「だって、ピザンにはあんな虫いなかったわよ? 何でミネルバには、次から次へとアレが湧いて出るの? しかも特にキッチンに!」
あたしのシマに、と興奮気味にまくしたてるのはアルフィンだ。
名前を口に出すのもおぞましいと見える。リッキーはやれやれと肩をすくめた。
シマ、なんて俗っぽい用語、軽く口にするようになっちゃったなという少しがっかりした気持ちと、アルフィンもいよいよ本物のクラッシャーだねえという誇らしい気持ちがないまぜになったものの現れだ。
「アルフィン、それはさ、アルフィンがお姫様だったから、そういう虫が湧いても目に触れないようにおつきの人たちがこっそり処理していたんだと思うよ? 決してピザンに例のあれがいなかったってことじゃないと思うなあ」
リッキーがそう言うと、アルフィンは不満そうに眉をひそめた。
「そうかな。ピザンには生息してないと思うけど……」
「ミネルバには多数生息してると思うぜ。一匹見かけたらその巣には何百とお仲間がいるらしいから」
「ぎゃああああ。や~め~てええ」
アルフィンは頭を掻きむしった。
「なんだなんだ、騒がしいな」
そこへ、自動ドアをくぐってジョウがリビングに姿を現す。
二人の様子を見て怪訝そうな顔をしている。
「どうした? また喧嘩か」
「喧嘩なんかしないよ。タロスとでもあるまいし」
「聞いて、ひどいのよジョウ、リッキーったらあたしのこと苛めるの。Gが……あの虫が、この船にいっぱいいるって、あたしを、あたしを追い詰めるのよう」
よよよ、と身も世もなく泣き崩れる(振り)をする。
「あ、きったね。誰もそんなことしてないよ」
慌ててリッキーが目でジョウに訴える。
俺ら無実だと必死で。
ジョウはいなした。
「わかってる。アルフィンは神経質だな。高々虫のことだろう、キッチンにふらっと出てきても適当に無視してりゃいいんだよ。実害ないんだし」
「ーー」
「え」
今なんて? と言いたげに大きく目を見開いて、アルフィンもリッキーもぴたりを動きを止めた。そしてジョウを振り仰いだ。
アルフィンはかすかに唇を震わせて。眉を、これでもかというほど吊り上げて。信じがたいものを見た、聞いたとでもいうように。
「な、何だよ」
予想外の強い反応に思わずジョウはたじろいだ。
「っうわ、兄貴、それは、それはないぜ……引くわ~」
呆れかえった声でリッキーが喉からそう絞り出した。自分で自分の身体を抱きしめる。身震いしている。
「え? え? なんだよ」
おたつくジョウ。困惑顔で二人を交互に見やる。
「ジョウがそんな人だって思わなかった……ショックだわ。最低」
ぼそっと呪詛を口にするような暗い声でアルフィンがつぶやく。
重苦しい声と表情だった。
最低? え、俺最低なのか。
そんな蔑まれるようなこと、俺いま口にした?と我が身を振り返る。でもどう考えても心当たりはない。
単に頭に浮かんだこと、思ったことを口にしただけなのに。
「さぶ、真冬キタいきなり。さぶすぎ、俺ら風邪ひいちまう」
撤収する! と言いおき、リッキーがリビングから立ち去った。
「あ、おいリッキー、なんだよ」
ジョウと部屋に取り残されたアルフィンも、警戒の色を露わにしてじりじりと後ずさり、ジョウと距離を保とうとした。
「アルフィン。どうしたってんだよ、いったい」
「ジョウ。正直がっかりよ。あなたがそんな人だなんて思わなかった……。Gのことはもちろんだけど、今日は、ジョウの言動……ううん、感性にうちのめされたわ。自覚ない分、余計にね」
もう行くわね。そう言ってアルフィンもドアに向かう。取り付く島もない。
ジョウは焦って追いすがった。
「アルフィン、待ってくれ。俺、何か気に障ることしたか。ここに来てGの話をし始めたら急にーーもう、何が何だか」
「ジョウ、自覚がないのが一番悪いわ。罪深いのよ。
あなたがここで今あたしたちに何をしたのか、何を言ったのか、自分のことをようく振り返ることね」
きっぱりと強い目で言って、アルフィンは立ち去った。
振り返ることもなくーー。
ジョウは文字通り途方に暮れた。キツネにつままれたように、二人が消えたドアを眺めやり、
「何だよ……。ただ、ゴキの話をしただけだろ。会話に普通に加わっただけじゃないかよ」
泣きそうな声でそれだけ呟いた。
たまに、リーダーのジョウがチームメンバーにこのように弄られることもあるという、そんなお話。
END
くだらない続きのお話になっちゃった……。ジョウごめん。
新婚旅行で行ったグアムでのこと。
スコールに降られ、急遽世界的フライドチキンチェーンに入ったら...入口から延びる廊下の壁に奴が。
でも、2度目の遭遇で、奴なのかよく分からない。
騒いでいるお客もいないし。
店を出てから、夫と確認しました。
ジョウは、アメリカ人的考えなのね。きっと。
泣く子も黙るクラッシャージョウがGの話で泣かされそうに!
うん…でもやっぱり無視はちがうよね、J君?今でこそ宇宙暮らしだけど子供の頃は自然豊かなアラミスで野生児として暮らしていたからの感性に違いない、そうだ、そう思おう。
そうかやっぱり君は大阪人が言うところのオモンない奴だったんだね。。。
それぞれに、Gのと思い出がありますよね。遠い目
アメリカ映画などで、Gとの戦い、撃退劇などを描いたものはあまりないような気がしません?日本人がとりわけ彼と相性悪いのかなあ〜
これからジメジメの梅雨が来ますね☂️Gたちが喜びそうな季節が…