「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成25(2013)年10月14日(月曜日、祝日)
ドイツ人は落ち着きを無くしてしまったようだ
検証しないで嘘の日本報道を垂れ流す質の悪いジャーナリズム
♪
川口マーン惠美『ドイツで、日本と東アジアはどう報じられているか?』(祥伝社新書)
本書を読んで考え直したドイツ人のイメージとは、
「あんたたち、チョットあたまが悪いの?」
従来、日本人が漠然と描いてきたドイツ人は「勤勉、知的、効率重視、技術力に富む、EUの優等生」という強い印象である。
ところが本書を読むと、まったくイメージと現実が180度逆転しそうになる。
第一にドイツ人ジャーナリストの質の悪さ、固定観念からぬけきれず先入観で日本のことを悪く悪く報道する。しかも「検証しない」。
ジャーナリストの初歩も知らないようである。所詮、ドイツからみれば中国が近くて大市場があり、日本は遠すぎる。
第二はドイツ人が重厚な性格の傍らで、同時に重症とも言えるおっちょこちょいな性格をもつようである。
東日本大震災のおり、日本から逃げ出したのは中国人が圧倒的だったが、第二位はドイツ人だった。ほかに大阪に大使館を移した慌て者もいたが、逆にスリランカは大統領が在日同胞に呼びかけ「動かないで、焦らないで」と訴え、被災地にも大統領が飛んできた。
じつは震災から三日目だったか、たまたま日本にいた川口さんと評者(宮崎)は池袋で食事をして、それからワインを飲みに行ったとき「ドイツにいる主人から『何してる? 危険だから早く帰りなさい』と毎晩電話があるのです」と嘆かれていたことを思い出した。
ドイツのマスコミ報道が「検証なしに行われる」から嘘の垂れ流し状況がつづき、したがって殆どのドイツ人は「尖閣は中国のもの」と誤解し、日本に対して悪い印象を持っているというから始末が悪い。
著者の川口マーン惠美さんはドイツ在住の作家、ジャーナリストだが、いつも鋭角的な状況報告と炯々な問題提議で知られる。しかも観察が細かい。政治の事態を「作家の目」でも見ているからだろう。
だから言うのだ。「ドイツの報道は不公平で質が悪い」と。
そうした表現が随所にでている。
「ドイツと中国の関係は片思いではなく、互いに互いを必要としている冷静な利害関係にみえる。純粋な愛情で結ばれていなくても、理想的なパートナーシップは存在するのだ」。
したがってドイツは中国の人権侵害を無視しても平気、この感覚はフランスとは違う。
以前はドイツの町を歩いていると『日本人ですか』と声をかけられた著者も、最近は喫茶店にはいっても、ウェイターが得意そうにニーハオと挨拶してくるそうな。
著 者と同じく30年以上もドイツにくらす或る日本人教授は「最近、あまりのも中国人と間違えられることが多いので、そのたびに、『東洋人が何人かわからない ときは、中国人かと聞かずに、日本人かと尋ねなさい。中国人と間違えられて喜ぶアジア人はいないからね』と引導を渡している」そうである。
笑えない現実。ドイツの反日報道ぶりの偏向の裏側に中国の情報工作もあるに違いない。