「ある朝、グレーゴル・ザムザは(中略)自分がベッドの中で巨大な虫に変わっているのに気が付いた」
この有名な書き出しで始まるこの短編は、まあ99%の方は読んでいるに違いない。
この「虫」という訳は正しくない。本来は「害虫」や「害獣」つまり「人間にとって有益でない生き物」という意味の言葉。ドイツ語はUngezieferである。
最近、時代の変化、特によくない変化を暗示する市場の変化があった。
第一は天然ガス価格の高騰。経済産業研究所の藤和彦さんによると「バーレル当り一時200ドル、現在170ドル。通常20ドルだったのが、いっきに上昇したのがお判りでしょ?」これが原油価格の上昇につながっている。
背景は①「OPECプラス」の減産 ②米国の在庫水準の定価、などなど。
第二は円の対ドルレート。
10月11日にチャート上のフシ目だった対ドル112円40銭を抜いた。これは2019年4月24日の高値で、永らく抜けなかった水準である。
大和証券の石月幸雄ストラテジストによると予想レートは次の通り。
「113円台には目立ったチャート上のフシ目はない。市場参加者は114円55銭を予想する向きが多い。」私は117円と思うが。
この水準は2018年10月4日についたもの。
ご存知の通り、この日に米国ペンス副大統領(当時)が反中国演説を行い、「米中新冷戦」のスタートとなった日である。
前回のコラムで述べた通り、中国の長期的な発展には疑問が多い。
しかし、市場はごく目先は、中国有利と読み始めたのではないか。
それは「脱炭素」が、建前こそご立派だが現実的には中国を利するだけという現実があるからだ。
もう2~3つけ加える。
過剰流動性が急速に減少していること。世界のリーダーである米国のM2の前年同月比は年央の27%から最近12.5%へ。それでも過去のピーク時の10%台より高いが、12月には9%以下になりそうだ。欧州、日本はこれに追随するだろう。
次に暴落を予想する名人のマーク・ファーバー博士が10月号のレターで「(私は)今後7年間で、米国株のリターンは実質マイナス8%」と予測し、「新高値更新はありそうにない。あまりに多くの景気に敏感な重要株が、常軌を逸している」
マーク・ファーバー博士は、ブラックマンデーを予測し、日本株の大底を「日経平均が8000円を割らなければ底値はつかない」と予言。ともに的中した人として知られる。
さあ、イマイさん、強気のカンバンを下ろしたな?
とんでもない。これらはアメリカ。日本では時間差、それも何か月も差がある。
何と言っても日本は「総選挙=株高」という経験則がある。
マネースクエアの宮田直彦さんによると、
「1990年以来の31年間で10回、解散総選挙が実施されました」
「そのすべてにおいて、日経平均は上昇、平均上昇率は4.2%」
与党大勝利の場合は、10%だから(これは私)日経平均は3万1400円に行ってもおかしくない。
また前述したマーク・ファーバー博士の予想は、2~3年先に的中するケースが多い事も付言しておく。
最後に一言。いちよし証券の高橋幸洋さんによると
「イマイさん、日立製作(6501)にどうぞ注目してください」
「そのわけは?」
「小型原発が、2020年代の大ヒット商品になりそうだ。理由は中国の石炭火力発電所への発注が急増すれば、必ずブレーキがかかり、危険性のない超小型原発が推奨される、こうした流れです。」
たしかに、私の近著でも注目株のひとつに取り上げたときに、この情報は入っていたが、時代がそんなに急に展開するとは考えていなかった。
「変身」の終わりには、グレーゴルは死に、妹を近く結婚させたりして両親は希望を持つ。
そうです。日本株はまだまだ割安で、必ず見直されます。ただし、来年が「転機」の年であることは、どうぞお忘れなく。