真珠湾攻撃の日」に考える 乾正人

 

【大手町の片隅から】「真珠湾攻撃の日」に考える 乾正人

生来の朝寝坊なのだが、最近は朝7時50分には起きるようにしている。NHKの連続テレビ小説「ブギウギ」を観(み)て泣くためである。

「ブギウギ」は、終戦直後の大ヒット曲「東京ブギウギ」などで知られる歌手・笠置シヅ子をモデルにした一代記だが、脚本・演出・役者の三拍子揃(そろ)った近来稀(まれ)に見る出来なのだ。旧ジャニーズ事務所所属の人気者が、主役を務める大河ドラマとは比べるべくもない(まぁ、徳川家康自体が嫌いなのだが)。

「大空の弟」に慟哭(66 どう  こく )す

今週は、昭和16年12月8日の日本軍による真珠湾攻撃にあわせ、弟の戦死に打ちひしがれる主人公と父の姿を中心に描いているのだが、戦果を伝える大本営発表に沸いた当時の世相をリアルに描いている。

悲しみのあまり満足に歌えなくなった彼女のため、作曲家の服部良一(役名は羽鳥善一)がつくった「大空の弟」(歌詞は変えている)が、ドラマで復刻されたのも涙、涙である。戦時歌謡をかなり聴いている部類の私も知らなかった幻の名曲で、戦後長らく封印され、楽譜もつい最近になって発見されたという。

「月刊正論」の最新号(令和6年1月号)には真珠湾攻撃に参加した105歳になる元航空兵の証言が載っているが、当時の「リアル」を知る人々は、本当に数少なくなった。

今や戦後生まれは、全人口の9割近くなり、日本と米国がかつて戦ったことさえ知らない学生も珍しくなくなった。しかも戦後世代は、「平和教育」の影響を大きく受けてしまったようだ。

最新の世界価値観調査では、「国家のために戦いますか」という質問に、日本人は約13%しか「はい」と答えていない。もちろん、世界最低だ。同じ敗戦国であるドイツの約45%とは段違いである。

 

連合国軍総司令部(GHQ)が戦後、教育やメディアを通じて植え付けた「日本だけが悪かった」という「GHQ史観」から抜けきっていないのである。これでは、祖国のため心ならずも戦場に散った「六郎」ら幾百万の同朋(どうほう)に申し訳が立たない。

「植民地支配」の贖罪(しょくざい)として日本は韓国に貢げ、という旧統一教会(世界平和統一家庭連合)のとんでもない教えをいとも簡単に一部の若者が、素直に受け入れたのも「GHQ史観」のなせる業である。

岸田首相も「歴史」に学べ

ドイツの宰相ビスマルクは、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と喝破したが、さきの大戦が「歴史」になろうとしている今こそ、岸田文雄首相をはじめ政治家も我々も歴史に学ばねばならない。

なぜ、日本と米国は戦わなければいけなくなったのか。それ以前に、日本と中国はなぜ戦ったのか。当時の日本人は、どういう思いで戦争に向き合っていたのか。

戦争末期、東京や大阪など大都会は空襲で焼き払われ、広島、長崎は原爆の惨禍を被った。ウクライナやガザで繰り広げられている惨劇は、人ごとではない。

 

今こそイデオロギーを排して「歴史」を振り返り、かつての失敗を直視して現代に生かさねばならない。日本が再び「敗戦国」とならぬために、「12・8」を日本と世界のこれからを考える日にしたい。(コラムニスト)

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