Kamu Number Theoryと相似象

英文サイト. Kamu Number Theory では言及しない相似象のことなどはこちらで。

(その3)-3 ペンローズの迷いとマイナスエントロピー

2020-04-26 10:07:14 | Post:投稿闌
量子コンピューターという思想(その3)

万物は回転する・ペンローズと宇宙大航海時代の羅針盤

(その3)-3 ペンローズの迷いとマイナスエントロピー




◇時空特異点・始元

ペンローズの熱力学第二法則探求の過程を眺めていると、彼の迷いとでも言えるものが見出される。

「我々はどうやら袋小路に行き当たったようである」と、ペンローズは現代物理学の袋小路が何処に潜んでいるかを顕わに示した。

Kamu Number Theoryからこの袋小路を見ると、現代科学の特徴を捉えることが出来るのだ、が。

少しペンローズの探求を辿ってみようと思う。

「エントロピー概念には(マクロ)主観性というやっかいな問題がある」と不信感を表明し、続けて「時間発展するときの前提は始元があると言うことだ」と展開し。

この前提となっている(ミクロ)始元はビッグバンにおいて見出されるものであるから、特異点こそ袋小路の場所であることになる。

我々は、とペンローズはつづけて「時空特異点・始元」が観測されるような構造になった理由を知る必要がある、しかし特異点は物理学に対するわれわれの理解が限界に突き当たる領域である。


◇始元とマイナスエントロピー

そして、(ミクロ)始元の状態は超低エントロピー状態と考えるのがマクロ物理の熱力学が要請するところである。

ここに至って、ペンローズは自らに向かって投げかける。
 ①(エントロピーのゼロ点)ビッグバンの前に何があったのか?
 ②(マクロ)主観的な私たちの宇宙の(マクロとミクロを繋ぐ)秩序の源泉は何ですか?
 ③(ミクロ始元から発展した)その(マクロ日常生命的)究極の未来は何ですか?

ペンローズの思考の流れは次のようなものだ、宇宙のミクロな始まりとマクロな終わりでは、重さゼロの粒子しか存在できない。

だから、回転する時空である特異点の「場、若しくは入れ物」は存在しないものになるはずだ。

ここで彼が言うところの特異点における時空は、Kamu Number Theoryでいう「容積量=Relativity-Capacitive-Quantity」に該当するものであることを思い出しながら、つぎへ。

(容積量については(その2)- 2 時空互換重合量子とペレルマンのエントロピー)

特異点では長さや時間が意味をもたなくなり、物理的に重要なのは「角度=共形幾何学 → 粒子の回転」だけになる、という彼の当初の理論に立ち戻ってしまう。

さて、ペンローズが指摘した「マクロ主観性の袋小路」は『角度=共形幾何 → 重力』という秩序の中に於いて突破される可能性を彼は見ていたようである。

まさに、そうなのだ。相対論の思考実験において中心を占めていたのがこの「遠隔作用の場所 → 場を超えた」としての重力なのだった。

Kamu Number Theoryにおいても、この意味での重力を再思考実験する必要性を要請するのだ。

こうして、重力こそ袋小路を突破する最後の砦だとペンローズは考えた、そしてついに重力共形サイクリック宇宙理論が彼の答えとなった。


◇始元から始元に終焉するサイクル宇宙モデル

共形サイクリック宇宙論によって、始元の中の袋小路は、「無限小に関して実証的に観察されることは時空的にいくら小さかろうと、定量的角度の性質はそのまま有効である」はずだ!、、という共形幾何宇宙理論に突破口を見出そうとした。

ところが、始元から発展して始元に終焉するサイクル宇宙模型ではマクロの問題が、つまり熱力学第二法則が整合的に組み込まれることは困難なのだ。

宇宙は終局において始元と相似な物理状態になる、したがって増大し続けたエントロピーはどこへ行ってしまったのか?

またもや、袋小路に突き当たってしまう。ここで、ペンローズはブラックホールの蒸発という事態の前で、エントロピ−の定義を書き換えてはどうかと提案する。

ペンローズの書き換え方法は、自由度(次元)の蒸発(時空4次元から2次元へ)として捉えるというのだが。この自由度とは運動の時空的自由度であって、あくまでも時間次元と空間次元を分離させた状態を前提としている。

困惑する私たちに対して、ここでペンローズは秀逸なイラストを制作した、イメージを大事にするこの人の真骨頂だ。

彼は、素人に向かってこの困難な状況をなんとか納得させようという情熱から、直感的に理解出来るこのイラストの制作となった。

提案の特徴は、位相空間の次元にこだわったと言うところだ。当然のことだが、ペンローズは空間次元が蒸発して縮小する世界をイメージした。

言い換えれば、時空は独立した空間次元と時間次元の合成されたものとし、空間次元の3次元を2つの次元が消滅して1次元になり時間との2次元平面への縮退と考えようとするのだ。


◇Kamu次元とマイナス・エントロピー

ところが、次元という概念にKamu Number Theoryでは現実的な位相空間で定義された次元とは全く別のものを導入するのだ。

このKamu次元は物性の遷移を解析できる統計物理学の『分配関数』と相似なものとして説明することができる。

具体例で言えば、電子の反粒子である陽電子のエントロピーを新たな角度から評価する方法の存在を考えなければならないのだ。

陽電子には、” 時間を逆行する粒子(正孔=反電子=Electron Hole)”というファインマンが図形から発見した斬新な思想がある。

だとするならば、ここからマイナスエントロピーという発想が不自然でなく受け入れられるのではないかと私は思う。 

この周辺、マイナスエントロピーについては、Kamu Number Theoryのファイルを参考にして頂きたいと思います。

(陽電子とは何者か)
http://accwww2.kek.jp/oho/OHO%20text%20archives%202005-2011/OHO07%20web%20final/OHO07%20kamitani%2020070824.pdf
(“時間の矢” とはなにか)
https://www.saiensu.co.jp/preview/2004-4910054690743/200407.pdf

(反粒子を使ったタイムトラベル)
https://www.bttp.info/pickup/antiparticle-timetravel/

 
さて、” 時間を逆行する正孔=反電子=Electron Hole”という発見から、安易に時間逆行タイムマシンの可能性を追求しようという主張がある。

Kamu次元の遷移図式から解ることは、タイムマシン構想は否定されるということを注意しておきたい。

仮に、タイムマシンが実現した場合に想定される次元である Kamu D6 & D7 では時間と空間は互いに独立し分離している。

空間を互換重合的に随伴しない時間だけの逆行、若しくはジャンプは存在しないことがKamu Number Theoryから解っている。

時空分離世界の現象界では原理としてタイムマシンは製造不可能なのである。

つまり、時間が逆流する陽電子は、時空が互換重合状態の電子や光子と共に特別な物性を持っている、ということなのだ。

このKamu次元に立ったマイナスエントロピーという概念は、Kamu Number Theoryからの提案なので、Kamu次元から丁寧に説明しなければならないのだが、とりあえず発想として簡単に示します。

反粒子とマイナスエントロピー概念を示す「Kamu次元D」と容積量Relativity-Capacitive-Quantityの関係は次の図版を参照して頂きたい、今はKamu次元の説明は省略してあります。
図版 Kamu次元2 (4-4)  https://kamu-number.com/pdf/dim/244boltzmanndifinition.pdf
図版 Kamu次元2 (4-3)  https://kamu-number.com/pdf/dim/243boltzmannocean.pdf
図版 Kamu次元2 (4-2)  https://kamu-number.com/pdf/dim/242complexentrop.pdf
図版 Kamu次元2 (4-1)  https://kamu-number.com/pdf/dim/241d2fuawasanuki.pdf

ペンローズは光子の低エントロピ−状態という特別な物性に注目しているが、実はここにはマイナスエントロピーの存在を想定しなければならない背景があったと言うことになる。

光子、陽電子、反ニュートリノなどのマイナスエントロピーが生命を支えているとKamu Number Theoryでは答えることが出来るのだ。

「生物はマイナス・エントロピーを食べて生きている」とはシュレーディンガーの言葉だ。ペンローズはこの「生物」という部分を「マクロな自分」自身に置き換えて考察した。



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次回は、3-4、生命のロバストネスと情報熱力学

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 (その3) ─万物は回転する・ペンローズと宇宙大航海時代の羅針盤─
3-1、万物は回転する・互換重合時空ツイスター
3-2、万物のエントロピー、故に始元が存在する
3-3、ペンローズの迷いとマイナスエントロピー
3-4、生命のロバストネスと情報熱力学
         †
3-5、宇宙羅針盤・テータ関数・共形幾何・保型形式
3-6、ペンローズの微小管非チューリングマシン
3-7、ペンローズの非計算物理とKamu Number Theory
3-8、準直感と準粒子型量子コンピューター

         †
Kamu Number Theory
https://kamu-number.com/
copyrght © Allright Rserved Masaki Yoshino

(その3)-2 万物のエントロピー増大 故に万物には始元が存在する

2020-04-13 15:44:45 | 量子コンピューター
量子コンピューターという思想(その3)万物は回転する─ペンローズの宇宙大航海時代の羅針盤─

(その3)- 2.万物のエントロピー増大、故に万物には始元が存在する

◇ホーキングの始元定理
さて、始元の問題なのだが、これにはホーキングの業績を忘れてはならないと思う。

宇宙には「始まりがある」という定理を相対性理論で証明したのはホーキングだ、従って「ホーキングの始元定理」として評価しなければならない。

ホーキングが始元定理を証明するときに根拠としたものが、ペンローズの「特異点定理」、これがやはりというか、凄い。どこが凄いか、特異点は日常から遠いものではなく、「現実世界では必ず特異点が出現する」というのがペンローズが証明したことだからなのだ。

◇ペンローズの特異点定理
つまり量子論の謎の⑨を思い出して欲しい、量子の数々の謎は日常世界に作用する原理であり、相対論においても同じように現実世界に直接の影響力を持っているというのだ。

(量子論の謎、 (9)量子力学は日常生活の物理を含む → 量子の数々の謎をそのまま日常生活に持ち込めるのか?)

では、特異点とは一体何であろうか、ペンローズの理論ではそれは単なる「無限・発散・収縮・手に負えないもの」ではない。

ペンローズの「特異点定理」をKamu Number Theoryでは二つの宇宙状態として考えて居る。一つは「始元=特異点 → Tama」、もう一つは「飽和崩壊循環遷移=特異点 → Yata」と考えるのである。

そして、この二つの状態は
《始元 → 遷移 → 現実世界 → 飽和崩壊 → 始元遷移サイクル》
という物性遷移のサイクルを指し示すと考える。

このように、ペンローズの特異点は現実世界において、宇宙から地上のあらゆる存在までを含めて成立する定理だと考える。

このことは熱力学の第二法則が、まず始元に於いて成立し、現実生活に於いても、そして宇宙が飽和崩壊する時まで第二法則の支配が続くということに基づいている。

熱力学の第二法則と相対論による特異点定理は、人間の現実に適用すれば人生の始めに始元点があり、終局に飽和崩壊の循環始元点が存在するということになるのかも知れない。

◇ペンローズの始元解析
哲学におけるオントロジーの基本命題を相対性理論が図らずも証明したことになると言わざるを得ない。

オントロジーについては、今回の(その3)4 生命のロバストネスと情報熱力学、を参照してください。

どうしてこんなことが物理学を使って出来たのか、その秘密が熱力学の第二法則をペンローズらしい徹底さで追求したところにある。 

ペンローズによる始元の解析は二つの道を辿ってゆくように見える。

一つには特異点においては時間と空間は分離していないと考えたこと。つまり虚数世界の時空互換重合ツイスターというものをイメージしたルート。

そもそも、私たちの常識では時間は時計、空間は物差し、と全く別のものと見なす、2つの異なるものが分離しているのは当たり前なのだ。

◇感覚ではなく直観
従って、ツイスターを具象として想像する力は人間の感覚の世界では働かない。潜象というものも同じように感覚的に想像することは出来ない。

しかし、時空は1つの球状の内部で陰陽図の渦巻きのように互換重合して居る様子を直感するしかないのだ。

さてもう一つのルートは、ペンローズは特異点においては「エントロピー → 情報量」と「回転角度 → 共形幾何」だけが物差しになると考えたことだ。

エントロピーに関してはすでに「(その2)2.時空互換重合量子とペレルマンのエントロピー」で、エントロピーを互換重合時空容積量・Relativity-Capacitive-Quantityの代わりに使っていたことを見た。

数学的、物理的な理由から、宇宙の始まりと終わりでは、重さゼロの粒子しか存在しない、そこでは長さや時間が意味をもたなくなり、物理的に重要なのは「角度」だけになる、とペンローズは理論から導いた。

◇時間軸のない始元
始元における質量のない粒子について、最も奇妙なことは、それらには時間のようなものがないということ、であるとペンローズは記している。

こうして、質量も時間も無い唯一の粒子である光子には始元を担う十分な資格が見出されることとなる。

つまり「最初に光が在った」というフレーズがそのまま特異点定理の一部になるのだ。

万物は「始元=光子」から遷移生成されてゆき、ついには飽和から再び光子に帰って行く共形周期宇宙論がペンローズによって主張される。

この結論はKamu Number Theoryにおいてもほぼ同じだ、現象界の始元は光である。

ただし違うのは、現象界の始元である光は潜象界Tamaにおける、ながい遷移プロセスの結果として発生するものであって、いきなり「光」が現れるわけではない。

◇光の3種集積位相
光は遷移過程に従って3種の物性として現れる、まず始元の前駆光から始まって、つぎの遷移過程で電磁波として、ここから遷移して光量子が現れるものと見ている。

潜象界は始元量と名付けたTamaが生成する長々とした遷移過程、ここでは量子重力領域の前駆的な遷移を経由しなければ光は発生しないのである。

この潜象界の遷移過程があればこそ、現象界独特のユニタリー時間発展、そしてそこから展開される標準模型を説明できると考える。

だが、この「現象界始元=前駆光子」を創成するKamuとAmaの随伴共役による遷移過程である潜象界は、ペンローズの視界からは閉ざされているのだ。

同じ始元ではあるが、現象界の光及びビッグバンが生み出す始元には重力の問題が入り込めない、ところが潜象界の長い遷移過程を経て生み出される始元には重力が含まれる、という違いがある。

このことが、次回で述べるペンローズの迷いを生み出すこととなる。

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次回は(その3) - 3 ペンローズの迷いとマイナスエントロピー

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─万物は回転する・ペンローズと宇宙大航海時代の羅針盤─

3-1、万物は回転する・互換重合時空ツイスター
3-2、万物のエントロピー、故に始元が存在する
3-3、ペンローズの迷いとマイナスエントロピー
3-4、生命のロバストネスと量子情報熱力学
         †
3-5、宇宙羅針盤・テータ関数・共形幾何・保型形式
3-6、ペンローズの微小管非チューリングマシン
3-7、ペンローズの非計算物理とKamu Number Theory
3-8、準直感と準粒子型量子コンピューター
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Kamu Number Theory
copyrght © Allright Rserved Masaki Yoshino

3-1、万物は回転する─ペンローズと宇宙大航海時代の羅針盤─

2020-04-05 09:51:12 | 量子コンピューター


量子コンピューターという思想(その3)
─万物は回転する・ペンローズと宇宙大航海時代の羅針盤─


(その3)- 1,万物は回転する・互換重合時空ツイスター

◇数学観光ボランティア
わずか数ページの論文のもつ重大な価値を、専門外の人々と共有したいという気持ちから300ページの本を書いて素人向けに解説するペンローズ。さらに、数式が生み出すイメージを、誰にでも伝わるように多くの図版やイラストで共有しようと彼は務める。

ペンローズのこうした多くの労力は、最先端の科学が獲得した成果は人類の共有財産であるという信念に裏付けられているのだと私は思う。

相対性理論の専門家ですら通読に困難を感じるというペンローズの「宇宙の特異点」発見の原論文。

私がペンローズの仕事を理解できるのは、彼の努力、多くの科学者による論説、そして優れた科学ライターの情熱などからである。

トレーニングに時間のかかる最先端の数学を縦横に駆使した論文は、その高い価値が専門外の世界に伝わらないのも事実だ。

私は彼の論文を素人として観光していると、数式のチンプンカンプンな世界に迷い込んで、ウツラウツラとしてくる、気がつくと夢の中だ、そこにペンローズが微笑んでいる。

まず、彼が取り組んでいる問題をザックリとKamu Number Theoryの立場から切り取っておきたい。

一つは、「生命とデコヒーレンス」との深い関係、次は「ビッグバンと始元量」の問題の二つである。

実は、この二つとも量子脳理論及び量子コンピューターと根源のところで物性的な関係が出てくる。

また、この二つは共に「虚数世界の正反回転」か生成されたことをKamu Number Theoryは示している。

◇複素虚回転概念
虚数世界の回転といえば、スピンあるいはスピノールという量子力学の複素虚回転概念がある。

ボール状のような原子の回転を即座にイメージしてしまうが、虚数世界の回転は一筋縄では行かない。

ペンローズは量子スピンを「虚数世界の多重回転 → ツイスター」とみなし、ここからスピンネットワーク時空の生成を考察した。

◇虚数回転が時空を形成するTama
回転が時空を形成するという発想は独創的なものだが、Kamu Number Theoryでは互換重合時空は回転から生成されることを示している。

これまで、回転から時空が生まれたとは聞いたことのない理論だ、しかし、決して思いつきで生まれたものではない。

Kamu Number Theoryでは、時空は始元の状態では統合された時空互換重合多重回転体だ、これを一言で「Tama → Twister」と名付けるのだ。

Tamaについては(その2)万物は粒子である─ファインマンの青春の夢─1.万物は球体である

まさに、ペンローズと同じ発想、つまり「時間と空間はTamaから生まれたものである」という斬新な思想がここにもあったのだ!

スピンからツイスター理論へと発展させたペンローズの構想は先端数学的で、そのまま論文を素人が理解することは出来ない。

例えば、「4 次元時空上の質量を持たない粒子を記述する場の方程式の解がツイスター空間上の関数の 『周回積分』で表されるというものがあり,層コホモロジー的解釈ものちに与えられた」

など、私にはチンプンカンプンな理解不能世界なのである。

ペンローズが導いた、回転が時空を誕生させるという成果は、誰でも使うことの出来る人類の共有資産なのだ。

ところが、ここに止まらないのがペンローズの本領というものなのだ。

◇始元と生命
驚くべき構想は生命にまでこの始元の回転を繋げてゆく事になる。

それが、「生命とデコヒーレンス」だ。これは「デコヒーレンスと重力」へ、更に「重力とビッグバンへ」、ついに「ビッグバン → 始元」へと展開される。

この一連のつながりがあるからこそ「複素コヒーレンスから量子コンピューター」という流れが立体的に現れるのを、これから目の当たりにするのだ。

この関連の中にペンローズは、「生命の起源」を「重力と始元」の虚数回転世界に求めたのである。

この発想「Tama ⇔ Twister」と「ビッグバン ⇔ 始元」はKamu Number Theoryと軌を一にするものと言える。

時空量子ツイスターと生命との間の深いつながりは、始元に於いて始まり、そこから素粒子が生成されるまでの永い遷移過程が続くというのがKamu Number Theoryの理論である。

私は、ペンローズの一連の概念構成法は現代物理学に生命の要素を取り込む最初の本格的な業績として評価したいと思う。


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次回は(その3) - 2、万物のエントロピー、故に始元が存在する、です

(その3)目次
量子コンピューターという思想(その3) ─万物は回転する・ペンローズと宇宙大航海時代の羅針盤─
3-1、万物は回転する・互換重合時空ツイスター
3-2、万物のエントロピー、故に始元が存在する
3-3、ペンローズの迷いとマイナスエントロピー
3-4、生命のロバストネスと情報熱力学
3-5、宇宙羅針盤・テータ関数・共形幾何・保型形式
3-6、ペンローズの微小管非チューリングマシン
3-7、ペンローズの非計算物理とKamu Number Theory
3-8、準直感と準粒子型量子コンピューター


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