南英世の 「くろねこ日記」

国際金融のトリレンマ

国際金融のトリレンマといわれるものがある。「為替レートの安定」と「自由な資本移動」と「金融政策の自由度」という3つの選択肢は、同時には達成できないという基本原則である。


たとえば、日本は自由な資本移動を認め、自由に金利を誘導することができる。その代わり、固定相場制は放棄している。もし、固定相場制のもとで(たとえばインフレを抑えるために)高金利政策を採ったとしよう。この場合、もし自由な資本移動を認めれば、高金利をねらって海外から膨大な資金が流入する。固定相場を維持しようとすれば、政府は流入するドルをすべて買い続けなければならない。しかしそんなことは不可能だから、結局は固定相場を維持するためには、内外の資本移動を規制する必要がある。現在の日本は、自由な資本移動を認め、その代わり変動相場制を採用(=為替レートの安定を放棄)しているのである。


一方、先進国の多くが変動相場制を採用している中にあって、EU加盟国の間では固定相場制がとられている。EUでは固定相場制と資本の自由な移動を認める代わりに、各国が独自の金融政策を採ることを放棄している。

もし、EUの中で、各国が自由に金融政策をとることが認められてある国が金融の引締めを行ったとしよう。その国の高金利を求めて、やがて資本が大量に流入し、固定相場制は崩壊してしまう。
 そうした事態を防ぐには、国際資本取引を規制するか、独自の金融政策を放棄するしかない。EUは各国独自の金融政策を放棄し、金融政策をECB(欧州中央銀行)に一元化することによって、資本移動の自由と固定相場制を維持している。
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