過去最大2・7兆円 愛知県予算案 県債でやりくり [愛知県]:朝日新聞
愛知県が12日に発表した総額2兆7163億円の2021年度一般会計当初予算案は、20年度当初比5・6%増で、当初予算としては過去最大となった。新型コロナウイルスの影響で法人2税が大きく落ち込むなどリーマン・ショックの影響を受けた09年度以来の大幅な減収になる見込みのなか、県債を増発してやりくりするなど、厳しい財政運営を続けている。
県税収入は20年度当初比で9・7%減の1兆532億円。このうち、法人2税(法人県民税・法人事業税)は2574億円で同比21・0%の大幅減となる。個人消費の減少で地方消費税も落ち込み、厳しい雇用情勢を反映して個人県民税なども減少。県税と地方譲与税を合わせて計1618億円の減収となり、リーマン・ショックの影響を受けた09年度、赤字決算となった1999年度に次いで過去3番目に大きい減収になる。
歳出では、人件費(6158億円、同0・1%減)、県債償還などの公債費(3854億円、同3・6%増)、医療・介護などの扶助費(3021億円、同2・8%増)といった「義務的経費」が48・0%を占めた。公共事業などの「投資的経費」は2932億円で同4・8%増。
税収減の一方で、新型コロナ対策費などで歳出は過去最大となり、県は21年度当初で1654億円の収支不足と推計。例年より多く県債を発行し、地方債を返すために任意で積み立てている「減債基金」の全額にあたる999億円を取り崩して補った。それでも足りない分は、「財政調整基金」をおよそ半分の477億円取り崩す。
20年度に予定していた基金の取り崩しを県債発行によって取りやめるなど、県は基金をなるべく温存する方針で予算編成したという。「手元に少しでも多くのお金を残し、突発的なコロナ対応などに備える」(財政課)とし、21年度当初の財政調整基金の残高は477億円と、20年度当初と比べて13億円の減額にとどまった。
そのかわり、借金となる県債は4080億円発行することになり、当初予算としては過去最大に。このうち、国が本来交付すべき財源を補うために発行する臨時財政対策債が2500億円を占める。県債残高も5兆6404億円に膨らみ、前年の5兆5218億円を上回って過去最大となる見込みだ。
人件費や公債費などの固定経費の割合を示し、数値が高いほど財政の自由度が低いとされる「経常収支比率」は19年度で99・8%(普通会計)となり、財政の硬直化が進んでいる。
◇
新型コロナウイルス対策では、感染拡大防止と医療対策▽県民生活への対策▽経済対策を柱とし、前年度から切れ目なく予算を編成した。大村秀章知事は記者会見で「感染状況を的確に把握・分析し、適時適切に必要な対策を講じていく」と述べた。
医療面では引き続き、コロナ患者の病床を確保する医療機関への補助金に679億8068万円を計上したほか、入院病床を確保するため、回復患者の転院を促す応援金(1人あたり10万円)も継続して実施する。ワクチン対策では、4月以降に市町村が実施する接種に向け、超低温冷凍庫の運搬費や、副反応に関する地域の医療機関からの相談にあたる専門窓口の設置費など1億4722万円を盛り込んだ。
県民生活では、増加傾向の自殺を防止するため、20年度に始めたスマホアプリ「LINE」を使った相談で、相談員を1人増員して3人にするなどの体制を強化。県立学校で導入した民間のオンライン学習支援サービスは新年度も継続利用できるようにした。
経済対策では、県内旅行の代金の2分の1相当額(1人1回あたり最大1万円)を割引した業者に補助するなどの観光消費喚起事業を6月末まで継続(4億3726万円)するほか、開催が困難になっている音楽コンサートのプロモーターを支援するため、県国際展示場の会場利用料を全額補助する。就職先が決まらなかった今春卒業予定の学生らを対象に、社会人基礎力を学ぶ研修や職場実習を通じて就職に結び付ける支援事業を新たに始める。
◇