宮崎正弘の国際情勢解題」
令和五年(2023)5月29日(月曜日)弐
通巻第7771号
中国国産の大型機、上海から北京へ商業飛行を開始
エアバスA320のパクリ? 欧米は深刻に市場の脅威視
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5月28日はいろんな「事件」が起きた。
まずアフガニスタンから中国へ航空機乗り入れが再開された。カブールから中国ウルムチへの一番機は「アリアナ・アフガン・エア」の大型機だった。中国のアフガニスタンへの梃子入れは着々と進んでいるのである。
トルコではエルドアン大統領が決選投票に勝利し、野党連合を降した。
エルドアンの得票は52・1%,野党候補は47・9%.その差は4・2%だった。したがって「大接戦」とは言えず、かなりの票差がでた。外国メディアの事前予測は「大接戦」だった。イスタンブールとアンカラという野党の強い都市にしか外国メディア特派員がいないからだろう。いやそもそも彼らジャーナリストの大半はグローバリズムを信奉する左翼だからエルドアンが嫌いなのだ。
嘗てリベラルなメディアはモディと安部晋三を同列に於いてナショナリズムを批判した。この列にエルドアンと、ハンガリーのオルバン首相、そしてフランスのルペンが並ぶ。国家主権を優先する愛国路線をグローバリズムが憎んでいるのは、かれらの窮極の目標である二段階革命の障害となるからだ、ナショナリスト政治家に「極右」のレッテルを貼るのだ。
さて注目は中国の出来事である。
コロナ禍が再燃し感染が増えているが、もはやロックダウンの気配もなく、海外へ中国人ツアーがどっとあふれ出た。
中国「国産」を自称するC919という「パクリ飛行機」が上海から北京へ就航した。上海の飛行場の周りには「航空ファン」とおぼしきカメラマンまで多数が蝟集した。中国東方航空は6機を発注しており、29日は上海から成都へも乗り入れる。
中国が国産と言い張る大型機はc919。すでに2017年に初飛行に成功していた。比較して日本の国産機MRJプロジェクトは結局、失敗した。
欧米航空機メーカーは次世代のマーケットで中国C919がどこまで伸びるか、因みに中国が現有のエアバスとボーイングの航空機は6795機だ。
中国は川崎重工を欺して新幹線車両をパクリ、これは「中国国産」であり特許も申請したと開き直った。中国新幹線は4万キロ、ラオスとマレーシア、インドネシアへも中国新幹線は進出した。日本の市場を中国が掠め取った。
EVでは田舎の電池工場だったBVDがいまや世界最大のEVメーカーとなった。となると、大型航空機も欧米の寡占状態に中国のパクリ期が風穴をあけるか?
マーケットの将来を深刻に考えている欧米。マクロン仏大統領がさきに北京を訪問し、習近平から大歓迎を受けたが、土産がエアバス52機の注文書だったことをお忘れなく。
◎☆□☆み□☆☆□や☆◎☆□ざ☆□☆◎き☆□☆◎
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10倍愉しくなった2024「米国大統領選」
こんどはスヌヌ(ニューハンプシャー元州知事)も立候補へ
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出そろったかと思いきや。また出てきた。スヌヌ(ニューハンプシャー元州知事)が近く立候補を表明するとした。
かれは2016年の予備選で現職知事、議員らが誰も手を挙げなかったときに、真っ先にトランプ支持にまわり、2020年でも熱狂的なトランプ支持だった。そのスヌヌがなぜ今回はトランプに敵対しようとするのか。
現在までの共和党の大統領選挙へ出馬表明ははやばやと出馬を声明したトランプに加えてニッキー・ヘーリー元国連大使、ティム・スコット上院議員。そして先週はデサンティス・フロリダ州知事。また準備中と言われるのがペンス副大統領。出馬も考えているとしたのがボルトン元補佐官ら。
「出馬しない」と言明したのがポンペオ前国務長官だ。
この列になぜいまごろスヌヌが立候補を準備し始めたのか?
第一に予備選のプロセスが濃厚にからむ。緒線がアイオア、ニューハンプシャー、サウスカロライナという意味は、ここで得票を稼がなければ選挙戦継続が難しく、またひょいと二位か三位につければ中盤まで持ちこたえる。92年と96年のパット・ブキャナンがそうだったようにスヌヌが知事を務めたのはニューハンプシャー州なのだ。
ちなみにブキャナンはニクソン、レーガンのスピーチ・ライターをつとめた。愛国主義を基盤の著作が多く日本語訳も3冊ほどがでている。
第二に各候補の動機である。泡沫からぬけだすには、何しろ目立つパンチ力が必要である。
ニッキーは副大統領を狙っているのが明白である。デサンティスは善戦すれば2028年の最有力に残れるだろうし、ポンペオが不出馬でトランプに忠誠を誓うのは、国務長官の再任だろう。
ならばスヌヌの動機は何か?
かれはレバノン系でしかも正教徒。ブッシュジュニア政権で首席補佐官。現在83歳!
すでに政治的役割を終えた政治家であるからには共和党主流派に一泡吹かせようとしているのか、共和党のエスタブリッシュメントの一角を切り崩せると考えたのか、不明である。