宣伝戦に敗れるということは、百年、二百年では取り戻せないほどの負債を抱える!

伝戦に敗れるということは、百年、二百年では取り戻せないほどの負債を抱える!

 伊藤隆(東京大学名誉教授):マルクス主義革命の理想が失われて、もうマルクス主義者は行き場がないんですよ。だから、「反国家」が矮小化されて、「反日」的日本人となっていく。

 
中西輝政(京都大学教授):そうした人々に言いたいのは、誤った歴史観の流布を許すことは、戦争で負けるより大きな害悪を国にもたらす、ということです。
 これは文明史を研究している人にはよく知られた議論なのですが、「近代の初め、スペインが南米で暴虐の限りを尽くし、インディオを絶滅させた。これは人類史上に残る罪である」といわれていますね。しかし、この説を広めたのは、17世紀のオランダやイギリスのジャーナリストや歴史家たちなのです。つまり、スペインの後から領土拡張を開始したオランダ、イギリスは、スペインをラテン・アメリカから駆逐し、自分たちの商圏を広げていく為に、さまざまなプロパガンダを開始した。たとえ、略奪迫害の事実がかなりの部分あったとしても、それを「悪の権化」のごときストーリーに仕立て上げられた結果、スペインのラテン・アメリカ支配の正当性そのものが否定され、19世紀にはスペイン帝国は全面瓦解を迎えるわけです。しかも、こうした歴史観は21世紀の今日まで、スペイン側の反論をほぼ許さない形で伝えられてきました。これは20世紀スペインを代表する思想家、オルテガ・イ・ガセットなども述べております。

 
瀧澤一郎(国際問題評論家):宣伝戦に敗れるということは、百年、二百年では取り戻せないほどの負債を抱えることになる。クローチェの言ではありませんが、「すべての歴史は現代史である」の言葉どおり、今の我々がしっかりした歴史解釈を行ない、後世に繋げていかなくては、せっかく新史料が出てきてもどうすることもできません。


 
中西輝政(京都大学教授):20世紀は共産主義との闘いの歴史であったと同時に、このように「インテリジェンス・ウオ-の世紀」だったと私は思います。というのは共産主義の本質は、「諜報と謀略」だからです。嘘と偽善、白を黒と言いくるめる姿勢を貫いたからこそ、共産主義が20世紀において生き延び、文明社会の脅威と成り得たんですね。「諜報と謀略」に依拠することがなければ、共産主義はソ連、中国、東欧、ベトナム、キューバ、第三世界の一部・・・・といったようにあそこまで判図を拡大することはなかったでしょう。政治的にも経済的にもまったく未熟なシステムだったのですから。(諸君6月号 平成18年度)以上です。

真中 行造のページ  2008年3月1日より 引用
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