人生の知恵は様々な形で受け継がれていく。しかし、こと「性」に関する知恵はなかなか次の世代に正確に伝わらない。極端な話、親は子どもに言葉や社会的マナーは教えても、男女の秘儀は教えない。週刊誌やそのたぐいの本はたくさんあるが、おもしろおかしく書くばかりで、どこまで本当か信用できるものではない。それに、個人差もある。
友人や職場の人たちと話をする場合も、性に関する話は「下品」とされ、常識ある紳士・淑女は「あたかも性欲なんて感じたこともない」というふうに会話をすることが求められる。かくして、性に関する知識は自ら体験し、一代限りの知恵として死蔵されたまま埋もれていく。
ある時、大学を卒業したばかりの若い男性が、3人の中年の女性に向かっておそるおそる聞いた。「あのォー、女の人にも性欲はあるんですか?」
突然の質問に、3人の女性はおもわず顔を見合わせて「ぷっ」と吹きだしたという。でもこれは案外、男の本音かもしれない。慎み深い女性しか見たことがなければ、そう思うのも無理はない。私自身、長い間前述の男性と同じような疑問を持っていた。男はセックスの代償として結婚するのであり、女は結婚をする代償としてセックスを許すものだと思っていた。謹厳実直な大学の先生などは、生涯にわたって産みたい子どもの数(=回数)しかセックスしないものだと真剣に思っていた(笑)。
男にとっても女にとっても、性はいくつになっても秘密のベールで覆われている。男性にとって女性の身体はなかなか分からない。それは女性にとっても同じであろう。若い男の性が股間に「暴れ馬」を抱えているようなものだということを、はたしてどれだけの女性が理解しているであろうか。
大岡越前守が老母に向かって「女の性欲はいつまで続くのか?」という質問をしたところ、母親はただ黙って火鉢の灰を箸でかき回し続けたところから、越前は「女の性欲は灰になるまで続くのだ!」と悟ったという有名な話がある。異性に対する興味はいくつになっても尽きないらしい。だから人生は楽しいのかもしれない。
それにしても、女性はなぜ「かわいい」とか「すてきだよ」とか「愛している」とか、いくつになっても言ってもらいたがるのだろう。そんなもの照れくさくて面と向かって言えるか。
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