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脱炭素に踊らされたドイツの「悲惨すぎる末路」…国際競争力が地に落ち、産業の空洞化も深刻、過度な中国依存が裏目に
川口 マーン 惠美さんの解説
脱炭素に踊らされたドイツの「悲惨すぎる末路」…国際競争力が地に落ち、産業の空洞化も深刻、過度な中国依存が裏目に (2024年8月10日掲載) - ライブドアニュース
蜜月だったはずが…
まだ首相になったばかりだった頃のメルケル氏は、温家宝総理に会うと目に星が出た。政治家としての温家宝を尊敬していたに違いない。元々昔からウマのあったドイツと中国は、16年のメルケル政権の間に、切っても切れない深い仲となった。
20年ほど前までの中国の輸出品は、繊維製品、小型家電、軽工業品などが圧倒的に多く、ドイツにとって商売上のライバルとはなり得なかった。当時、中国の政治家の誰かが、「あなた方が工作機械を一台売った時の利益を得るために、私たちは何万足もの靴を売らなければならないのですよ」などと言っていたのを覚えている。ただし、メルケル氏だけは、すでにその頃から中国のポテンシャルを明確に予感していたのではないか。政治的にも経済的にも、そして軍事的にも。
その中国がドイツにとっての最大の取引相手国となったのが2016年。中国ではドイツの自動車が飛ぶように売れ、一方、中国からの輸入品には猛スピードでハイテク製品が加わり始めた。当時の独中関係は蜜月時代と呼ばれ、故李克強総理は常に“ウィンウィン関係”を強調し、メルケル首相は「中国は私たちにとって、アジアで一番大切な国」と豪語した。
ただ、今では李克強氏は草葉の陰で、一方のメルケル氏は表舞台からは退場。そのせいだけではないにしろ、毎年、足繁く開催されていた2国間会議は中断され、現政権になってからはベアボック外相(緑の党)の下、独中関係はこれまでになく悪化している(後述)。
中国に縋るしかないドイツの現状
さらに疫病や不況や戦争が重なったこともあり、2023年の独中の貿易額は前年比で15.5%減。とはいえ、いまだにその額は2500億ユーロと他のどの国よりも多く、不況のドイツにとっては、もはや中国に縋るしかないというのが現状だ。
この経済的な中国依存はEUも似たようなもので、EUのフォン・デア・ライエン欧州委員長は、今後は中国とは距離を置くと言っている(できるかどうかは別)。ただ、実はEUが本当に阻止したいのは、昨今、ヨーロッパ進出が目覚ましい中国のEV車のこれ以上の伸張である。
EUが温暖化防止のためとして、ガソリン車とディーゼル車の駆逐を宣言してから、すでに久しい。EU各国はEV車の普及に注力し、購入の際の補助金など、さまざまな政策を実施してきた。それどころか今では、35年からはガソリン車とディーゼル車の販売を禁止するという、まさに自由市場経済に逆らった荒技まで打ち出している。
しかし、EUがどんな飴と鞭を使ってもEV車は売れない。特にEU製のEVは高くて売れない。今ではたいていの政府で、補助金も尽きてしまった。だから、どうしても買わなければならないなら、当然、中国の安価なEV車が選ばれる。
そこで困ったEUが思いついた次の対策は、自分たちがもっと競争力のあるEV車を作ろうということではなく、中国のEV車へ関税をかけること。中国のEV車が安価であるのは中国政府からの不当な補助金のおかげであるから、制裁すべきという理屈だ。
景気が落ち込んでいるドイツの主原因
ただ、これまで中国市場の閉鎖性に抗議し、自由貿易を謳ってきたのはEUだった。しかもEV車の優遇策は中国に限らず、EU各国も同じだ。それでもEUは7月より、BYDに17.4%、Geely(吉利汽車)に20%、SAIC(上海汽車)に38.1%の関税を掛け始めた。
ちなみに、中国のEV車のせいで特に困っていたのが、ドイツのメーカー。ところが、中国EV車への課税に一番強く反対したのが、ドイツ政府だった。なぜなら、もし、中国が怒って報復関税を掛けてくれば、中国市場に一番大きく依存しているドイツの自動車メーカーが最大の犠牲者となるからだ。
Statistaの今年の統計によると、20年、ドイツ製の乗用車の39.4%が中国向けだった(メーカー別では、フォルクスワーゲンが43%、ベンツが32%、BMWが33%)。この割合が昨年は34.3%にまで減少し、多くのメーカーが生産縮小を余儀なくされている。これ以上縮小すれば、死活問題だ。つまり、今や、中国EV車への関税があってもなくても困っているのが、ドイツのメーカーと言える。
ドイツはすでに景気が落ち込んでいる。主原因は高すぎるエネルギー価格と、高すぎる税金と、肥大した官僚主義。膨大な書類の処理に時間を取られ、高い電気で高い製品を作って高い税金を払えば、当然、国際競争力は地に落ちる。
だから現在、誰もドイツに投資したがらず、それどころかエネルギー多消費企業が次々とドイツを後にし、産業の空洞化が深刻な問題だ。以前は、たとえ製造工程を外国に出しても、企業の頭脳である研究・開発部門は国内に残すと言われたが、今ではそれさえ外国に移している。
では、企業はどこへ行っているのか? 昨年はドイツ企業の中国への直接投資が、初めて1000億ユーロを超えた。これは、ドイツが国外で行っている直接投資の7.2%を占めるという。一部の政治家や評論家が、いくら中国の政治的リスクや人権問題を訴えても、ドイツ企業は今も中国市場を巨大なチャンスと見ているのだ。
ドイツにとって「脱中国」は夢のまた夢
たとえば世界一の化学コンツェルンであるBASFは100億ユーロを投資し、その生産拠点の多くをドイツから中国の湛江市に移した。これは、過去にドイツ企業が中国で行ったうち、最大の投資だという。また、70年代から中国に進出し、中国における西側老舗といえるフォルクスワーゲン社は、ドイツで計画していたEV車の製造を取りやめ、安徽省に25億ユーロで新工場を建設した。
要するに、ドイツにとっては脱中国など夢の夢。さらに言うなら中国には、レアメタルはもちろん、太陽光パネル、医薬品、ノートブック、また、自転車のフレームも、ベビーカーも、とにかくありとあらゆる物を売ってもらう必要もある。
独中関係は今や対等などではない。それを痛いほどわかっているのが、おそらく社民党のショルツ首相だろう。
今年の4月、ショルツ首相は3日間の訪中で、北京、重慶、上海を回った。公式の訪問理由は何であれ、真の目標はただ一つ、中国との関係改善、交易の強化である。その証拠に、ショルツ氏は12人の産業界のボスを引き連れて中国入りしている。一方、同行した閣僚は3名のみで、連れて行ったら問題になるだけのベアボック外相やハーベック経済・気候保護相、兼副首相は蚊帳の外だった。
実は昨年、ベアボック外相は米FOXニュースのインタビューで、習近平国家主席を独裁者呼ばわりし、中国に格好のドイツ攻撃の原因を提供した。そうでなくてもベアボック氏は、外相としての実力もないまま、あちこちでやたらと人権や価値観の多様化などを説いて回っては嫌われている。
以前のドイツの外交は、お財布をうまく使いつつ、それなりのメリットも手にしてきたが、現在はお金はバラ撒いても効果は希薄。教師ヅラのベアボック氏は、以前は各国がドイツに対して示していた敬意の念も、すっからかんに擦ってしまった。中国との関係も拗れたままだ。
ただ、緑の党、あるいは社民党の一部の政治家は、ドイツには切るカードが無くなりかけていることに気づいていない。ドイツは人権と気候と動物を大切にする国であるべきで、脱炭素を実現すれば経済が発展し、幸福な世界が実現されるという絵空事をまだ信じている。
夢から目が覚めたドイツ国民
しかし、つい最近までそれに共感していた国民も、今やすっかり夢から覚めた。脱炭素やフェミニズム外交で踊らされていた間に、ドイツの経済成長はEUの中でも下から数えた方が早くなった。倒産は鰻登り、このままでは自分がいつ失職するかもわからず、脱炭素どころの騒ぎではない。緑の党の支持率は暴落している。
一方、今やEV車の覇者となりつつある中国は、ガソリン車を禁止するなどという馬鹿げたことは考えない。発電の電源も、太陽、風、水、原子力、石炭、ガスと何でもあり。せっかく動いていた原発や、ハイテクのガス火力を止めるドイツとは思考回路が違う。ちなみに脱炭素はEUの10年後、2060年に達成するのだそうだ。
4月のショルツ首相の訪中に続き、5月の初めには、今度は習近平国家主席が、フランス、ハンガリー、セルビアを訪問。フランスはいつも通りの全方位外交で、中国には敵対もせず、媚びもせず。一方、ハンガリーとセルビアは中国とは良い関係を保っている。
さらに付け加えれば、この3国はロシアとも断絶しているわけではなく、当然、EUのフォン・デア・ライエン欧州委員長の方針とは相容れない。ということは、現在起こっていることはEUの分断? もし、そうならば、それこそ中国の思う壺だ。中国、恐るべし。
世界がだんだん弱肉強食の色を帯びてきている今、一時は経済に突出したものの、軍事力のまったく伴わないドイツと日本(ドイツは軍隊はあっても中身はポンコツ)、やはり行動様式が似ている。特に、その中国の核の射程にすっぽり収まっている日本、今や中国には何事もお願いするしかない。しかし、そんな日独の政治家のことを、単に「情けない」と非難していても始まらない。
実は、ドイツの一部の政治家は、主権を保つためには軍事力の裏付けが必要だと言うことで、すでに動き始めている。では日本は? 国民が従順すぎるし、平和ボケはドイツよりさらに重篤。「攻め込まれないためには軍事力が必要だ」と言っても、多くの人は聞く耳さえ持たない。こうなると、しばらく静かに今後のドイツの動きに注目するのも悪くないかもしれないと思う。
いずれにせよ、いつまでも親中・媚中政治家に国を守ってもらっているというのも、なんだかねえ・・。
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