ジョウに抱きしめられながら目覚める朝ほど幸せなときはない。
できればあたしが先に起きて、彼がまだ眠っているといい。
逆だと、少し恥ずかしい。寝顔を間近で見られてるってことだから、
できれば彼より先に起きるのがベスト、なのだけれど……。
今朝は願いはかなわなかったらしい。あたしは、ジョウのどアップ、息がかかる近さで目覚めた。
「……ジョウ」
ジョウは目を細めて「おはよう」と微笑んだ。
あたしはやだ……目ヤニとか、涎とか、やばめなモノついてないわよねとそっと身を縮めながら「おはよ」と返した。ブランケットを鼻先まで手繰り寄せる。
顔半分、覗かせるような恰好で彼に尋ねた。
「いつから起きてたの」
ジョウはんーと少し考えるふりをして、
「30分くらい前かな」
と答える。その口ぶりから、あたしはもっと前から起きていたんだろうということが分かる。
「起こしてくれればいいのに」
つい、零してしまった。でも彼は穏やかに言う。
「逆だったら同じことしたろう?」
ーーう。確かに。
きっと、ずっと見つめていたと思う。彼の寝顔を。
好きな人の寝顔って、なんでこんなに愛おしんだろう。何時間でも飽きずに見てしまうもの。
そこでふと、あたしは気づいた。彼の部屋(かもしくは自分の部屋)で夜をともに過ごしたとき、決まってあたしはジョウの左側で眠るということに。現にいまも、彼の心臓のある方に額を押し当てるかたちで寝そべっていた。
「そう言えばいつも、こっちね。あたし、あなたと眠るときは。気が付いていた?」
ジョウはああ、という風にうなずいた。
「今気づいたのか」
「え、わざとなの。意識的に右側にいた?」
あたしは驚いた。ジョウはうん、と言おうかどうか迷うような仕草を見せて、「利き腕を空けておいた方がいいと思って」と言った。
そうか、なるほど。さすがはジョウ、とあたしは納得する。
「それに、心臓の音が聞こえる方が君が眠りやすいかなとも思う」
「……ありがとう」
じんわりと温かいものが胸に広がる。
とくん、とくんと愛おしい音を聞きながら、毎夜夢の中へ吸い込まれるように落ちていった気がする。あれはあたしを安心させるためのジョウの配慮だったのだ。
優しい人。
「好き、ジョウ」
嬉しくなってあたしは彼の胸に頬ずりをする。と、あたしの髪をそっと撫でながらジョウは声を潜めた。
「……なんで利き腕を空けておきたいか、理由を訊かないのか」
「えっ」
思わず顔を上げたあたしに、キスを刻みジョウは右手をすっと動かした。
あたしの太ももの合わせ目に。
あ……。
官能的な手つきにあたしはぞわっと肌に波が立つ心地がする。
ジョウはあたしの反応をじっくり見ながら「このためだよ」と囁く。
そのあいだにも、彼の手はあたしの内ももに忍び込み、ショーツの布地へと上がってくる。
たまらず、膝を摺り寄せると、
「力を抜いて。気持ちよくしてやるから」
甘い声が耳に置かれた。
「でも、起き抜けよ。朝なのに」
「朝の方が感じやすいだろう?」
ジョウはそう言って布地の上からあたしの形を露わにしようと指先でまさぐった。やだ、声が……漏れちゃう。
歯を食いしばってこみ上げるものをぐっと堪える。ジョウはあたしの必死さにボルテージを上げられるのか、より一層巧みに指を使いだした。
彼があたしの右側で眠る理由。それをとくと教えられた、ある朝のこと。
END
ぎりぎり、R指定をかけないラインで書きました。
よろしくお願いします。
よもやそんな理由だったとは。。。私の感心を返して、つか、直接的表現に勝るとも劣らないすごーくエッチな姫初めに赤面。
新作ありがとうございました。