セッションズ司法長官の今回の書簡は、議会側が「ロシア疑惑」に関連する新たな疑惑について特別検察官を任命して捜査するよう要請したことへの答えだった。その疑惑とは、民主党のオバマ政権時代にクリントン国務長官が直接関わった、ロシアによるウラン開発企業の買収が不適切だったという疑いである。
司法省はこの書簡で、ヒラリー・クリントン氏ら民主党側への捜査の必要性と、特別検察官の任命を検討していることを表明したというわけだ。
議会では上下両院のそれぞれの司法委員会や情報委員会が、すでにクリントン氏とロシア側との不正なつながりの疑惑を、特にカナダのウラン企業の買収に焦点を絞って調査を開始している。
ロシア側がクリントン財団に寄付金
疑惑を指摘されたこのウラン企業問題では、これまでに以下の諸点が確認されている。
・ヒラリー・クリントン氏がオバマ政権の国務長官だった2010年当時、カナダの「ウラニウム・ワン」という企業を、ロシア政府の原子力機関「ロサトム」が買収した。ウラニウム・ワンは米国のウラン資源の5分の1を保有しており、買収には米国政府の特別な許可が必要だった。
・クリントン氏は国務長官としての立場でも売却を積極的に推進し、ウラニウム・ワンはロシア政府の傘下企業となった。共和党側からは当時「この売却は米国の国家安全保障を大きく傷つける」という批判が起きたが、売却は完了してしまった。
・この企業売却交渉の最中にビル・クリントン元大統領は、ロシアの政府系投資銀行に招かれて講演を行い、1回の講演で50万ドルという破格の謝礼金を得ていた。
・さらにウラニウム・ワン売却の前後に数回にわたり、「クリントン財団」にロサトムやその他の政府関連の人物、団体から合計1億5000万ドルに及ぶ寄付金が贈られた。クリントン財団はクリントン夫妻が人道支援を目的に主宰する慈善団体である。
・この企業売買を促進するために、ロサトムの子会社「テネックス」の米国担当代表、バディム・ミケリンという人物が米側関係者らに総額70万ドルの賄賂を贈ったという罪で米国で起訴され、2015年に懲役4年の判決を受けた。
以上のような新展開を受けてトランプ政権や議会共和党の側は、「ロシア疑惑」は共和党ではなくむしろ民主党側にこそ存在するとして、この11月頃から一気に非難の声を高まらせてきたというわけである。