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南英世の 「くろねこ日記」

教員をやめて初めて分かることがある

これまで授業はできる限り中立的であろうと人一倍気を使ってきた。しかし、教員をやめて自由な立場から物事を考えることができるようになり、もっと大きな視野から社会を見ることができるようになってきた。そうすると、今まで見えていなかったことが見えてくるようになった。

たとえば、日本の労働力人口が減少すれば、労働市場はひっ迫し賃金は上昇するはずである。ところが全然上がらない。なぜか。賃金が上昇すれば「企業」が困る。だから企業は政治を動かし、賃金が上昇しない様々な仕掛けを作ってきた。賃金上昇圧力を封じ込める代表的な政策として次のようなものがある。

① 非正規雇用の拡大(派遣労働、パート労働)

  (→解雇の自由化)

② 外国人労働者の導入

  (→日本の労働コストをグローバル最低賃金に引き下げる)

③ 女性労働力の活用

④ 裁量労働制による働かせホーダイ

⑤ 年功序列型賃金体系の解体

⑥ 成果主義の導入

  (→給料が低いのはあなたの自己責任)

⑦ 定年後の再雇用

⑧ 労働組合潰し

⑨ サービス残業の増加

  (とくにブラックと呼ばれる企業は、大量に採用して長時間働かせ、辞めさせたい社員をパワハラで精神的に追い込み、自己都合で退職させる)

これらのことが「競争促進は生産効率を高める」「努力するものが報われる社会を」「女性も活躍できる社会を」「生涯現役」「働き方改革」などという美辞麗句の下で推進されてきた。

しかし、結論から言えば、これらは単に賃金の上昇圧力を弱めるためだけの政策ではなかったか。主要先進国の中で日本の賃金だけがほとんど上昇していない。政府の政策は見事に成功したといっていい。いまや日本の賃金は韓国並みである。

そもそも、なぜこうした企業寄りの政策が展開されるのか。

理由は簡単である。政党に企業献金を認めているからである。企業献金を認めれば政党はそれに応える政策を行う。民主主義の根幹は一人1票制である。ところが、企業献金を認めることは国民の意思よりも企業の意思を優先することに他ならない。本来、政党助成法(1994年)が成立し、政治にかかる費用を税金から交付することが決定された段階で企業献金を禁止すべきであったのだ。

労働問題と政党政治。教科書では全く別々の分野として教えられている。しかし、両者を一体化してみると、政治の背後にどういう巨大な力が働いているかがわかる。「それによって得するのはだれか」を考えると真実が見えてくる。

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