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山下智久「正直不動産」は隠れた名作 今どき珍しいドラマと言えるワケ
山下智久「正直不動産」は隠れた名作 今どき珍しいドラマと言えるワケ(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース
山下智久(37)が主演しているNHKの連続ドラマ「正直不動産」(火曜午後10時)が評判高い。リクエストに応じる形でNHKは17日深夜から2度目の再放送に踏みきった。どうして人気なのか。その理由を深掘りする。
考察モノやラブコメ、刑事モノがドラマのほとんどを占める中、不動産業界を舞台にした「正直不動産」は古くて新しいタイプのドラマである。
このドラマと近いタイプの作品は昨年1月期に放送された「その女、ジルバ」(フジテレビ系)にほかならない。こう書くと首を傾げる向きも多いだろうが、観る側に「働くこと」「生きること」を考えさせる点で同じだ。 最近のドラマが観る側に考えさせるのは真犯人や伏線の意味くらい。自分自身に関わることを考えさせる作品は貴重だ。
かつては倉本聰さん(87)が脚本を書いたフジ「北の国から」(1981~2002年)や山田太一さん(87)による「ふぞろいの林檎たち」(1983~1997年)など観る側に自分を見つめ直させるドラマが多かった。けれど視聴率最優先の風潮が強まって、そんな作品はほぼ姿を消している。
ギャラクシー賞に入賞するなど質への評価が高かった「その女、ジルバ」だが、全10話の平均視聴率は世帯4.4%、個人2.3%。土曜午後11時台の放送とはいえ、驚くような数字ではない。「正直不動産」の6話までの平均視聴率も世帯5.5%、個人3.1%。突出しているわけではない。
では、どうして評判高いのかというと、この2つのドラマは観る側に働くことの意義などを考えさせるだけでなく、感動も与えてくれて、見終わった時には爽快な気分にさせてくれるからだ。観た人の「数」が膨大でなくとも「満足度」が高い。刺さるのである。
最近は視聴率が高くても終わった途端に忘れられてしまう作品が目立つ。面白さ第一で観る側に真犯人と伏線の意味くらいしか考えさせないためだ。
実は倉本作品と山田作品は爆発的な視聴率を獲ることがなかった。それなのに、ずっと語り継がれている。廃れていない。「その女、ジルバ」「正直不動産」も同類の作品である。だから両作品は古くて新しい。
ちなみに両作品を実質的に制作している制作会社は同じで、テレパック。TBS「ありがとう」(1970年)やNHKドラマ版「八日目の蝉」(2010年)を手掛けたドラマづくりの名門である。また原作は「その女、ジルバ」が「ビッグコミックオリジナル増刊号」に掲載された漫画。「正直不動産」も「ビッグコミック」の連載作品だ。両誌とも良質の大人向け漫画誌として知られる。2つのドラマに共通点が多いのは偶然ではないだろう。
清々しい永瀬の活躍
「正直不動産」の主人公は登坂不動産に勤務する営業マン・永瀬財地(山下智久)。売上高1位のエース社員ながら、社内で「ライアー永瀬」と陰口を叩かれていた。自分の成績を伸ばすことしか頭になく、客にウソを並べ立てていたからだ。
そこまでして働く目的はカネにほかならない。登坂不動産は基本給の割合が低く、成績を上げることによって高額のインセンティブが得られる給与制度になっていたためだ。
もっとも、永瀬のウソつき生活は第1話で終わる。やっぱりウソをついてアパートのサブリース契約を結ばせた和菓子店主・石田努(山崎努)の住宅敷地内にあった祠をぶっ壊したところ、その祟りでバカが付くほど正直な人間になってしまったのだ。
その後、自分のウソによってアパート経営にリスクがないと信じ込んでいた石田に対しては「リスクなんて当然あるに決まってるじゃないですか」と言い放つ。石田は茫然自失となる。
第3話では、夫の警察官退職後に駄菓子屋を開こうとしていた夫婦に計画の甘さを指摘する。妻のほうが高収入で高級マンションをペアローンで購入しようとしている夫婦には将来離婚した際のリスクを説く。どちらからも怒られた。そりゃそうだ。
バカ正直は社内でも同じ。イケイケの上司・大河真澄(長谷川忍)から飲みに誘われると、「激安居酒屋で激安ハイボールおごるくらいで恩着せがましいんだよ」と詰り、断る。やっぱり怒られた。
そんな永瀬をクスクス笑いながら観ていると、ふと考えさせられる。働く人間の大半は過去の永瀬と同じくウソをつきながら日々を過ごしている。 「コイツは無能で卑劣だ」と、軽蔑している上司であろうが、その言葉には逆らえない。顔も見たくない同僚に笑顔で接しなくてはならない時もある。
過去の永瀬ほどではないが、働く人間にはウソが求められる場面がある。思ったことをそのまま口にしていたら、変わり者扱いされるのがオチ。だから正直な永瀬の奮闘ぶりは観ていて清々しい。「こうありたい」と思うようになる。
描かれる「働く意味」
働く意味も考えさせる。第5話。ライバルのミネルヴァ不動産が、永瀬の部下・月下咲良(福原遥)の父・昌也(加藤雅也)に対し、東京・小金井の3LDKのタワーマンションを9180万円で売ろうとした。築5年でリノベーション済みの中古物件である。
築浅なのにリノベーションしていることから永瀬は不審の目を向ける。欠陥住宅だと睨む。ウソつきだったころから能力はあるのだ。永瀬は住宅診断を行うインスペクター・町村隆司(中村靖日)に調査を依頼する。
ところが町村はミネルヴァ不動産に鼻薬を嗅がせられていた。今後、仕事をまわすことを条件に、不都合な点があっても見逃すよう依頼されていたのだ。こういう大人の取引が珍しくないのはご存じの通りだ。
この裏交渉により、床下の重大な欠陥が隠されようとした。町村はかつての永瀬と同じくウソつきになろうとしていた。生活のためだろう。
だが、正直になった永瀬が黙っていなかった。 「私の仕事は家を売ることです。家の欠陥を見つけることではありません。町村さん、それはあなたの仕事ではないんですか」
この言葉で町村のプライドは蘇る。
永瀬と咲良がバールで床を剥がしたところ、現れたのはヒビ割れたコンクリート。それを見た町村は「最悪、床が抜けてもおかしくないです」と冷静に指摘する。ミネルヴァ不動産が町村に文句を言うと、「誰に何を言われようと、私は私の仕事をするだけです」と静かに言い返した。永瀬の正直ぶりが周囲に伝播した。
正直者になる前はカネのために働いていた永瀬。今後、何を求めて働くのだろうか。その答えは第1話で既に明かされている。
アパートのサブリース契約を結ばせた石田は50年以上も和菓子店をやっていたが、ちっとも儲からなかった。それでも店を続けた理由が永瀬には皆目分からなかった。
その疑問に石田はこう答える。 「大した理由じゃない。オレの菓子食うと、みんな幸せそうな顔するんだ。だから続けられた」
この時点ではカネのために働いていた永瀬は「それは1円にもなりませんね」と首を捻るが、石田は「でも仕事っていうのはそういうものだ」と笑った。
今、永瀬もまた客の喜ぶ顔を見るために働き始めている
NHKならではの描写
不動産はすべての人が関わるものでありながら、大半の人にはよく分からない。難しい。その内実を描いたのもヒットの理由の1つだろう。
悪徳不動産業者の騙しのテクニックも活写している。不動産業界が大口スポンサーである民放でのドラマ化は無理だ。
例えば民放が大量にCMを流すアパートなどのサブリースは、不動産会社がオーナーから一括して借り上げるため、一定の賃料収入が見込めるというプラス面がある。管理の手間もかからない。半面、賃料減額をめぐりオーナー側が不利益を蒙る場合もある。これをドラマに盛り込めるのはNHKならではだろう。
出演陣は適材適所。善玉も悪玉もできる山下智久はハマり役。福原遥(23)も新人営業ウーマン役が似合う。永瀬の良きライバル・桐山貴久役の市原隼人(35)も凛々しくていい。
ほかの出演陣も大地真央(66)、倉科カナ(34)、高橋克典(57)、草刈正雄(69)と見応えのある演技をする人ばかり揃っている。これも人気の要因だ。
17日に第7話の放送が終了。同日深夜から第3話以降の再放送が始まった。第1話と2話の再放送は4月19日に済んでいる。第3話は18日(水曜)午前2時に放送済みだ。以降の再放送のスケジュールは次の通り。
第4話19日(木曜)午前2時10分から。第5話20日(金)午前1時55分から。第6話は同日午前2時40分から。
4月期で屈指の出来映えのドラマであるのは間違いない。
高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ) 放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。
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