NATOの強国ドイツがアメリカに背いてロシアと手を組む理由

なるほどの解説

 

NATOの強国ドイツがアメリカに背いてロシアと手を組む理由(川口 マーン 惠美) @gendai_biz

米独対立はエスカレートする一方

「Nord Stream 2」とは何か

この4年間、ドイツとロシアが渾身の力を込めて進めてきた海底パイプライン・プロジェクト「Nord Stream 2」。この建設をめぐって、米独の対立がエスカレートしている。

同プロジェクトは、アメリカによる制裁ですでに去年から大幅に滞っていたが、今年6月の初め、米上院議会に、さらに厳しい制裁のための新法案が提出されたという。

アメリカが大金を使ってNATOに参加しているのは、ヨーロッパをロシアの軍事的脅威から守るという意味合いが大きい。なのに、肝心のドイツが、ロシアとのプロジェクトを拡大しようとしているのだから、アメリカが頭に来るのも無理はない。

しかも、このパイプラインが軌道に乗れば、ヨーロッパのエネルギーのロシア依存が決定的になる。ちなみに、ドイツの天然ガス輸入のロシアシェアは、すでに50%を超えている。

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ところがドイツ人は都合の悪いことはたいてい聞かず、すべてトランプ大統領のせいにする。現在の制裁も、自国のシェールガスを売ろうとしているトランプの陰謀なのである。しかし、今回、上がっている法案は、実はトランプではなく、民主党の主導だ。

Nord Streamというのは、ロシアからバルト海の海底を通ってドイツに直結しているパイプライン。2011年に1本目が完成し、1200kmのパイプを通って直輸入されたロシアのガスが、ドイツを通じて西ヨーロッパ各地に供給されている。その量、年間550億㎥。

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そして今、その横にもう1本並行して建設中なのが、問題含みの「Nord Stream 2」。当初の完成予定は19年の暮れだったが、アメリカが茶々を入れたため、完成は21年に繰り込むと言われている。

ロシアの苦しい懐事情

ロシアは軍事大国ではあるが産業は貧弱で、はっきり言ってエネルギー以外に何もなく、GDPは天然ガスや石油を売ったお金で成り立っている。だから、彼らにとって「Nord Stream 2」は、収益倍増の超重要プロジェクトだ。ほとんど国家のライフラインといえる。

ただ、このプロジェクトに反対しているのはアメリカだけではない。たとえば、ウクライナやポーランド。この国々には、ロシアから西欧につながる陸上パイプラインが走っている。つまり、彼らはこれらパイプラインの使用料でかなり稼げるうえ、これが、ロシアに対する安全保障の担保ともなる。ロシアは、ガスの輸送で依存しているこれらの国々とは、むやみに紛争を起こせないからだ。

05年から06年にかけての冬、ロシアとウクライナとの間でガス紛争が激化したことがあった。ロシアは、かつてソ連邦の一員であったウクライナに対しては、今でも特別価格で天然ガスを供給している(パイプライン使用料とのいわゆるバーター契約)。

ところが、ウクライナは自由自在にガスを抜き取るわ、料金は踏み倒すわで、ロシアの堪忍袋の尾が切れた。当時のウクライナ政府は04年のオレンジ革命で成立した新政権で、ロシアに極めて反抗的だったのだ。

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そこで05年、ロシアがガスの値上げを断行しようとしたところ、ウクライナが拒絶。そこで、ロシアはウクライナ向けのガスの供給を減らしたのだが、ウクライナは今まで通りガスを抜き取って使ったため、結果的にヨーロッパ向けのガスが枯渇した。

それがおりしも極寒時で、そうでなくてもガスの消費量が増えていたヨーロッパは大混乱に陥った。しかも、こういうときに限って風も吹かず、風力タービンが役に立たなかった。

これに懲りたロシアは、以後、一層、ドイツ直結の海底パイプラインを渇望するようになった。現在、ロシアは822億㎥ものガスをウクライナ経由で売っているが、「Nord Stream 2」が完成すれば、ウクライナの重要性は失われ、ロシアにとっての癪の種は消える

ロシアとウクライナの関係は、クリミア半島併合以来、これ以上悪くなれないほど悪化しており、ロシアが「Nord Stream 2」に前のめりになるのは当然のことだった。

EU国のドイツへの反発

一方、ドイツにとってもこのパイプラインは重要だ。

原発を予定通り22年で止めれば電気が足りなくなることは必至だが、その上、石炭と褐炭も、38年、できれば35年までに止めることになっている。そうなれば、風や太陽の電気だけでやってはいけるわけはなく、頼りになるのはガスしかない。

つまり、ドイツ政府が、何が何でも「Nord Stream 2」を完成させたいところはロシアと同じで、そのため、ウクライナやポーランドに、彼らが「Nord Stream 2」のせいで失う利益を保証する約束までしていた。

 

工事はすでに、シベリアのガス油田からバルト海の積み出し港までの陸上パイプラインも、ドイツ側の陸上パイプラインもほぼ完成している。後は、海底パイプライン1200kmのうち、最後の200km足らずだったが、それが、今、止まっている。特殊な工事を請け負っていたスイスの会社が、アメリカの制裁で降りてしまったからだ。

「Nord Stream 2」に反対している国はまだある。実は、こともあろうにEU委員会も反対している。委員会は、港からヨーロッパ各地にガスを運ぶためにドイツが新設した陸上パイプラインを、ロシアのガスプロム社だけが使うことを許可しない。

とは言え、この地域には、運ぶべきガスはガスプロム社のものしか存在しないため、これはEU委員会のドイツに対する嫌がらせっぽい。EUの国々は、天然ガスの蛇口をドイツに握られることを嫌っている。

そもそも、ロシアがクリミアを併合して以来、EUは嫌々ながらも、アメリカ主導のロシア制裁に歩調を合わせてきた。ロシアと交易すると、アメリカとの取引ができなくなるため、多くの企業がロシアへの輸出を諦め、欠損を出している。

なのに、ドイツだけがロシアと組んだこの大プロジェクトを強引に進めているのだから、その身勝手さに対して周りからの反発は大きい。

独米関係は最悪に

ただ、「Nord Stream 2」に関しては、ドイツも必死だ。この期に及んで、さらなる制裁など掛けられては堪らない。

そこで今月初め、どうにかして新法案を取り下げてもらおうと、経済・エネルギー委員会の担当議員が米上院議会に宛てて、かなり強硬な陳情書を提出したという。

その内容は、「内政干渉はやめろ」、「アメリカは、EUが民主主義的な手続きで決定した事案を尊重すべき」というもの。しかし現実には、そのEUの足並みが揃っていないのだから、ドイツの悩みは大きい。

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なお、「Nord Stream 2」に関する現在の制裁内容は、このプロジェクトに参画している企業に対するものだったが、今回の新法案が通れば、同プロジェクトに協力した事業者、保険会社、役人までが、たとえその協力が直接的なものでなくても、米における資産凍結、および入国禁止などの罰則を受けることになるという。

現在、様々な問題で独米関係は最悪になっているが、これによりドイツ人のアメリカ憎悪が、ますます激しくなるかもしれない。

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