大手町の片隅から 副長官、逃げ回ってはダメです 乾正人

 

【大手町の片隅から】副長官、逃げ回ってはダメです 乾正人

政治記者を三十数年やっていると、たまに「政治の話をしてくれ」と頼まれることがある。

書くより話す方がよほど楽なので、日程さえあえば出かけるようにしているのだが、勉強になるのは、質疑応答の時間だ。会場から誰からも手があがらなければ、失敗である。話がつまらなかった証拠で、とっとと帰るに限る。

「木原問題」とはなにか

逆に質問が途切れなければしめたもの。政治に関心のある人々が、今どんなことに最も興味があるのかを労せずして知ることができる。

最近では、「あの人」のあれこれについて、が質問タイムの大半を占めるようになった。「あの人」とは、「文春砲」に攻め立てられている木原誠二官房副長官である。

週刊文春が毎号、彼と夫人に関する〝疑惑〟について詳しく報じる一方、新聞やテレビは、あまり取り上げていないので、余計に人々の関心を引いているのだろう。

簡単に「木原問題」をおさらいするとこうなる。

① 17年前にX子さんの夫(当時)が自宅で血まみれの遺体で発見される。警視庁は自殺で処理。後にX子さんは、木原氏と結婚。

② 5年前に警視庁が再捜査。X子さんも任意で事情聴取されるが、捜査は事実上打ち切りに。

③ 7月28日、X子さんを事情聴取した元捜査官が実名で記者会見し、「これは明らかに殺人事件だ」と断言。警視庁は改めて「事件性はない」と発表。

かつて流行(はや)った2時間ドラマのような展開だが、主人公が「総理大臣への登竜門」といわれ、将来有望な政治家が起用される「内閣官房副長官」だからこそ、世間の注目を集めているのだろう。

では、官房副長官は、どんな仕事をしているのか。

 

内閣法14条第3項では、「内閣官房長官の職務を助け、命を受けて内閣官房の事務をつかさどる」だけでなく、「官房長官不在の場合その職務を代行する」と規定している。要するに、日本政治の要である首相官邸において、首相、官房長官に次ぐナンバー3の座を占めているのだ。

「内閣の要」機能停止す

官房長官は、内閣の要とよく言われるが、官房長官よりも副長官の方が目立つ政権もあった。小渕恵三官房長官時代(竹下内閣)の小沢一郎副長官が典型で、日米貿易摩擦問題を仕切るなど、番記者を引き連れ、飛ぶ鳥を落とす勢いだった。

財務官僚出身で、「法案を自分で作成できる岸田派議員は彼ぐらいなもの」(自民党幹部)といわれる木原氏は「小沢型副長官」といっても過言ではない。その分、官房長官の影が薄いのは否めないが。

だが、木原氏はこの1カ月ほど記者団との接触を完全に絶っている。首相官邸にも表玄関から入らず、裏口から出入りしている。7月の首相外遊も直前になって同行をキャンセルしている。明らかに「内閣の要」は機能を停止している。2週間後には、東アジアの今後を占う大事な日米韓首脳会談も迫っているのに。

 

一刻も早く、記者会見を開いて身の潔白を示してもらいたい。このまま逃げ回っていては、自身だけでなく、岸田政権も終わってしまいますぞ。(コラムニスト)

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