マイナ保険証では"大損"する人が続出…廃止される健康保険証だけに記載された最重要情報で医療費は雲泥の差

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マイナ保険証では"大損"する人が続出…廃止される健康保険証だけに記載された最重要情報で医療費は雲泥の差 - ライブドアニュース

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■マイナ保険証ではわからない患者の「最重要情報」とは?

という現状を踏まえ、報告したいのは、冒頭で触れた健康保険証に記載されている患者の医療費負担を左右する「最重要情報」についてである。繰り返しになるが、この情報はマイナ保険証には記載されていない。

その情報とは「保険者」だ(【図表2】参照)。

保険者とは、健康保険事業の運営主体のことを指す。保険者は、加入者の職業などによって異なる。筆者のような自営業者が加入するのは「国民健康保険」で、住所のある自治体が保険者として健康保険証に記載されている。

会社員が加入する健康保険は「全国健康保険協会」と「健康保険組合」の2種類がある。前者は、いわゆる「協会けんぽ」と呼ばれ、おもに中小企業に勤務する会社員やその家族を被保険者とする。後者は、単一の企業で設立する組合、同種同業の企業が合同で設立する組合などがあり、いわゆる「組合健保」と呼ばれている。おもに大企業に勤務する会社員やその家族などを被保険者とする。なお、公務員なら「共済組合」がある。

つまり、現行の健康保険証を見ると、保険者が確認でき、その患者が入院や手術、治療を受けた場合の医療費を軽減させる公的制度の有無がわかる。

とくに、保険者が共済組合(公務員)や組合健保(大企業など)の場合、健康保険法で定められた保険給付(法定給付)に加え、任意で一定の上乗せ給付である「付加給付」を行っているところも少なくない。

例えば、高額な医療費を軽減できる「高額療養費」は、69歳以下、年収約370万~770万円の一般(区分ウ)の場合、総医療費が100万円かかったとしても、高額療養費のしくみで、自己負担限度額は8万7430円まで抑えられる(【図表3】参照)。3割負担で30万円支払うところが、この額に値引かれる。とても助かる話である。

さらに付加給付があれば、自己負担限度額のハードルは、さらに低くなる。厚労省の指導では、付加給付の額は1人1カ月当たり2万5000円となっており、この額だとすると、自己負担限度額は2万5000円まで。どれだけ医療費がかかっても、保険診療なら月2万5000円の負担で済む、というオトクすぎる仕組みである。9万円近くの負担額がなんと3分の1以下の2万5000円でいいのだ。
※出典=『がんとお金の真実(リアル)』黒田尚子(セールス手帖社保険FPS研究所)
■ほとんどの人が「付加給付」の存在に気づいていない

付加給付の内容は、組合健保によってさまざま。患者の保険証を見ると組合健保の名称がわかり、パソコンやスマホで検索して直接確認することもできる。

いくら医療費が高額でも、この付加給付があれば大幅に負担が軽減できる。そもそも大企業は福利厚生が手厚い場合が多い。医療機関の看護師やMSW(メディカルソーシャルワーカー)も患者やその家族から、仕事やお金のことで相談を受けた際、組合健保で付加給付があると、ほっと胸を撫でおろすケースも少なくないのだ。

実際、筆者も薬物療法の費用が毎月15万円かかる乳がん患者・A子さんの相談を受けたことがある。A子さんは、医療費があまりに高額なので担当医に治療を続けられないと訴えたという。確認すると、付加給付があって、実質の自己負担額は月2万円で済むとわかり、A子さんは、治療を続けることになった。

なお、付加給付の還付金は、治療を受けた月の2~3カ月後に、別途口座に振り込まれる場合もあるが、給与と一緒に支払われる場合も多い。

A子さんも、すでに還付金が振り込まれていたはずなのだが、付加給付のことは気づいてなかった。「あれ? 今月なんか手取り多いなあ。残業したっけ?」くらいにしか感じていなかったそうある。

それくらい「保険者」というのは医療機関にとっても患者や家族にとっても重要な情報なのだ。ところが、これがマイナ保険証に切り替わると、これらの情報は一切わからなくなる。患者から直接確認する必要が生じてしまうのだ。

前掲のA子さんに限らず、筆者の経験上、病気になるまで付加給付の存在を自覚している人は、ほぼいない。付加給付は、高額療養費付加給付のほか、差額ベッド代や長期入院に対する給付、傷病手当金や出産手当金に対する上乗せなど、さまざまな手厚い給付がある。

付加給付の内容を認識していれば、民間医療保険への加入の必要もなく、ムダな保険料を払わずに済む。だが、組合健保の場合は手続きを保険者側がやってくれるか、向こうから連絡が来るので、ただ待っていれば良い。そんな恵まれた環境にいると、管理意識が鈍感になって付加給付の存在さえ忘れてしまうこともあるかもしれない。

マイナ保険証に関しては、情報漏洩やシステムへの不信感、性急に廃止を推し進める国のやり方に反発する声もある一方、デジタルヘルス化は時代の潮流であり、マイナ保険証への移行はやむなしといえるだろう。

ただし、今回ご紹介したように、マイナ保険証に切り替わることで、大切な情報が得られなくなるケースもある。その結果、大損をしてしまうことになるかもしれないのだ。

重要なのは、病気になる前から、自分が使える公的制度や勤務先の福利厚生などの社会資源をしっかり確認しておくこと。それがあなたの財布と体を守ってくれるのだ

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