南英世の 「くろねこ日記」

コロナ禍で問われていること

オミクロン株の感染者が急速に増えている。

医療体制が追い付かず、自宅療養者がかなりいるらしい。2022年2月18日の厚生労働省発表によると、全国で自宅療養している患者数は57万7千人だという。これは感染して治療している84万人の69パーセントに当たる。つまり、10人のうち7人が適切な治療を受けられず、自宅療養という名の下で「ほったらかし」の状態にあるのだ。

いったい「なぜ日本の医療体制がひっ迫しているのか?」 マスコミも政治家も誰もその問題の本質に切り込まない。報道されるのは表面的な現象ばかりで、その根本にある医療の在り方に誰も触れようとしない。そこであえて問題提起することにした次第である。

そもそも、日本は世界一の病床保有国だ。日本の病床数は全国で約152万9000あるとされている。そのうち、新型コロナの対応をしているのは、約2万7000床で全体の2%以下である。ほとんどが政府や自治体から要請を受けた国立病院や都道府県立病院である。重症者用のベッドにいたってはたったの約3600床しか確保されてない。

日本では民間病院が全体の約8割を占め、病床数も全体の約7割を民間病院が保有している。そのほとんどはコロナ患者を受け入れていない。最大の理由は儲からないからである。

それってどこかおかしいのではないか?

そもそも医療を金儲けの手段としていることが間違いなのではないか。消防や警察と同じように、国民のだれもが必要なときに利用できるシステムにすべきなのではないか。

医者の多くは多額の税金を使って育成された存在である。国公立大学では医者一人を養成のに数千万円(年間1千万円の授業料×6年間)の税金が投入されている。なぜ医者を養成するのに多額の税金が投入されるのか? それは医者となってその知識・技術を国民に還元してほしいためである。

ところが現実はどうか。税金を使って医者にしてもらっておきながら、その資格を金儲けの手段としている。そして、国民が一番医療を必要としているときに「私は関係ありませんよ」という顔をしている。これはどう考えてもおかしい。

先日、第3回目のワクチン接種をした。翌日は全身体がだるくて、仕事にならなかった。たかがワクチンでもこれだけしんどいのである。実際に陽性となったらどんなにしんどいか。しかも、重症にならないと必要な医療を受けることすらできない。

先日うちの長女が陽性になった。しかし、自宅療養のままで行政からは何の連絡もない。水の1本も届かない。食料も買いに出られない。妻が見かねて長女の住む近くにホテルを取り、連日食料を運んだ。もちろん接触を避けるために、玄関先に食料を置いてくる。

今、全国に57万人の自宅療養者がいる。どれほど不安な気持ちで毎日を送っているのか。医者もベッドも十分に空いているのに、患者は必要な治療を受けることができない。そんな日本の医療体制の矛盾に誰も疑問を唱えようとしない。新聞は何をしている。テレビは何をしている。日本医師会がそんなに怖いか!

経済学者の宇沢弘文は、「医療と教育は社会的共通資本であり、これを金儲けの手段としてはならない」と主張している。慧眼である。これまで公的供給を意図的に少なくし、医療や教育を金儲けの手段とすることを認めてきた。しかし、今回の新型コロナ禍でこうした政策の限界が露呈したといってもいいのではないか。

テレビでは今日も「長時間」にわたってコロナのニュースを伝えている。しかし、どのチャンネルを回しても「感染者がどれだけ増えた」とか「病床がひっ迫していて搬送先が見つからない」とか「ワクチンの確保がどうだとか」といった表面的な報道ばかりである。病床ひっ迫の原因が、医療を民間主体に任せてきたことにあるという根本問題には全く触れない。怒りすら覚える。

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