだが、とりあえず発想として簡単に示します。
反粒子とマイナスエントロピー概念を示す「Kamu次元D」と容積量Relativity-Capacitive-Quantityの関係は次の図版を参照して頂きたい、今はKamu次元の説明は省略してあります。
図版 Kamu次元2 (4-4) https://kamu-number.com/pdf/dim/244boltzmanndifinition.pdf
図版 Kamu次元2 (4-3) https://kamu-number.com/pdf/dim/243boltzmannocean.pdf
図版 Kamu次元2 (4-2) https://kamu-number.com/pdf/dim/242complexentrop.pdf
図版 Kamu次元2 (4-1) https://kamu-number.com/pdf/dim/241d2fuawasanuki.pdf
ペンローズは光子の低エントロピ−状態という特別な物性に注目しているが、実はここにはマイナスエントロピーの存在を想定しなければならない背景があったと言うことになる。
光子、陽電子、反ニュートリノなどのマイナスエントロピーが生命を支えているとKamu Number Theoryでは答えることが出来るのだ。
「生物はマイナス・エントロピーを食べて生きている」とはシュレーディンガーの言葉だ。ペンローズはこの「生物」という部分を「マクロな自分」自身に置き換えて考察した。
† † † † † † †
次回は、3-4、生命のロバストネスと情報熱力学
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(その3) ─万物は回転する・ペンローズと宇宙大航海時代の羅針盤─
3-1、万物は回転する・互換重合時空ツイスター
3-2、万物のエントロピー、故に始元が存在する
3-3、ペンローズの迷いとマイナスエントロピー
3-4、生命のロバストネスと情報熱力学
†
3-5、宇宙羅針盤・テータ関数・共形幾何・保型形式
3-6、ペンローズの微小管非チューリングマシン
3-7、ペンローズの非計算物理とKamu Number Theory
3-8、準直感と準粒子型量子コンピューター
†
Kamu Number Theory
https://kamu-number.com/
copyrght © Allright Rserved Masaki Yoshino
万物は回転する・ペンローズと宇宙大航海時代の羅針盤
(その3)-3 ペンローズの迷いとマイナスエントロピー
◇時空特異点・始元
ペンローズの熱力学第二法則探求の過程を眺めていると、彼の迷いとでも言えるものが見出される。
「我々はどうやら袋小路に行き当たったようである」と、ペンローズは現代物理学の袋小路が何処に潜んでいるかを顕わに示した。
Kamu Number Theoryからこの袋小路を見ると、現代科学の特徴を捉えることが出来るのだ、が。
少しペンローズの探求を辿ってみようと思う。
「エントロピー概念には(マクロ)主観性というやっかいな問題がある」と不信感を表明し、続けて「時間発展するときの前提は始元があると言うことだ」と展開し。
この前提となっている(ミクロ)始元はビッグバンにおいて見出されるものであるから、特異点こそ袋小路の場所であることになる。
我々は、とペンローズはつづけて「時空特異点・始元」が観測されるような構造になった理由を知る必要がある、しかし特異点は物理学に対するわれわれの理解が限界に突き当たる領域である。
◇始元とマイナスエントロピー
そして、(ミクロ)始元の状態は超低エントロピー状態と考えるのがマクロ物理の熱力学が要請するところである。
ここに至って、ペンローズは自らに向かって投げかける。
①(エントロピーのゼロ点)ビッグバンの前に何があったのか?
②(マクロ)主観的な私たちの宇宙の(マクロとミクロを繋ぐ)秩序の源泉は何ですか?
③(ミクロ始元から発展した)その(マクロ日常生命的)究極の未来は何ですか?
ペンローズの思考の流れは次のようなものだ、宇宙のミクロな始まりとマクロな終わりでは、重さゼロの粒子しか存在できない。
だから、回転する時空である特異点の「場、若しくは入れ物」は存在しないものになるはずだ。
ここで彼が言うところの特異点における時空は、Kamu Number Theoryでいう「容積量=Relativity-Capacitive-Quantity」に該当するものであることを思い出しながら、つぎへ。
(容積量については(その2)- 2 時空互換重合量子とペレルマンのエントロピー)
特異点では長さや時間が意味をもたなくなり、物理的に重要なのは「角度=共形幾何学 → 粒子の回転」だけになる、という彼の当初の理論に立ち戻ってしまう。
さて、ペンローズが指摘した「マクロ主観性の袋小路」は『角度=共形幾何 → 重力』という秩序の中に於いて突破される可能性を彼は見ていたようである。
まさに、そうなのだ。相対論の思考実験において中心を占めていたのがこの「遠隔作用の場所 → 場を超えた」としての重力なのだった。
Kamu Number Theoryにおいても、この意味での重力を再思考実験する必要性を要請するのだ。
こうして、重力こそ袋小路を突破する最後の砦だとペンローズは考えた、そしてついに重力共形サイクリック宇宙理論が彼の答えとなった。
◇始元から始元に終焉するサイクル宇宙モデル
共形サイクリック宇宙論によって、始元の中の袋小路は、「無限小に関して実証的に観察されることは時空的にいくら小さかろうと、定量的角度の性質はそのまま有効である」はずだ!、、という共形幾何宇宙理論に突破口を見出そうとした。
ところが、始元から発展して始元に終焉するサイクル宇宙模型ではマクロの問題が、つまり熱力学第二法則が整合的に組み込まれることは困難なのだ。
宇宙は終局において始元と相似な物理状態になる、したがって増大し続けたエントロピーはどこへ行ってしまったのか?
またもや、袋小路に突き当たってしまう。ここで、ペンローズはブラックホールの蒸発という事態の前で、エントロピ−の定義を書き換えてはどうかと提案する。
ペンローズの書き換え方法は、自由度(次元)の蒸発(時空4次元から2次元へ)として捉えるというのだが。この自由度とは運動の時空的自由度であって、あくまでも時間次元と空間次元を分離させた状態を前提としている。
困惑する私たちに対して、ここでペンローズは秀逸なイラストを制作した、イメージを大事にするこの人の真骨頂だ。
彼は、素人に向かってこの困難な状況をなんとか納得させようという情熱から、直感的に理解出来るこのイラストの制作となった。
提案の特徴は、位相空間の次元にこだわったと言うところだ。当然のことだが、ペンローズは空間次元が蒸発して縮小する世界をイメージした。
言い換えれば、時空は独立した空間次元と時間次元の合成されたものとし、空間次元の3次元を2つの次元が消滅して1次元になり時間との2次元平面への縮退と考えようとするのだ。
◇Kamu次元とマイナス・エントロピー
ところが、次元という概念にKamu Number Theoryでは現実的な位相空間で定義された次元とは全く別のものを導入するのだ。
このKamu次元は物性の遷移を解析できる統計物理学の『分配関数』と相似なものとして説明することができる。
具体例で言えば、電子の反粒子である陽電子のエントロピーを新たな角度から評価する方法の存在を考えなければならないのだ。
陽電子には、” 時間を逆行する粒子(正孔=反電子=Electron Hole)”というファインマンが図形から発見した斬新な思想がある。
だとするならば、ここからマイナスエントロピーという発想が不自然でなく受け入れられるのではないかと私は思う。
この周辺、マイナスエントロピーについては、Kamu Number Theoryのファイルを参考にして頂きたいと思います。
(陽電子とは何者か)
http://accwww2.kek.jp/oho/OHO%20text%20archives%202005-2011/OHO07%20web%20final/OHO07%20kamitani%2020070824.pdf
(“時間の矢” とはなにか)
https://www.saiensu.co.jp/preview/2004-4910054690743/200407.pdf
(反粒子を使ったタイムトラベル)
https://www.bttp.info/pickup/antiparticle-timetravel/
さて、” 時間を逆行する正孔=反電子=Electron Hole”という発見から、安易に時間逆行タイムマシンの可能性を追求しようという主張がある。
Kamu次元の遷移図式から解ることは、タイムマシン構想は否定されるということを注意しておきたい。
仮に、タイムマシンが実現した場合に想定される次元である Kamu D6 & D7 では時間と空間は互いに独立し分離している。
空間を互換重合的に随伴しない時間だけの逆行、若しくはジャンプは存在しないことがKamu Number Theoryから解っている。
時空分離世界の現象界では原理としてタイムマシンは製造不可能なのである。
つまり、時間が逆流する陽電子は、時空が互換重合状態の電子や光子と共に特別な物性を持っている、ということなのだ。
このKamu次元に立ったマイナスエントロピーという概念は、Kamu Number Theoryからの提案なので、Kamu次元から丁寧に説明しなければならないのだが、とりあえず発想として簡単に示します。
反粒子とマイナスエントロピー概念を示す「Kamu次元D」と容積量Relativity-Capacitive-Quantityの関係は次の図版を参照して頂きたい、今はKamu次元の説明は省略してあります。
図版 Kamu次元2 (4-4) https://kamu-number.com/pdf/dim/244boltzmanndifinition.pdf
図版 Kamu次元2 (4-3) https://kamu-number.com/pdf/dim/243boltzmannocean.pdf
図版 Kamu次元2 (4-2) https://kamu-number.com/pdf/dim/242complexentrop.pdf
図版 Kamu次元2 (4-1) https://kamu-number.com/pdf/dim/241d2fuawasanuki.pdf
ペンローズは光子の低エントロピ−状態という特別な物性に注目しているが、実はここにはマイナスエントロピーの存在を想定しなければならない背景があったと言うことになる。
光子、陽電子、反ニュートリノなどのマイナスエントロピーが生命を支えているとKamu Number Theoryでは答えることが出来るのだ。
「生物はマイナス・エントロピーを食べて生きている」とはシュレーディンガーの言葉だ。ペンローズはこの「生物」という部分を「マクロな自分」自身に置き換えて考察した。
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次回は、3-4、生命のロバストネスと情報熱力学
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(その3) ─万物は回転する・ペンローズと宇宙大航海時代の羅針盤─
3-1、万物は回転する・互換重合時空ツイスター
3-2、万物のエントロピー、故に始元が存在する
3-3、ペンローズの迷いとマイナスエントロピー
3-4、生命のロバストネスと情報熱力学
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3-5、宇宙羅針盤・テータ関数・共形幾何・保型形式
3-6、ペンローズの微小管非チューリングマシン
3-7、ペンローズの非計算物理とKamu Number Theory
3-8、準直感と準粒子型量子コンピューター
†
Kamu Number Theory
https://kamu-number.com/
copyrght © Allright Rserved Masaki Yoshino