
なあアルフィン。


「何考えて泳いでるんだろうな、みんな」
これまでジョウにもらった言葉で一番嬉しかったものはなんだい。
え、一番嬉しかったジョウからの言葉?
うーん、それはねぇ……
ーー世界的に有名な水族館に来ていた。
大きな大きな水槽を前にアルフィンは口をうっすら開けて、ジンベイザメが横切って行くのを飽きることなく眺めていた。
ジョウはもう30分もそこでそうしているから、そろそろ次の展示に行かないかと切り出すタイミングを見計らっていた。

「熱心だな、掴まれたか」
「うん、すごいね、ここ」
ジンベイザメから目を逸らさず、アルフィンが答える。ジョウは、その隣を遊泳するエイを目で追いながら、

「何考えて泳いでるんだろうな、みんな」
そう呟く。
「どうかな、ご飯のこととか?」
「人間たち美味しそうだなーとか」
「ホラーだわね」
ふふ、と笑い合う。
青い世界、海に限りなく似た空間。静謐な。

「あたし、次に生まれ変わるなら魚がいいな。日がな一日、海で泳ぐの。南の国の日差しと海水に浸って、ゆらゆらって青に染まって」

「あたし、次に生まれ変わるなら魚がいいな。日がな一日、海で泳ぐの。南の国の日差しと海水に浸って、ゆらゆらって青に染まって」
そういうのよくない?と隣を見やる。
ジョウはジンベイザメになりたいのか、それともほかの回遊魚のことを言ってるのか、とちらと考えたが、「海の生き物は海の生き物なりに結構大変なこともありそうだけどな」と当たり障りのないことを言った。そして、
「アルフィンが魚に生まれ変わるなら、俺は漁師になろうかな」
「あなたが漁師に?」
「ああ、日がな一日船で漁に出て魚を取るんだ。悪くないだろう?」
「あら、漁師さんだって結構大変なお仕事だと思うわよ」
「まぁな。でも、俺が必ず魚の君を捕まえる。どこの海を泳いでいても、どんな形の魚になっていても絶対見つけ出す。そして必ず網にかける」
確信のある口ぶりでそう言うから、アルフィンは少し戸惑った顔になった。ありえないと思いつつ、この人が言うと信憑性があるように聞こえてくるから不思議。
しばらく、二人水槽を見やる。
アルフィンから沈黙を破った。
「ジョウ。ーーじゃああたしを捕まえたら、その後はどうするの?」
そんな彼女にジョウはつづけた。あくまでも穏やかに。
「魚の君を捕まえたら、もちろん食べるさ。きれいに捌いて身はもちろん骨も内臓も血の一滴まで残らないように俺が平らげてやる。ちゃんと」
だから安心して、とは言わなかったけれども。そう括るのが相応しい物言いだった。微笑さえ蓄えて。
「ジョウ……」
気を呑まれてアルフィンは言葉にならない。
そんな二人の前を、ジンベイザメがキングサイズのベッドのような巨大な腹を見せながら悠然と横切ってゆく。
ーーえ?それが、それ?
ジョウから言われた中で一番嬉しかった言葉が、それかい?
そうよ。最高にワイルドでロマンチックでしょう?あんまし素敵すぎてメロメロになっちゃったわあ〜! 頭からペロリと丸呑みよ、すっかり。
……やっぱりあんたら、心底お似合いのカップルだよ、ほんと。
end
美ら海水族館とのコラボにしてみました。
このCP、水族館デート似合いそうです。美味しく食べて貰うとしてもオコゼとかアンコウは見映えがねえ。姫にはやっぱり綺麗な人魚に生まれ変わって欲しいかな。 太陽がいっぱいみたいにワイルドでセクシーなJ君の海の男姿を想像しようにも何故か浦島太郎になってしまう。暑さで妄想も働きません。
そういや、骨まで愛してって歌がありましたねえ。
感想もとっ散らかってます。素敵な夏休みをお過ごしください。
恐ろしいことです。。…そして明日から勤務というのも恐怖です🫨こちらもとり散らかりましてすみません。お礼コメントはしっかり後ほど^_^
エギルさんとかでもいいかもですね、質問した相手、呆れ顔も、想像、できます?笑
大水槽を前にイメージしたのは、ジョウとアルフィンのカップルでした。魅入られる姫を待つジョウの姿が浮かんだ。確かにこの二人には水族館が似合います。それはきっと、水族館の青の神秘的な空間が宇宙スペースと被るからなのでしょう。コメントありがとうございます😊