どうやら今年の夏は、マスクが必須アイテムになりそうだ。夏場にマスクをつけるのは、ジメジメして息苦しい。暑い。できれば外してしまいたい。でも、新型コロナウイルス対策を考えると、そうは言っていられないのが現状である。

マスクでの口呼吸は、逆に免疫力を下げる

 熊本日日新聞が県内男女628人に行った調査によると、マスク着用による息苦しさから、口呼吸になっている人が倍増しているという(同紙5月16日付)。マスク未着用時に口呼吸をしている人は12%だったのに対し、マスク着用時は25%に増加。夏にかけて、口呼吸になる人がさらに増えることが予測される。

 口呼吸の弊害について、呼吸と自律神経の専門家である、順天堂大学医学部教授の小林弘幸先生は次のように話す。

「鼻呼吸をすると、空気が鼻腔の粘膜を通ることで、ウイルスや細菌などの異物を除去することができます。口呼吸だと、鼻腔による除去機能がないため、異物で汚れたままの空気が肺に入ってしまいます。また、口呼吸で吸い込まれた空気は、鼻呼吸に比べて冷たいため、肺や横隔膜、腸を冷やし、細胞の炎症を引き起こしかねません。そのため、口呼吸は感染症を含む、万病のもとになると言えます」

せっかくウイルス対策のためにマスクをつけていても、口呼吸になっていたら本末転倒になりかねない。どうすればマスクをしていても、鼻呼吸を維持できるのだろうか。

鼻呼吸の習慣が身につく「長生き呼吸法」とは

 口呼吸になるのが心配な人は、マスクをしていない自宅で、毎日しっかりと鼻で深呼吸することが大切だと小林先生はいう。鼻で深く呼吸することを意識づけていけば、マスクを着用した際も、口呼吸にならずにすむそうだ。

 そこで小林先生は著書『自律神経を整える「長生き呼吸法」』(アスコム刊)で、1日1分、じっくりと自分の呼吸と向き合う「長生き呼吸法」を紹介。「長生き呼吸法」を始めると、自然と鼻呼吸の習慣が身につくそうだ。

【「長生き呼吸法」のやり方】

①まっすぐに立つ。両手は左右のお腹のろっ骨の下をつかむ
②上体を前に倒しながら、6秒、口から息を吐く
(同時に、脇腹の肉をおへそに集めるイメージで両手に力を入れる。腸に刺激を与える)

③背中を反らしながら、3秒、鼻から息を吸う
(同時に、腸に刺激を与えていた両手の力をゆるめる)

※1日1分、②~③を繰り返す

◆長生き呼吸法で「肺活」と「腸活」をダブルで実現

「長生き呼吸法」を続けると、鼻呼吸の習慣が身につくだけでなく、さまざまな健康効果が期待できるそうだ。

「『長生き呼吸法』の特徴は、自律神経と腸内環境を同時に整えることができる点です。
吐く時間を長くすることで、リラックス効果をつかさどる副交感神経が高まり、不安やうつ症状など、さまざまなメンタルトラブルに効果を発揮します。

 また、腸のマッサージによって腸内フローラのバランスも改善するため、便秘や慢性疲労、高血圧などの生活習慣病の改善も期待できるでしょう。
さらに、腸に7割集まっているといわれる免疫細胞の活動も活発になりますので、免疫力アップにも役立つのです」(小林先生)

 口呼吸を治すための「長生き呼吸法」で、それ以外にもいろいろメリットがあるわけだ。ただ呼吸するだけだから、お金がかからず、場所も時間も選ばないのが嬉しい。

◆深い鼻呼吸は、メンタルヘルスの第一歩

 試しに行ってみると、頭がスッキリするような爽快感を感じられる。そして、そもそも自分の呼吸とじっくり向き合うことがなかったので、深い呼吸で深い安心感をもたらしてくれることも実感できた(長い歴史を持つ座禅、瞑想、マインドフルネスも、深く長い呼吸をすることが最も大切だと説かれる)。

 口呼吸になっている人はもちろん、そうでない人も、ぜひ「長生き呼吸法」を試してみてほしい。

 マスクのことだけでなく、コロナをきっかけに、世の中や生き方が大きく変わろうとしている。それを不安に感じている人は少なくないだろう。
 そんな方々に向けて、小林先生からメッセージが届いた。最後に記載しよう。

「何をするにも、しっかり深く呼吸してから向き合うと、必ず状況はいいほうに向かっていきます。たとえ今、仕事や生活に、ストレスや悩み、不安があったとしても、まずは『長生き呼吸法』をしてから、1歩目を踏み出すようにしましょう。しっかり大地を踏みしめて、ドンと構えて、ゆっくり、ゆっくり呼吸すれば、ささいなことに惑わされず、生きている喜びを感じられるはずです。『長生き呼吸法』が、コロナの時代に、あなたの人生の支えになることを願っています」