高畑充希の覇気に「力抜けた」 清少納言役のファーストサマーウイカ 大河「光る君へ」

高畑充希の覇気に「力抜けた」 清少納言役のファーストサマーウイカ 大河「光る君へ」

油原 聡子

 

平安時代に長編小説「源氏物語」を執筆した紫式部の人生を描くNHK大河ドラマ「光る君へ」。清少納言(ききょう)を演じるのが、初の大河ドラマ出演となるファーストサマーウイカだ。一条天皇の中宮・定子(高畑充希)を慕い、まひろ(後の紫式部、吉高由里子)と交流。才気煥発な清少納言を好演する。今作への思いを聞いた。
知るほどに不安消えた

清少納言は、歌人・清原元輔の娘で随筆『枕草子』を記した。今作では、ききょうという名前で、定子(高畑充希)のもとに出仕し、重用されてきた。

意志が強く、率直な物言いで存在感があるキャラクターだ。SNSでは「清少納言の生まれ変わり」と言われるほどだが、「『言い過ぎでしょう』とも思わなくて。むしろ『そうかもしれない』と思うくらい親近感を持った」と笑う。

枕草子や清少納言に関わる資料を読んだが、「非常に自分の考えに近い」と思えた。知るほどに演じる不安が消えていった。清少納言は夫と子供を捨てて宮中へ出仕したが、「自分で切り開いていく姿勢がその時代では異端であったと思うし、そういう生き方はまひろに影響を与えたと思う」と語る。アイドル、タレント、俳優とキャリアを広げてきた自身と重ね合わせ、「(自分も)博打な人生を歩んできているので、自分で人生を切り開くその姿勢はとても親近感がわきます」。

定子とは主従関係を超えた特別な絆で結ばれた。「定子は推し(人に勧めたいくらい気に入っている人)」と解釈している。

初対面のシーンでは、演じる高畑が「定子である」と名乗った瞬間を「うわって覇気がくるんです。ふわって風みたいな。1年前に(定子の)お墓に行ったときにふわって風が吹いたんですけれど、その感じでした」。

一瞬で定子に心を奪われたような表情を見せたが、「お芝居というニュアンスでやっていない感じです。ほんとに綺麗なんです。皆さんあそこに座ってごらんなさいよ、ああなりますから。『なんか素敵』じゃなくて、ぶわーって全部の水分出るみたいな、力がわあって抜ける、緊張が溶けるみたいな感じでした」と力説する。

高畑の演技を「定子が降りていたと思う」と絶賛。現実でも「高畑推し」としてインタビューなどさまざまな場面で魅力を語ってきた。「充希さんは、愛くるしいけれどもさっぱりした方。定子と重なるところがあるんです」。

たとえば、誕生日に靴下をプレゼントしたところ、高畑はリハーサルのときに履いてきて「可愛いねって褒めてもらえるよ」と伝えてくれたという。「『褒めてもらえている』と1つ情報を乗っけた状態で短いセンテンスで届けるところが『素敵!』『嬉しい!』と感じました」。

今作では文学は重要なテーマ。第21回では、『枕草子』誕生が描かれた。「これが1000年後まで人々を魅了するものになるというプレッシャーを抱えての撮影でした」と明かす。

出家して、生きる気力をなくした定子を慰めようと、清少納言は枕草子を執筆する。書道経験者だけあって、所作や文字の美しさも話題になった。「清少納言の文字は残っていなかったので、書道指導の根本(知)先生が作ってくださいました。右上がりで勢いのある字がいいんじゃないかと提案いただいて、清書を見ながら練習しました」と明かす。

放送では、定子が「春はあけぼの~」と朗読したが、実は、清少納言バージョンも複数収録。結果的に定子が朗読したものを使うことになった時、制作側から電話で説明を受けた。「快活な清少納言が定子のために黙々と書く。それなら、(献上された)文章を読む定子の心の声で再生したほうが、より内容が伝わるという結論でした。それを聞いた時に鳥肌が立ちました。『早くそのシーンが見たい』って高ぶったんです」

実は清少納言版の朗読も放送されている。第21回についての予告映像だ。「春は」と定子が読み、続く「あけぼの」と清少納言。「『かっこいい!』ってなりました。何人の方が声のコラボレーションにお気づきか分からないですけど」

第28回で、定子は一条天皇との第3子を出産すると同時に命を落とした。家族のために入内したものの後ろ盾を失った定子。出家後も一条天皇から寵愛され、子供を産んだことで孤立した末での悲劇だった。定子の死を前に清少納言は涙を流したが、「定子はなんでこんな悲しい人生を歩まなければならなかったんだろうと悔しさとか、やるせなさがぐーっと自分の中にこみ上げてきました」と振り返る。

枕草子には華やかな定子の姿だけを記した。まひろからは、影の部分も知りたいと言われたが、ききょうはきっぱりと断った。その心境について、「定子が一条天皇や兄弟の前でぐっとこらえて見せなかったものを、なぜ書き残して、世に広めるのか。充希さんの演技も目の奥にたまに本心が見えることや揺らぎはあったんですが、それこそ書き残すのは野暮ってやつです」と語る。

清少納言は、定子のために書いた枕草子を宮中に広めることは否定的だったが、定子の死を機に考えが変化。宮中に広めるよう、定子の兄・伊周(三浦翔平)に依頼した。「定子様が文字通り命をかけて守ろうとした家。(枕草子が)一条天皇をつなぐ鎖になればいいとなったんです」と語る。

定子のすばらしさを書き続けていく使命感が清少納言を突き動かすが、「それが1000年残っている。かっこいいですよね」。

清少納言と紫式部は、文学的素養のある女性同士、通じ合う姿が描かれた。そんな2人の関係を「圧強めの先輩とそれを苦笑いして聞いている後輩」と表現する。

「まひろは自分が持っていないものを持っている。感性や物事の考え方は、柔と剛ですが、対極だからこそお互いにないものを見て面白がれる。唯一認めた存在だからこそ、『私たち友達よね』って感覚でいれたんじゃないかな」

だが、紫式部日記には清少納言への批判が記されている。「最初からバチバチすると1年間飽きちゃうでしょうし、マブ(ダチ)からの軋轢みたいになっていくんじゃないかな。ハラハラさせるようなギミックがきいていて、(脚本の)大石(静)先生に脱帽です」

枕草子は一条天皇の心を定子につなぎとめる役割を担っているが、まひろがこれから書く源氏物語は、宮廷にどんな影響を与えるのだろうか。「(まひろとは)最後まで友達でいたい。どうなるかわからないけれど、最終話まで生き残りたいから、仲良くしてほしい(笑)」(油原聡子)


ファーストサマーウイカ

1990年生まれ。大阪府出身。2013年にアイドルグループ・BiSに加入してメジャーデビュー。音楽活動と並行してバラエティ・ドラマ・ラジオなどで活躍。NHK連続テレビ小説「おちょやん」など出演作多数。

 

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